何処まで付いて来ても、何も出ません
読みに来て下さって、ありがとうございます。
進んでいる様な、進んでいない様な。そんな2人の関係は、書いている私も焦れったいです。
朝起きると、やっぱりオルツァーさんが扉の前にいた。
「おはよう、ミネ。よく眠れたか?」
その言葉をそっくり、オルツァーさんに返したい。
小屋の隣に、いつの間にか布製の小屋が建てられていた。
これは、話に聞く、魔法薬材料調達係の持ち運び可能な簡易宿泊小屋とやら?ちょっと興味あるかも。
「オルツァーさん、これ、ちょっと見せて」
「あ、ああ。いいぞ」
防水なのに通気性もあって、外は朝だからちょっと肌寒いけれど、布製の小屋の中はちょうど良い温度で快適。
何、これ。作業小屋より快適かも。作業小屋は隙間風がヒューヒューするのだ。
中にあるオルツァーさんが使っていた寝袋も、柔らかくて気持ち良い。しかも、キュッと絞ると小さく畳めて持ち運びが楽チン。
あ、オルツァーさんの匂いがする。私があげた安眠ハーブのポプリの匂いも。
「こら、匂いを嗅ぐな。臭いだろう」
「え?そんな事ない。どちらかと言うと、安心する匂い?
ところで、何これ。オルツァーさん、ズルい」
「は?」
オルツァーさんは、何故かモジモジし始め、面食らって赤面している。どうして赤くなってるの?
それにしても、外で野宿した方が快適って、ちょっとズルい気がする。
「オルツァーさん、これ、どうしたの」
「昨日一緒に仕事をした魔道具製作部長が、外に泊まると私が言ったら貸してくれたんだ。何でも、魔道具製作部の最新の試作品だそうだ」
何それ、羨ましい。そんな最新技術が試せるなんて。
私は靴を脱いで、ササッと寝袋の中に入ってみた。うん、ちょうど良い感じで暖かい。オルツァーさんの匂いに包まれて、ちょっと暖かくて気持ちよくて……。
「ミネ、可愛いけれど、大人の淑女になったんじゃなかったのか?」
はっ!しまった。オルツァーさんの言う通り、私は22歳の大人の淑女だった。オルツァーさんと居ると、つい、一緒に旅をしていた頃の気分に戻ってしまう。
布製の小屋に片手を掛けて中を覗き込み、クスクスと笑うオルツァーさんに見守られながら、私は、そそくさと寝袋から這い出した。
「何か、身体は立派な大人の淑女になったが、中身までは変わらないな。ちょっと安心したよ」
私は赤面しながら、身体をパタパタと払ってオルツァーさんを見上げた。いつまで、オルツァーさんは大人で、私は子供のままなんだろうか。早く対等な立場に立ちたい。
「そう拗ねるなって。本当に可愛いなあ、ミネは」
嬉しそうにオルツァーさんは、私の頭を撫でる。これじゃあ、本当に親子の様ね。
恋人には、オルツァーさんはどんな態度なんだろう。もっとキリッとして格好つけて、愛を囁いたりするんだろうか。それとも、デロデロにニヤケてベタベタとくっついて、甘い言葉を吐くんだろうか。
どちらもちょっと想像つかないし、オルツァーさんが誰かにそんな事をしているのを見たくないと思ってしまった。
「そんな事より、オルツァーさん。この、これを持ってきた魔道具製作部長さんにお会いしたいんですが」
「は?魔道具製作部長にか。どうしてだ」
話を聞いた途端に、オルツァーさんの顔が険しくなった。
私、何か変な事を言ったのかな。オルツァーさんの機嫌が悪そうに見える。
「ミネは、あまり知らない人に会いたがらないだろう。何故、急にそんな事を言うんだ。まあ、確かにあいつは顔だけは良いが。筋肉は大してないが、なかなか有能だし」
何か最後の方はブツブツと言って、聞き取れなかったけれど、明らかにオルツァーさんは、私に魔道具製作部長さんを紹介するのが嫌らしい。何故だろう。
「ミネが聞きたい事を紙に書いてくれたら、私があいつに渡して来るぞ」
「いえ、直接会ってお話をしたいです。材料や製作過程について、話を聞いてみたくて」
熱心に私が魔道具製作部長さんに紹介してくれと頼み込むと、ようやくオルツァーさんが折れて、紹介してくれる事になった。
「だが、私の立ち会いの下で会うんだぞ」
渋面で不機嫌なオルツァーさんは、かくして本当に、私と魔道具製作部長さんが布製の簡易小屋と寝袋の話から最新の研究について話し合っている間、ずっと側に居た。
「お忙しいのに、長々とありがとうございました」
「いや、いいんだよ。薬の魔女さん。研究について色んな意見をもらったし、オマケに団長が面白かったしさ。楽しかったよ」
美しい薄紫の髪を靡かせ、女の人の様にキレイな顔を綻ばせ、クスクスと笑いながら、部長さんは宿舎に戻って行った。王太子殿下達の世話係として忙しいのだろう。
それにしても……。
「オルツァーさん、何もしてない人を睨むのは、止めた方が良いですよ」
「あいつは、妙に女にモテるからな。随分と楽しそうだったが、ミネは、ああいう男が好きなのか」
「キレイな人でしたね。研究熱心で、確かに話していて楽しかったです。好きなのかって言われても、よくわかりません。研究の話をしていただけなので」
「そうか。そうか、そうか」
そう言いながら、何故かホッとした様子でオルツァーさんは、鼻の頭をポリポリと掻き出した。ちょっと嬉しそうだ。
オルツァーさんが嬉しそうだと、私も嬉しくなる。フフン。フフフン。
「オルツァーさん、いい加減に仕事に行った方が良いですよ」
「虫が多すぎるからな。ちょっと退治してから、仕事に戻るよ」
「え?別に私は虫が苦手じゃないですよ」
「いや、虫退治は、男の仕事だからな。しっかり退治しておかないと、ミネにすぐに集ってくるからな」
「変なオルツァーさん」
ミネに集る男共の退治に、余念のないオルツァーさんです。そろそろ、オルツァー側の視点を書きたいです。




