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貴方に恩はありませんので、出奔させていただきます  作者: Hatsuenya


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20/23

辺境砦の騎士の脅威

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 ミネルバ、無事に宿屋に戻りました。(ホッ)



 アレグサー教授に拉致された宿屋の一室に無事に戻された私は、部屋を掃除中だった宿屋のお婆さんに鉢合わせて腰を抜かされてしまった。


「女将さん~お婆さんが大変!」


 宿屋のお爺さんが医者を呼びに行き、宿屋の亭主にお婆さんを自分の部屋に運んでもらい、宿屋の1人息子は私を見るなり外へ駆け出した。


「まったく、てんやわんやだよ」


 女将さんが、腰に手を当てて独りごちた。


 あいにく、近所の医者は出払っていて夕方まで帰らないらしい。

 申し訳ないので、私はお手製の湿布薬をお婆さんの腰に貼ってあげた。オルツァーさんと一緒に探した薬草で作った痛み止めの湿布薬。

 こんな所で、こんな風に使うとは思ってなかった。

 本当に、ごめんなさい。お婆さん。


 辺境砦の近くまで行く馬車を探して、明日にでも出立するから今日は宿屋に泊めて欲しいと女将さんに言うと、宿屋の皆に止められた。


「後生だから、待っててちょうだい。今着いたところだろう?すぐに馬車を探しに外に行かないで。落ち着いて、ほら、お茶でも入れてくるからね」


 女将さんの態度が、何だか、とても怪しい。宿屋の亭主もお爺さんも、何だかソワソワして、私と顔を合わそうとしない。

 まあ、いきなり何もない所に黒い影が現れて、その中から出てきた人間。そんな私を不振がるのは仕方がないわよね。


 全部、アレグサー教授のせいですが!


 仕方がないので、私は腰痛に効く薬草茶をお婆さんに入れてあげた。

 馬に初めて乗った日、クッションを作るまでは腰が痛くて痛くて死にそうだった。湿布薬も薬草茶も、その時作った副産物。お婆さんに請われるまま、販売する事になった。


「この湿布薬とやらの効き具合、スゴいわねえ。歳をとってからは、腰が痛くて。これを貼るだけで、本当に気持ちいいわねぇ。まるで、天国にいる様だよ」


 お気に召して、何よりです。ようやく座れる様になってきたお婆さんが、身体を起こして薬草茶を飲みながら、ホッと息を吐いた。


「生き返るねぇ。近所のじじばば仲間にも、教えてやりたいよ」


 薬草茶も、お買い上げですね。毎度あり。商売繁盛、有難い事です。


「母ちゃん!騎士さん達、連れてきたよ」


 扉を勢いよく開け放ち、宿屋の息子が息を切らして転がり込むように入ってきた。彼の後ろには、騎士が居て……。

 え?え?何人居るの?


 ひょっとして、私を捕まえに来たとか?


「あ、待って。待ってくれ。何もしない。何もしないからね、坊や」


 宿屋の息子のすぐ後ろに立っていた騎士は、しっかりとした貫禄のある人だったけれど、何故か私以上に焦っている様に見えた。


「そう身構えないで。落ち着いてくれるかい。私達は、君を捕まえに来たんじゃないんだよ。君を保護しに来たんだ。

 とにかく、ここでは警護が、し辛い。騎士団の本部まで一緒に来てくれないか。悪い様にはしないからね」


 サッと私の前に、女将さんが立ちはだかって騎士達から私を隠し、自分の大きな胸の前で両手を組み、騎士達を睨み付けた。

 

「本当に、この子をきちんと保護してくれるんだろうね。この間みたいに、全部終わってから来たんじゃあ遅いんだよ」


 女将さんの言葉に、騎士達は少し、しどろもどろになった。

 この間。あの、私がアレグサー教授に力ずくで連れ戻された時の事だろうか。

 女将さんから、オルツァーさんは無事だとは聞いていたけれども、この町の騎士達は、オルツァーさんが敵を残らずやっつけた後に、ノコノコやって来たと聞いた。


 流石、オルツァーさん。


「大丈夫だ。辺境砦にも、すぐに早馬を飛ばした。辺境砦のオルツァー副団長が来るまで、騎士団にて厳重に警護する事を約束する。

 だから、安心して来てくれ。君に何かあったら、俺達の立つ瀬がない。オルツァー副団長が、俺達を許さないだろうよ」


 いつの間にか、宿屋の亭主やお爺さん、腰が痛くて立てなかったお婆さんまでもが私の前に立ちはだかってくれていた。


「母ちゃん、俺がミネに付いて一緒に騎士団の本部に行ってやるよ。なあ、ミネ」


 私と背丈が変わらない宿屋の息子が、そう言って私に手を差しのべた。





「ミネルバ、忘れ物はないか?他の教授達から、きっちりバイト代は貰ったか?」


「バイト代以外にも、随分と色々、お餞別もいただきました。アレグサー教授から貰ったバッグがなかったら、全部置いて行かなきゃならないくらい貰ってしまいました」


「……そんなにか」


「中には、何なのかわからないモノまでありまして……」


「あいつら、自分達が要らないモノを押し付けたんじゃないだろうな」





 学園に入学した7歳の頃から、教授達の雑用バイトをしてきたミネルバは、結構、教授達の人気者です。



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