強敵
6組目のネタが終わって、MCの常田が進行を始めた頃、出場者待機室では、圭介が、遊星だけに聞こえる声で言った。
「トップ出番にならなかったのはいいが、トリもできれば避けたい。」
「そうだな。そろそろ呼ばれればベストなんだが。」
応える遊星。
「次あたり、来そうな気がする。準備はいいか?」
「あぁ、問題ない。」
6組目の得点が発表される。
833点。
それを出場者控え室のモニターで見て、圭介が言う。
「カリカリ梅さんの作ったいい波は続いている。得点の差は、単にネタの質だ。」
圭介の方を向き、頷く遊星。
「この流れが続くうちに、来い。」
モニターを見つめたまま呟く圭介。
それを聞いて、遊星もモニターに視線を戻したた。
スタジオで、新陽がくじを引く。
常田は、新陽からくじを受け取り、それを見ると、
「7組目は、ハルシネーションです。」
と声を上げた。
遊星は、圭介の言った通りになったことに驚き、圭介の顔を見た。
圭介は、ニヤリと口角を上げる。
その目は、闘志でみなぎっている。
「いくぞ。」
圭介は言った。
「行こう。」
遊星は応えた。
せり上がりが止まり、扉が開く。
「やっと戦えるな。」
と圭介が呟いたが、
その音は出囃子にかき消され、遊星には届かなかった。
扉が開き、二人がステージに現れるが、圭介はヒョコヒョコと歩きづらそうにセンターマイクまでたどり着く。
客席と審査員の顔に疑問符が浮かぶが、それに構わず二人が話し始める。
「はいどーもー。ハルシネーションです。」
「いやね~。最近芸人でもYou Tube始めてるやつ多いじゃないですか。」
圭介が切り出す。
「あぁ、若手はほとんどやってるんじゃないですか?」
遊星が応える。
「そろそろ、僕らもやりませんか?」
「いいですね~」
「でも、大分出遅れているんで、かぶったら嫌なんですよね。」
「あぁ、もうみんな色々やってますからね~。」
「やっぱ、オリジナリティーが大事だと思うんです。」
「それは、間違いないですね。じゃぁ、練習しときますか?」
「お願いします。」
一瞬間をとり、真剣な顔に切り替えて、客席に向かって口を開く圭介。
「みなさん。今、緊急で動画を回しています。」
「いや、ノッケから見たことあるな!」
会場からクスクスと笑いが起きる。
―中盤
「今日は、僕たち二人から大事なお知らせがあります。」
圭介が客席に向かって切り出す。
「え?俺も?聞いてないんだけど。」
遊星が、圭介に問いかける。
客席から、小さく笑いが起きる。
「結論から言うと‥‥」
「はぁ」
「僕たち・・オープンマリッジになりました。」
「絶対違うだろ!」
客席から笑いが起きる!
「皆さんが戸惑うのも分かりますが、結婚には色々な形があっていいと思ってます。」
「いや、みんなそこに戸惑ってるんじゃないから!」
客席の笑いが一段大きくなる。
圭介が、急に怒った表情で、遊星に詰め寄る。
「お前!ずっと一緒にやっていこうって、二人で約束したじゃないか。」
「お笑いをな!え?あれ、そういう意味だったの?」
客席が揺れる。
一拍おいて、遊星が続ける。
「ていうか、そこ行く前に、せめて、”ゼロ日婚”からやれよ!」
客席に爆笑の渦が巻き起こる。
―終盤
「皆さん、僕たち、二人で話し合った結果、離婚することにしました。」
「え?あれだけツッコんだのに結婚してる“てい”で、進んでたんだ。」
「離婚理由は‥‥」
「もう分かりますよ。オープンマリッジで、炎上したからでしょ?」
「“痔”です。」
「やめろ!急に生々しい!」
会場から爆笑が起きる。
「おまえはいいよな‥‥”突っ込む(ツッコむ)”方だから。」
おどけた表情で、たたみかける圭介。
「もう、いいよ!」
遊星が締め、
お辞儀をして、二人がはける。
圭介は、お尻を押さえて、ヒョコヒョコと舞台から捌ける。
“登場したときの動きはこれか!”
観客と審査員が、捌ける二人の背中に大爆笑を浴びせた。
いよいよ、第一章も佳境、
手に汗握る決勝の舞台をお楽しみください!
応援、よろしくお願いいたします。
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