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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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それぞれの道へ……幸せって何だっけ?

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 前話分の誤字訂正、ありがとうございました。訂正、終えました~。




 辺境砦への道は、それまでの旅を思えば、かなりの急ぎ足だった。

 馬を休めは、したものの、思い詰めた表情のオルツァーさんは、最初に私が出会った明るくてぶっきらぼうだったオルツァーさんとは、まるで違って別人のみたい。


「オルツァーさん、怒っているの?」


「ああ、怒っているとも……いや、違うんだ。ミネに怒っているんではなくてだな、ミネを誘拐しようとした仮面の男爵とか呼ばれている男の一味に対して、怒っているんだ」


 ふーん。そうなのね。

 オルツァーさんと馬に乗るのも、きっとこれで最後。背中にオルツァーさんの身体の暖かさを感じながら、そう思った。


「なあ、ミネ。薬の魔女の所で、薬師の修行をするんだろ?」


 私の頭の上に何故か自分の顎を乗せたオルツァーさんは、何だか言いにくそうに話を始めた。


「そうですね。大叔母様から薬の作り方や、色んな事を学ぶと思います」


「その、何だ。この仮面の男爵の件が終わったら、私と一緒に暮らさないか?薬の魔女の元へは、砦から通えばいいし」


 え!?い、一緒に?


「あ、一緒に暮らすって言っても、変な意味じゃないからな。

 薬の魔女の家は、人里離れているからな。ミネの様な子供が暮らすには、ちょっと何だと思う。子供の内は、沢山の人とも交流した方が良いし、砦の騎士団には、ミネと同じような年頃の男の子達が騎士見習いとして住んでいるんだ」


 慌てて言い直したオルツァーさんは、早口で畳む様に理由を言った。

 何だ。慌てて、損をしたわ。

 その何て言うか、プロポーズ的なモノかと思ってしまった私が、恥ずかしい。ちょっと自意識過剰よね。

 そうよね。私達の関係は、そんなモノじゃない。


 私は、思わず溜め息を吐いてしまった。


「私の養子にならないか?」


「はぁっ!?」


 いや、ちょっと待って。

 養子?養子って、養子よね……オルツァーさん?何を考えてるの。


「よ、養子は、ちょっと」


「駄目か?ミネ。私は、きっと良い父親になってみせるぞ?と言っても、仮面の男爵の件が片付いてからだが。

 薬の魔女も、いい歳だからな。いざと言う時の保険の様なものだと考えてみてくれ。子供には、保護者が必要だからな」


 いやいやいやいや。プロポーズの話どころじゃなかったわ。

 何故、私を養子になんて考えが出てくるのよ。

 オルツァーさんは、やっぱり何だか私の考えの斜め上を行く人だわ。この人、ずっと、こんな事を考えてたわけ?


「いえ、一応、父親は存命ですので。結構です」


 とんでもない父親ですが。はっきり言って、要らない父親ですけどね。関り合いになりたくないので、再び会うのが嫌で、絶縁もしてませんが。


「そうか、父親は居るのか。じゃあ、後ろ楯としてで、どうだ?」


 ひどく残念そうなオルツァーさんは、それでもしつこく言ってくる。いやいやいやいや、何なんですか?


「大体、オルツァーさんって何歳なんですか?若いですよね。私くらいの子供が居る様には、絶対に見えませんよ」


「そうか?これでも26歳だぞ。18歳の時の子供として、例のあの女の子供も8歳だな。ミネと、そう変わらんだろう」


 いくらなんでも、私は8歳には見えないわよ。えーと、多分、見えない筈。だって同じ様な背丈のマイクは、12歳だって言ってたし。

 この際だから、その辺は、ちゃんとしておこう。


「少々、幼く見えますが、これでも私、17歳なんです」


「え!?17歳?その、何だ。ちょっと、その。年齢の割には、小さ……いや、まだ伸びる。男は、17歳でも、まだ身長が伸びると聞いた事がある。うん。大丈夫だからな、心配するなよミネ」


 いや、その辺りの情報は別に要らないです。それよりも、問題は、そこじゃないわよ。


「私の年齢を思えば、私は、皆からオルツァーさんの子供じゃなくて、恋人に見えちゃいますよ。問題有りです」


 ビックリしたのか、オルツァーさんは、私の頭の上から顎を退けて少しワタワタし出した。


「こ、恋人!?そ、それは、ちょっと不味いな。あ、ほら、砦が見えてきたぞ。養子は、とにかく、同居の件は考えておいてくれ。

 私は、ミネから離れたくないんだ」


 私から、離れたくない……。うん。それは、私も何となくわかる気がする。


 見えてきた砦が、ちょっと疎ましい。あの砦に入れば、私達の関係は、今の様ではなくなってしまう。元々、通りすがりの赤の他人だったのだ。会わない内に、お互いに、この気持ちを忘れてしまうだろう。


 私達は、砦に入るまで、気持ちを噛み締めるように黙ったまま、時を過ごした。







 



「母ちゃん、ミネ、大丈夫かな。あのオルツァーって言う騎士様、随分と怪しかったぞ。うちの宿に泊まりに来た時から、ミネを可愛がっていたけれど。今回、迎えに来てからは、もう、ミネにベッタリだった」


「あぁ。良いのよ、あれは。まあ、ちょっと人前でベタベタし過ぎだけどね」


「でも、ミネは子供で、男同士だろ。不味いんじゃないか」


「何言ってるのよ。心配しなくても大丈夫よ。それとも、何かい?マイク。お前も、ミネに気があるのかい?」


「何言ってるんだよ、母ちゃん。ミネは男だぞ。俺は、ミネの事が心配なだけだからな」


「うーん。初恋かねぇ。お前も心配しなくても、大丈夫だよ。ミネは、女の子だからね。多分、お前よりも、ちょっと年上だと思うよ」


「女の子!?だったら、余計に心配じゃねえか……って、だ、誰が、は、初恋」


「マイク、顔が赤いよ」


「こ、これは、ちょっと疲れて熱が出たんだよ。ちょっと、顔を洗ってくらあ。絶対に、初恋とやらじゃねえからな、母ちゃん!誰にも言うなよ」


「ははは。うちの息子は、可愛いねぇ」





 おおっ!終わってないわ~。辺境砦に着いただけでした。


 マイク、結構、気に入ってます。


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