それぞれの道へ……幸せ?多分、きっと
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、辺境砦でのお話です。
砦に着いた私達を待っていたのは、4人のお偉いさん達だった。
「おや、お前がミネかい。まあ、姉さんの小さい頃にそっくりだよ」
亡くなったお祖母様にそっくりな老婆が言った。この人が、おそらく大伯母様ね。
そして、オルツァーさんの肩をバンバン叩いて嬉しそうにしている男の人が、きっとオルツァーさんの叔父さん。
「やあ、君がミネかい。初めまして。騎士団長のオルザインだ。オルツァーの叔父だ」
オルツァーさんが年を取ったら、こんな感じかな。目の回りに笑い皺のある愛嬌のあるイケオジ。いかにも騎士ですと言う様な、しっかりとした体格をしている。
後の2人は、恐ろしい事に、前女王様のエルディアナ様と、その王配のタンディン様だった。ドレス姿ならカーテシーだけれど、この場合どうすれば良いのか判らず、マイクがオルツァーさんにしていた様にお辞儀をしておいた。
4人は微妙な顔をしていたけれど、不敬だったわよね。学園では、自分がしなければいけないカーテシーを学んだら、他の勉強とバイトに手一杯だったのが、ちょっと悔やまれる。
「まあ、その格好では、ね。それが正解かしら」
これは、ばれているわね。
エルディアナ様は、溜め息を吐きながら、苦笑いをしていた。どうやら、不敬は赦されるらしい。
「まあ、この砦では、身分より実力だからな。問題なかろう。では、鍛練場で実力を見せてもら「タンディン?」」
さすが、エルディアナ様。一声で、タンディン様のワクワクした空気を抑えてしまった。
17歳の小娘相手に、鍛練場で、どんな勝負をお望みだったのやら。こんなにでかくて厳つい熱血イケオジ相手なら、えーっと、あの複合魔術が……。
「タンディン様。申し訳ありませんが、この子は、私の保護下にありますので、御勘弁願います」
オルツァーさんが、スッと私の横に並んで私の肩を抱いた。
この砦に着いてから、オルツァーさんは、ちょいイケメンの顔ではなく、真剣な面持ちのイケメン寄りになっていた。
元々、顔の造作は整っていたのでキリッとすれば、イケメンになってしまうらしい。何だか、ちょっと残念な気がする。
何だか、残念なちょいイケメンのオルツァーさんが懐かしい。
「あら、オルツァー。随分と、ご執心の様ね」
エルディアナ様が、面白そうにニヤリと笑った。
思えば、この方もタンディン様も最初から王族然としていない。引退した身だからと、名前で呼べと言われてしまった。私は根は小心者なので、こういう時は困ってしまう。
「はい。出来れば、養子にしたいと思っております」
オルツァーさんの言葉に、皆の顔がひきつった。
「オルツァー、冗談だよな」
「いえ、団長。私は本気です。私は結婚する予定もありませんし、ミネは17歳ですが、まだまだ後ろ楯が必要です。それに、私は、立派な父親になり育て上げて見せます」
いや、もう、オルツァーさんには、他の子供を育て上げて欲しい。ああ、でも、そうしたら、結婚して奥さんをもらいたくなるかも知れない。
それは、何となく嫌な気がする。
「お前のその根拠は、何処から来るんだ?オルツァー」
「先ず、酒を止めました」
「まあ、大事だな。お前は、酒癖が悪い」
騎士団長さんがそう言うと、皆が真剣に頷いた。
オルツァーさんの酒癖は、どうやら砦では有名らしい。
お酒、本当に止めちゃったのね。良かった。これで、何処かの女の人を連れ込んじゃって責任取らされる事は、なくなったわ。ちょっと安心。
「ここに来る途中も、野宿の仕方や馬の乗り方等を少しずつ教えましたので、今後も私が色々教えてやりたいんです。まだ、大衆浴場や温泉の入り方も教えてませんし」
いや、オルツァーさん。それ、教えてもらわなくて結構ですから。まったく、どれだけ一緒にお風呂に入りたいんだか。
皆の顔が益々ひきつっていく。
これは皆、大伯母様から私の事を聞いているわね、多分。
「ちょっとオルツァー……」
オルツァーさんが私の方を見ていない事を良い事に、私の性別について話そうとする大伯母様や皆に向かって、私は人差し指を自分の口に持って行き、顔を横に振った。
今、それを話されては困るのよ。
それを話してしまうと、同衾問題が出てくる。一緒のベッドで抱っこして寝た私が女だと知ると、おそらくオルツァーさんは責任を取ると言うだろう。
それは、嫌だ。
オルツァーさんに、無理やり自分が好いてもいない女と結婚させるなんて、まるで、オルツァーさんの元婚約者のエルミラみたい。それだけは、絶対に避けたい。
「とにかく、ミネは私の姉の孫だからね。養子には行かせないよ。私が引き取る」
大伯母様は、オルツァーさんに四の五の言わせず、サッサと私を連れて馬車に乗り込んだ。荷馬車だ。
「隠遁の魔術がかけてあるからね。誰も、私達を追っては来れない。尤も、エルディアナ様とタンディン様、騎士団長は私の住み処を知っているけど」
こうして、私達は国境の森……魔物達の住み処のすぐ側にある薬の魔女の小屋に向かった。
「おい、団長。オルツァーの奴、あの子が女の子だって知らないのか」
「タンディン様。それがもう、全然、気付いてないらしくて」
「え。あそこまで可愛い男の子は、滅多にいないでしょう。ちょっとは、疑ってるんじゃないかしら。仕草も、男の子と言うよりは女の子っぽいわよ」
「まあ、男の子だと言われれば、男の子だろう」
「もう。タンディンまで、そんな事言って。でも、どう見ても、あの子もオルツァーもお互いに好きあってるわよ」
「私がオルツァーに、そう言ったら、『男を愛する趣味も、ましてや、子供を恋人にする趣味もないので。冗談ばかり言ってないで仕事をして下さい』と叱り飛ばされました」
「それは、団長の普段の行いのせいだろうが」
ミネから無理やり引き剥がされたオルツァー。意気消沈中です。




