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楽園から続く道  作者: 詠み人知らず


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41/49

戦況

1000PV、ありがとうございます。

圭介は、アペリオの得点を見ると、凄絶な笑みを浮かべて言った。

「おいおいおい、あいつらまじかよ。」

遊星も応える。

「なんだ、アヤコのあのツカミ。どんな肝っ玉してんだよ。」

「あぁ、そうだな。だが、肝っ玉だけじゃない。あの局面で、あれを繰り出せるお笑い脳がヤバい。」

遊星も頷く。

「そして、中島のあのツッコミだ。アヤコのアドリブのボケのポテンシャルを最大限に引き出すツッコミ。あれを瞬時に出せるワードセンス。震えたぜ。」

圭介が続ける。

「‥‥」

遊星は答えない。

そんな遊星を見て、圭介は苦笑する。

「俺たちもツカミで、かぶせるか?」

遊星が、圭介に問いかける。

「いや、いくらかぶせてもあれ以上のインパクトは出せない。」

頷く遊星。

「それよりも、俺にいい考えがある。」

悪い顔で遊星に耳打ちする圭介‥‥


「…しかし、トップバッターでこの得点は、予想できなかったな。」

圭介が話を変える。

「ここ数年でも最高なんじゃないか?」

遊星がそれを受ける。

「だが、島本さんも言ってたように、客席の空気も軽くなった。このまま波に乗れば、今大会は全体的に得点が伸びる可能性もある。」

圭介が、冷静に分析する。

暫定王者席が映し出されたのモニターを見ると、輝幸と綾子が到着したところだった。


「さて、次のコンビだな。この流れに乗れるか…」


――次のコンビのネタが始まる。


出だしが鈍い。

「飲まれたか?」と圭介は思った。

綾子たちは確かに客席の重い空気を吹き飛ばした。

だが、あまりにウケすぎた。

次の組は、その大波に乗るか、飲まれるかの二つに分かれる。

ボケのタイミングで、小さな笑いは起きているが、波に乗れていない。

そして、波に乗れないまま、ネタが終わる。

得点は、811点。

やはり、伸びない。


そして、その次の組も、815点。

「流れが変わったな。」

圭介は、冷静に戦況を分析していた。


――会場に、また、重い空気が漂い始めてていた。



輝幸は、暫定王者席で、戦況を見守っていた。

2組目と、3組目は本来の実力を発揮できず、得点が伸びなかった。

3組目の得点が出たあと、輝幸は、大きく息を吐いた。

4組目のくじが引かれる

次は ――――  「カリカリ梅」だ。


カリカリ梅の漫才は、ボケの南高なんこうが、多彩な物真似を交えながら、小さいボケをテンポよく放つ。そして、レイが短いワードで強烈なツッコミを入れて、笑いを重ねていくスタイルだ。勢いにのると、手が付けられないコンビだ。

「さて、今回はどうだろう。」

輝幸は、汗ばんだ手を握りしめた。


レイと南高が、決勝の舞台に向かう。

暫定王者席のモニターにその後ろ姿が映された。

それを見た輝幸は、歴戦の猛者のような風格を感じた。


二人の漫才が始まる。

二人のネタは、キングオブマンザイを放映する「Aテレビ」とは別の「Fテレビ」で、日曜夕方に放映している、国民的長寿アニメ番組「サザナミさん」のパロディーだった。

「いやぁ、私ね。将来、サザナミさん一家みたいな、穏やかな家庭をつくるのが、夢なんです。」

南高が切り出す。

「ええやん。ほな、練習しといたら?」

と、レイが受ける。

「ええの?ありがとうね。」


「おお~い、南高、野球行こうぜ~」

南高が、ザザナミさんに出てくる「カツミ」の友達、「中城なかしろ」の声真似をする。

「ああ、今行く!」

南高が、今度は、カツミの声真似で応える。


「一人二役なのに、どっちもそっくりだな。」

輝幸は、暫定王者席で、南高の声真似の精度に舌を巻いた。


「アッ」

とカツミに扮した南高が、何かに気付いて声を上げる。

「スマホ忘れた。」

「カツミ君、オッチョコチョイですね。」

南高の一人芝居をにこやかに見守るレイが状況を伝えるが、

「ん?スマホ?」

といって、疑問の表情を浮かべる。

そんなレイをよそに、南高が続ける。

「おい、カツミ!早くしろよ!間に合わなくなるぞ。今、ドジャ〇ズのオッズが高いんだから。」

「いや、スポーツベット!!」

レイが、切れよくツッコむ。

会場から笑いが起きた。

「野球行こうって、そういうこと?」

南高が、カツミの声で畳みかける。

「あっ、マスノさんの通帳も忘れてた。」

「いや、口座から、内緒で送金してる!」

会場の笑いが跳ねた。


――中盤

酒屋のサボちゃんが、御用聞きのため、サザナミさんの家のお勝手口に現れる。

注文を伝えるサザナミさんのお母さんフエ。

サボちゃんは、「ありがとうございました。」といって帰ろうとする。

サボちゃんの帰り際、フエは、サボちゃんに意味ありげにウィンクする。

「いや、この二人、絶対、なんかある!」

会場に爆笑が起きる。


――終盤


「お父さん、お出かけですか?」

フエの声真似で南高が言う。

今度は、サザナミさんの父、「波三なみぞう」の声真似で南高が続ける。

「あぁ、ちょっとな。」

魚を釣る際の、手首をクィッと上げるジェスチャーをして、

「大久保公園に行ってくるよ。」

「いや、立ちんぼ釣り!!」

ツッコむ。レイ。

再び会場に笑いが起きる。

「お父さん、僕も付き合いますよ~」

マスノさんの声で、南高が畳みかける。

「いや、マスノさんもやってる!」

揺れる会場。


暫定王者席から見ていた輝幸は、

表面上は笑いながら、内心では冷や汗が止まらなかった。



圭介は、カリカリ梅のネタを出場者控室で見ていた。

「ネタに仕込んだ全てのボケを当てたな。テンポもいい。」

圭介は、冷静につぶやいた。


ネタが終わり、カリカリ埋めがMC席に到着する。

MCの常田が、カリカリ梅に、

「お前ら、テレビ界から、つまみだされろ!」

とツッコんで、笑いをとった。

「うまいな。」

それを見て、圭介は冷静につぶやいた。

様々な面でやや踏み込みすぎたネタに、客席から笑いは起きたものの、「これ、いいのか?」という、疑問符が多くの観客の頭の片隅にあった。

それを、あえて言葉にすることで、笑いに変え、客席の微妙な空気を払拭したのだろうと圭介は分析した。

そして、重要なのは、「これ、いいのか?」が得点に、どこまで響くだ。



――いよいよ採点が始まる。


一人目、「96点」

会場にどよめきが起きる。輝幸達と同じ得点だ。

「93点、94点、90点、95点、98点、92点、92点…」

高得点が続く、最後は島本だ。

「94点!」

島本も輝幸達に続く、高得点を付けた。

「合計は、844点。カリカリ梅のお二人の得点は844点です!」

常田が大きな声で宣言する。


輝幸は、ほっと胸をなでおろした。

ネタを見た直後は、正直に言って、負けたと思った。

しかし、審査員からは、ネタが反則気味だったことを差し引いたというコメントが相次いだ。

お笑いは時としてルールやモラルの境界線上を攻める。

臆病風に吹かれれば、笑いは起きない。

掛けに勝てば、爆笑がおきる。

だが、それは、常に境界線ラインを踏み越えるリスクと隣り合わせだ。

今回は、カリカリ梅はその境界線を見誤ったようだ。

「結果的には、まだ、暫定王者だ。」

輝幸は、気を取り直すように言った。


5組目は、821点、6組目は、833点。

カリカリ梅の作った良い波に乗ったものの、その得点には届かなかった。



そして、7組目のくじが開かれる。

いよいよ、「ハルシネーション」の名前が呼ばれた。


いよいよ、第一章も佳境、

手に汗握る決勝の舞台をお楽しみください!

応援、よろしくお願いいたします。

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