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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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貢ぐ時は、しっかりと貢ぐべし

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』の話の中に出てくる元魔王なベルリーナとの絡みの詳細場面が出てきます。



 今こそ、これを活用すべき。


 私は、しっかりと袋を握りしめ、エルディアナ様の執務室に入って行った。


 執務室には、エルディアナ様ともう1人、銀のフワフワの髪に緑のリボン、緑のドレスの小さな可愛いレディがソファーにちんまりと座っていた。ベルリーナ様だ。

 

 エルディアナ様がベルリーナ様に私を紹介してくれ、ベルリーナ様はニコニコと私を見ている。


「薬草の種をくれた薬草魔女さんね」


 そう。初めてベルリーナ様を畑で見かけた日、私はオーベンさんに薬草の種を持っていたら分けて欲しいと言われて、1袋渡したのだ。

 薬草は立派に育ち、私の元に帰ってきた。その薬草から出来た薬は高品質の物となり、砦に納められ騎士団の団員の怪我を治し……何なら返って丈夫になったかも知れない。


 ベルリーナ様は私にとって、素晴らしい薬を作る為の、素晴らしい材料を育ててくれる女神様。


 さて、そんな小さな女神様に私が出来る事と言えば、更なるとっておきの種子を渡す事くらい?


「実は、こちらは珍しい、私のとっておきの種子でして。こちらをベルリーナ様の畑に植えて頂けないかと、お願いに上がりました」


 この薬草は、葉や茎、花や種子、何なら根っこまでもが各々違う薬の原料となる品種なのだ。ただ、森の奥の魔力が多い場所にチョロチョロっと極少量だけしか生えていないのが難点。

 

 オーベンさんやフォスターさん、ジルバさんとの話しをまとめて書類にしてエルディアナ様に提出した結果、今回、この薬草の種子を、駄目元でベルリーナ様にお願いしてみる事になったのだ。


 快く可愛く引き受けて下さったベルリーナ様だけれども、勿論こちらも、ただで引き受けて貰うのは申し訳なく。


「つきましては、お礼と言っては何ですが、私の開発した薬のレシピをベルリーナ様にお教え致します」


 エルディアナ様が、お礼はこれが良いと仰ってたからお教えするけれど、5歳の女の子に薬のレシピなんて、判るのだろうか。


「今回植えていただく薬草は、花粉と種子は惚れ薬の原料となります」


「惚れ薬?」


 それまで無邪気な屈託のない微笑みを見せていたベルリーナ様の顔が、途端に怪訝な顔になる。


「惚れ薬と言うのはですね」


「いえ、それは知ってるのよ?でも、惚れ薬を私が使ってどうするのかと、悩んでいるだけなの」


「まあ、まだ5歳ですし、王太子殿下とラブラブですからね。要らないですか。あ、でも、今回の馬の強化の為の馬の種付けには使えます。王都の研究塔でも実証済みです」


「そうなの?お馬さんの種付けに」


「惚れ薬を飲んだ雄馬が張り切って「ミネ!ベルリーナ!」す、すいません」


 ゴホンと大きな咳払いと共に、エルディアナ様が抗議の声を上げた。

 しまった。相手は、5歳児でした。何か、話している内に研究塔の助手仲間と話している気分になっていた。反省、反省。

 私のストッパー的な役割が必要だと感じたのか、エルディアナ様まで混じって魔術の話になった。


「他にも研究塔で使っていた魔術は、あるのかしら」


 エルディアナ様が話を振ってくるので、ついつい出産時の逆子解消魔術、難産の際の補助魔術、産後すぐに飲む滋養強壮ドリンクのレシピまで話をしてしまった。

 どれもカウマン教授の所でバイトしていた時に開発したレシピや魔術で、カウマン教授の薦めで魔術研究学会に論文を提出、発表済みのモノなので教えても問題はない。


「こんな魔術があったのね。ミネは、産婆さんなの?それにしても、お祖父様は、こんな魔術をご存知なのかな」


「まあ、馬の出産にはよく立ち会いましたよ。ベルリーナ様のお祖父様に関しては、さあ、どうでしょう。馬の為の畜産魔術なので、魔法薬剤師長様がご存知かどうかと言われると、疑問ですね」


 色んな話をしていく途中で判ったのだけれど、ベルリーナ様の祖父様は魔法薬剤師長、叔父は魔術師団長で、どちらとも、よく色んな話をするらしい。道理で、5歳にしては魔術や薬のレシピについて造形が深いと思った。

 普段から、2人とベルリーナ様が、こう言う話をしているのなら納得が行く話だよね。

 ああ、ビックリした。


「そう言えば、ミネは、魔道具製作部長とも話が合いそうだけれど、ミネは部長と、もうお話した?」


「はい。ベルリーナ様。魔道具製作部長様には、布製の簡易小屋と寝袋についてお話を伺ったのですが、オルツァーさんが一緒にいたので、余り長くは話せませんでした」


 それを聞いたエルディアナ様は、『ああ、オルツァーね。そう、一緒にいたのね』等とブツブツと言って、頭を抱えだした。

 何かオルツァーさんについて問題があったのだろうか。


 そんなエルディアナ様を見て、キョトンとしたベルリーナ様は、とりあえず薬草を植えて来ることにし、蜂蜜を楽しみにしていると言ってエルディアナ様の執務室を出て行った。


「さて、ベルリーナも畑に行った事だし、これにてお開きにしましょう。ところで、貴女が砦に住む件なのだけれど、私の出した条件は見て貰ったかしら」


「そうですねぇ。研究に関して、自由にさせていただければ。勿論、逐一、許可をとって報告はしますが、何しろ私の研究は多岐に渡っているので」


「契約書を作っておくわ。取り敢えず、今日から砦に住んで頂戴……今日じゃなくて、4日前から住んでいるみたいですけどね」


 そう言いながら、エルディアナ様は笑った。


 後で、何故かエルディアナ様の執務室まで迎えに来たオルツァーさんに、ベルリーナ様との話を話してしまい、オルツァーさんからたっぷりお説教を食らったのは、誤算だった。 


 その件については、反省してますから。本当に。




「ミネ、ちょっとそこに座ろうか」


「え!?嫌」


「いいから、座ろうな。まず、5歳の子供に惚れ薬の作り方を伝授しない!」


「でも、貴族のお嬢様は、学園で私の顔を見る度に惚れ薬を欲しがってたし。勿論、作らなかったけど」


「そして、馬の種付け云々の話もしない!」


「でも、重要かな、と」


「そもそも、どうして馬の話になったんだ」


「だって、オルツァーさんの仕事は危険でしょう。オルツァーさんの馬は賢いけれど、寿命があるし。オルツァーさんが次に乗る馬が賢いとは限らない。だから、今から、オルツァーさんが次に乗る強くて賢い馬を作っておこうと思ったの。

 駄目だったかな」





 この後のオルツァーの行動


① 何も言わずにミネルバを抱き締める。

② 照れて、ポリポリと鼻の頭をかく。

③ よしよしとミネルバの頭を撫でる。

④ ……ご想像にお任せします。



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