砦の騎士は、アフターサービスもきちんと
読みに来て下さって、ありがとうございます。
オルツァーさん、もう、ミネにベッタリです。
騎士服を着替えてきたオルツァーさんは、格好いいイケメン冒険者に見えた。
「1日休みを貰おうとしたんだが、エルディアナ様に『薬の魔女の手伝いは、仕事よ。休みは別の日に取って、2人で遊びに行きなさい』と、言われてしまった」
サービスいいな、砦の騎士団は。たかだか私ごときに、騎士団長を貸し出してくれるなんて。しかも、ただの荷物運びなのに。
それにしても、2人で遊びにって、どういう事?私が山にずっと籠ってたから、町でも案内してやれと言う事かな。
「オルツァーさんじゃなくても、もっと下の見習い騎士さんとかでも良かったのに」
「駄目だ、駄目だ、駄目だ!絶対に駄目だからな」
4回も『駄目だ』を貰ってしまった。いくらなんでも、しつこい。
「そいつが、送り狼になったら、どうするんだ」
いくらなんでも、昨日の騎士達の様な人達ばかりじゃないと、思いたい。
オルツァーさんは、「絶対にそんな事は許さないからな」と、ブツブツ言いながら真剣な顔をして、私の手をむんずと掴んで歩き出した。
もう、子供じゃないのだから、手を繋ぐ必要は、ないと思う。相変わらず、オルツァーさんは過保護だ。
でも、ちゃんと私の歩調に合わせて歩いてくれるのは、かなり嬉しい。
厩舎に着くと、既にハリスが荷馬車に繋がれていた。私とオルツァーさんが荷馬車を点検すると、2人の見習い騎士の少年達が、そわそわしながら私達を見る。
「良し!何処も異常無し。馬も、きちんと繋がれているな」
ハリスも丁寧に世話を焼かれた様で、上機嫌でヒヒンと鳴いた。但し、私の顔を見るとそっぽを向いてしまったけれど。
悪かったと思ってるわよ。反省してます。ごめんなさい。
ハリスを撫でながら謝り倒した私の誠意が届いたのか、ハリスは不承不承、私を許してくれた。
私は少年達にお礼を言って、各々に小さな容器を手渡す。ちょっとしたプレゼント用に、いつも作って用意してある一品。
「手荒れに効く軟膏よ。薬の魔女も愛用している逸品なの。寝る前にこの軟膏を塗って寝ると、痛みも収まるし、良く眠れるわ」
リラックス効果のあるカモミールを配合した大叔母様直伝のレシピで作った軟膏は、男女問わず喜ばれる。
見習いの仕事は多岐に渡る。武器や防具の手入れや馬の世話、掃除や洗濯等の家事も一通り叩き込まれる。そして、合間を縫って鍛練。
一人前の騎士になるまで、何度、手の皮が破れるだろう。大叔母様は、いつでも軟膏を沢山用意していた。医務室には、手の平用の軟膏は常備されていないから。
少年の1人は、メイド見習いをしている妹にプレゼントすると言い、もう1人は慌てて、自分は砦の食堂で調理をしている母親と一緒に使うと言い添えた。
2人共、良い少年よね。うん。
「それにしても、良い馬だな。力も強そうだ」
オルツァーさんも、ハリスを撫でてやっていた。
力も強いけれど、ハリスは賢く度胸もあるのよ。フフン。
「カウマン教授から頂いたんです。ハイブリッドの第二世代です。バイコーンのクォーターですよ」
「バイコーンのクォーター!?」
これには流石のオルツァーさんも、そして見習い騎士達も驚いていた。
なかなか世には出ない秀逸なお馬さんです。
「因みに、この子の親達であるバイコーンと馬のハーフ達は、王城の騎士団に何頭か配属されています。生まれるのも育てるのも中々大変ですが、強くて賢いのと、どんな状況でも怯まないので、重宝されている様です。
ハーフ達は、その分、気性も荒くて乗せる相手を選ぶんですが、このハリス達第二世代のクォーター達は、第一世代よりも人に従順で人懐こいのが売りです」
「どうやって、手に入れたんだ?ミネ」
「教授に、キングサイズのベッド大のモチモチフワフワクッションを要求されました。カウマン教授には、前にも一度キングサイズのモノを作ったんですが、そちらは自宅用で、ハリスと交換したのは研究室の仮眠用でした。
もう、とにかくカウマン教授自身が大きいので、それに見合うサイズのモノを作るとなると、むちゃくちゃ大変だったんですよ」
「それにしたって、よく貰えたな。この馬を欲しがる連中は、山程居るだろう」
「初めての外部モニターとして譲られたので、毎日欠かさず事細かに、この子を観察記録を書いて、それを毎週、手紙で送らされました」
確かに、この子は私や大叔母様にとって欠く事の出来ない存在になった。私達は、家族なのだ。
昨日は蔑ろにしてしまったけれど、砦の厩舎の人達を信用していると思っていただきたい。ちろっと横目で再びハリスを見ると、フンっと又もやそっぽを向かれてしまったけれど。本当に、ごめんなさい。
少年達はハリスの出自を知ったからか、ハリスと、そしてハリスの手綱を取る彼らの憧れの騎士団長を輝く目で見送った。ついでに、私も。
オルツァーさんは、男の子達にもモテモテなのだ。何か、ちょっと、嬉しいやら悔しいやら複雑な気分。
「騎士見習いの中にも、素行不良でここに送られて来る子が多いと、大叔母様から聞いていたんですけれど」
「まあ、大概は事情持ちだな。一見可愛くても、2人とも強かだぞ。あいつらも思春期だからな、子供だからって二人っきりになるんじゃないぞ」
「オルツァーさん、そんな事ばかり言ってたら、誰とも友達にもなれないじゃないですか。
私、22歳ですから、行き遅れですよ。誰も相手にしませんてば。まあ、昨日みたいな嫌な例外は居たみたいですけど」
「ば、ばか。ミネは行き遅れてなんか、いないぞ。美人だし、性格も可愛いし、スタイルも良くて胸も大きいし。悪い所なんか1つもなくて、良い点ばかりだ。だから、心配するな」
「最後の褒め方、絶対に女の人に言っちゃ駄目ですよ。胸ばかり見てると思われますから。これだから、嫁の来てが、なかったんですね」
「いや、嫁の来てがなかったと言うか、貰う気がなかったと言うか。ミネと一緒に暮らそうと思って」
「養子を貰う前に、お嫁さんが先ですよ」
「ま、まあ。うん。考えておく……かな」
ハッピーエンドには、まだまだ遠そうだな~と思いつつ、書いてます。




