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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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ネズミ穴は、一応、塞ぎました

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 砦のじい様達の話を書くのが面白くなってきました。




 その日は、お祭り騒ぎの様にてんてこ舞いだった。


 先ず、龍が飛び立った。


 続いて、タンディン様の乗るワイバーンが低空飛行し、逃げ惑う魔道具製作部長を足で引っ掴んで飛び去った。皆、驚いて空を見上げる。


「何だか知らないが、ざまを見ろだな」


 それこそ、何だか知らないけれど、私と一緒にいたオルツァーさんがフフンとジタバタしている魔道具製作部長を見上げて、鼻で笑った。

 本当に、どういう事態なんだろう。


「ミネ、オルツァー。私達、ちょっとひ孫達と一緒にピクニックに行って来るわね。あなた達には、私達の留守中に出てくるネズミ退治をお願いするわ」


 ニッコリと笑ってエルディアナ様が仰って、エルフを連れられてワイバーンに股がった。

 ひ孫達とピクニック……それは、楽しそう。出来るなら御一緒したい。


 昨日は、砦の外壁に開けられた3つの大きなネズミ穴を見つけて、魔道具製作部長が、じい様達と一緒に塞いでおいてくれた。

 龍にワイバーン、エルディアナ様やタンディン様までもがピクニックに出かけてしまえば、砦の内側に取り残されたネズミ達が、油断してチョロチョロと姿を現すだろう。


 オルツァーさんは、騎士団と共に騒ぎが起こる表舞台に。

 私は、オルザインさん率いるじい様達と共に騒ぎに便乗して隠れ場所から這い出し、砦の中をこっそりと駆け回る大きなネズミ達を捕まえに。



「王太子殿下が拐われたぞ!婚約者のベルリーナ様もだ」


 誰かが大声で叫んで走り回っている。


「ワイバーンが人を襲ったぞ!人を掴んで飛び去った!ワイバーンは、危険だ」


「エルフが、エルディアナ様を拐ってワイバーンを操って逃げたぞ!」


 何の騒ぎかと皆が仕事の手を止め、中庭に集まりだした。




「さて、狙いは何か。ひのふのみいで、3人ですか。三手に別れます?」


 私が数えていると、皆は『仕方がないなあ』と孫を見る様な目付きになった。

 これだから、じい様達は……。


 大きなネズミ達は何処からか(多分、洗濯室)調達してきたお仕着せに身を包み、1人は牢屋のある建物へ、後の2人は騎士団本部の建物へと向かって行く。


「じゃあ、私は牢屋の方へ。ガルド、ヘルメス一緒に来い」


 ヘムスさんは、2人のじい様達を連れて勝手知ったる牢屋の方へ向かった。


「残りは、俺と行くぞ」


 オルザインさんは、残りのじい様達と私を連れて騎士団本部の建物へと向かった。建物の中は、広場の騒ぎで閑散としている。


「エルディアナ様の執務室と……武器庫かな?」


 私が悩んでいる内に、1人は執務室に消えた。


「食堂かと思ったんだが。まあ、食堂に潜んでた奴は、昨日、穴に引っ掛かってたな」


 毒の混入目的?あー、でも、昨日、早々にあいつは退散してたっけ?

 騎士団の尋問によると、彼は『捕まった第二王子の為に働くなんて莫迦らしくなった。組織から抜け出て逃げるなら今だと思った』らしい。

 ついでに言うなら『出来るなら、ここに就職したい。出来るなら食堂希望、賄い付きで』って、どれだけ食堂の賄いが気に入ったんだか。


 因みに、念の為に昨日、私が食堂や食糧庫の毒物の探査をしておいたけど、特に異常はなかった。


 さて、残る2人のネズミのどちらをオルザインさんと私が担当するのか。


「ミネちゃんは、執務室の奴を頼む。俺は、武器庫の方に行く」


 おっとっと、冗談が過ぎるよ、オルザインさん。


「この場合、オルザインさんが執務室。私が武器庫です。

 オルザインさんは、執務室内の事はご存知でしょうが、私は全く判りません。まあ、武器庫もですけど」


「武器庫は、危険だろう。もし、ミネちゃんに万が一の事があれば、オルツァーが怒り狂う。君が連れ去られた時のオルツァーは、とんでもない状態だったんだぞ」


「算段が無いとは言いません。むしろ、私の方が、武器庫に向かうのは向いていると思いますよ?私はオルザインさんの様に身体を使った戦闘には向いてませんが、小手先の魔術は得意なので。

 それに、私には最終手段がありますから。私がそちらを担当します」


 私は、首からかけた鍵をオルザインさんに見せた。


「何だ、それは」


「見ての通り、鍵ですよ?今朝、私の所に来たお客さんが貸してくれたんです」


 私の説得がモノを言ったのか、はたまたオルザインさんは私にモノを申しても無駄だと思ったのか、諦めて私を睨めつけた。


「良かろう。時間が惜しい。だが、何人か連れて行け」


「では、ジルバさんと蜜蜂達を。後は、申し訳ありませんが、足手まといです」


「これはこれは、お目が高い。薬の魔女さんは、人を見る目が、お有りの様だ」


 普段は穏やかなジルバさんの目がゆっくりと大きく開き、面白そうに、口角が徐々に上がっていった。


 ジルバさんの実家は養蜂家と聞きはしたけれど、実際の所、彼が以前は、どんな仕事をしていたのか私は知らない。


 ただ、大叔母様の話していた魔獣の虫を使役する一族が居た事を思い出した。





「やっぱり、昔から僕が一番もてるよねー。本当に」


「何言ってんだ。オルツァーに殺されるぞ。お前は、猫かぶってろ。一番危ない奴なんだからな」


「そんな私でも、生きて役に立てとタンディン様が仰った。ああ、生きてて良かった」


「ベルリーナ様のお陰で、怪我は直るし、身体は軽いし。もう後10年は現役で行ける行ける」


「お前が10年なら10歳年下の俺は、20年は現役だな」





 じー様達は、怪我や歳で騎士団を退役した人達です。因みに、前ノースター公爵達3人は、騎士団に席を置いています。タンディンが、前ノースター公爵を鍛え直すと言っていましたし。

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