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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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男前の定義

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 ミネ、騎士団本部に無事に保護されました?



 宿屋の息子のマイク君は、男前である。


 顔は、至って普通の男の子だけれど、12歳の割には少し大きく、17歳の私と身長は変わらない。なのに、私を庇って大きな騎士達の前に立ちはだかってくれた。

 まあ、確かに私は他の17歳の女の子達よりは、少しばかり身長が小さいですが、何か?


「ミネの連れのオルツァーさんが来るまでは、俺が一緒に付いていてやるからな。心配するな」


 例えオルツァーさんの様に強くなくても、その心意気が素晴らしい。うんうん。


「俺、近所の子供の中では強いけれど、流石に大人には負けるけどな、逃げ足だけは速いから。何かあったら、とにかく、引っ張って一緒に逃げてやるからな」


 まあ、12歳は、まだ子供だからね。うんうん。それでも、ちゃんと私の手を引っ張って逃げてくれるのが、素晴らしい。

 人間、誰しも、オルツァーさんの様に強くはないのだ。


 はぁ、オルツァーさん、どうしてるかな?砦に帰ったって、他の騎士さん達から聞いたけれど、元気にしてるかな。

 もう、私の事なんか忘れて、お酒飲んで犬とか猫をベッドの中に持ち込んでるかもしれない。

 ひょっとしたら、女の子を持ち込んじゃって、よろしくして、朝になったら慌てて飛び起きて、責任とらされてるかも知れない……。

 有りそうで怖いから、考えるのを止めよう。うん、そうしよう。


 騎士団の本部は、思ったよりは大きく、そして、何だか薄汚れていた。


「まあ、ゴツい男共ばかりだし、ちょっとばかり怖い顔をしてる奴も何人かいるが、まあ、皆、悪いやつじゃあ無いからな」


 私を保護しに宿屋まで来てくれた騎士さん達の班の班長さんが、私が泊まる騎士宿舎を案内してくれた。騎士見習い達の空いている部屋を、私とマイクに貸してくれるらしい。

 それにしても、同じ騎士から見ても、怖い顔の人が何人かいるのね。それは、ちょっと、怖いもの見たさで見てみたいかも。



「なあなあ、ミネ。スゴいな。騎士団の本部だ。騎士達が、一杯だ。見ろよ、あの騎士、ムチャクチャでかくねぇ?」


 マイクも普通の男の子だ。騎士に憧れる気持ちがあるのだろうと聞いてみたら、首を横にふられた。


「まあ、近所の子供達は、そりゃあ騎士になりたいって言ってるけどさ。俺は、父ちゃんと母ちゃんの後を継いで宿屋の亭主になるんだ。身体を鍛えて、強くて頼れる宿屋の亭主になる。母ちゃんみたいにな」


 うん。と言うか、お父さんみたいにじゃなくて、お母さんみたいになのね。確かに女将さんは頼れる人だよね。うんうん。


「今、ちょっと立て込んでてな。いや、大した事はないんだが、ちょっとな。晩めしには早いんだが、食堂が、ちょっとばかり大変な事になっているから、手伝いに行かねばならないんだ」


 何だか判らない内に、私とマイクは宿舎に荷物を置いてすぐに、班長さんと一緒に食堂へ行く羽目になった。


「ああ、今日はオーロの当番か。ついてないな」


 班長さんは、そう呟いた。

 何が、ついていないんだろう。


「騎士達って、普段は、何を食べるんだろうな。ミネ。きっと、ご馳走だぞ」


 私も騎士ご飯は初めてだけれど、オルツァーさんを見ていて判ったのは、とにかく沢山食べる事だ。

 オルツァーさんは、オルツァーさんのご飯の量を見てビックリしていた私に


「騎士は身体が資本だからな、しっかり食べてないと大きくて立派な騎士になれないぞ」


 と言った事を思い出した。大きなお世話だわ。私は騎士じゃなくて魔法薬剤師になりたいのだと、何度言っても、彼には通じなかったけど。


 私とマイクは、食事を貰う為に並ぶ騎士達の後ろに続き、騎士達の半分の量を食堂の厨房の男の人によそってもらい、早速、席に着いて食べ始めた。

 皿によそわれた料理は、大きなソーセージは生焼けで、野菜炒めは炒め過ぎてヘロヘロで所々焦げすぎていて、スープは大きな具がゴロゴロと入っているが生煮えで味がしなかった


「良かった。今日は、まだ食えるモノだ。少なくとも、炭じゃない」


 ホッとした班長さんの言葉からすると、普段は、もっと酷いらしい。


 班長さんが言うには、食堂の料理人の女の人達を怒らせた馬鹿者共が居て、ここ何日か、料理人や掃除洗濯をする人達が仕事を休んでいるらしい。


「彼女達も仕事をして金を稼がなくちゃいけない筈なんだが、それにも増して酷い事を言った奴が居るんだよ。そいつが謝るまでは、皆、戻ってきてくれないだろうな」


 溜め息を吐きながら、班長さんは食事をフォークで、つついた。


「今、厨房に入っているのは、今日が非番の騎士達だ。前の飯は、旨かったのにな。とりあえず、今日、団長が渋る馬鹿を引きずって、謝らせに行ってるよ。この不味い飯も、もう少しの辛抱だ」


 マイクが突如、立ち上がった。


「俺、ちょっと厨房を手伝って来るわ。ミネ、それを食うなよ。生焼けソーセージは腹を壊すからな」


 私も、彼に続いて立ち上がった。


「私も、スープを作るのを手伝うよ」


 男前のマイク少年が立ち上がるのなら、私もそれに倣って立ち上がりますとも。


「よし、やるぞ。ミネ。俺達の侠気を見せてやるんだ。一宿一飯の恩義に報うぞ」


 私達は、厨房と言う名の戦場へ向かった。厨房では、折しも、何かをひっくり返した様なとんでもない音や、皿が割れる音が響いていた。




 




「うぉお!オーロ!何て事してくれんだよ。鍋をひっくり返しやがったな」


「熱ちっ!お、すまん」


「あ、皿が」


「おい、デッセン、ソーセージ焦げてんぞ」


「お前こそ、それは塩じゃねえ、砂糖だ」





 『厨房は、戦場だ!』指揮官の居ない烏合の衆で構成された厨房は、負け戦を覚悟すべし。

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