第25話 八千人再びその2からの八千人再びその3
「囲めぇっ! 全方向から一気に行くぞ!」
「おっしゃ、死ねぇ結城ぃぃぃっ!!」
「よくもアカネさんをおおおおっ!!」
……なんか変なのがいるな。
まあいい。
「ハガネ、ボクの方は大丈夫。だから、暴れて」
「え?」
「覚醒したハガネの本気、ボクに見せてよ。さっきのバッシュみたいに手加減しないで、ね?」
「……バレてたのか」
「分かるよ」
アカネが笑っているのが背中越しにも分かる。
「ハガネのことだもん」
「! ……ぉし、じゃあガチでいく」
俺は腹に思い切り力を込めた。
「っくぞぉらぁあああ!! 止められるなら止めてみやがれぇっ!!!!」
再びイージスからパイルブレードを引き抜き、天に向かって突き上げた。
「俺はぁ!! ここにいるぞぉっ!!!! 弁慶ぇええええっ!!!!」
俺の向いてる方向の奥から、これまたでかい声が聞こえてきた。
「はぁーーっはっはっは!! やるなあ結城ハガネ! この武蔵坊弁慶、逃げも隠れもせぬ!! 見事ここまで突き抜けて魅せよ!!!!」
「上等だ!! 素っ首洗って待ってやがれっ!!!!」
身体から藍色の光が、爆発光の様に吹き出す。
俺は、最高にドキドキしていた。
――たまらねえ。
いつしか俺は、戦うことに喜びを感じていた。
ほんのひと月ちょい前は、ただの高校生だった俺がだ。
告白されて、事故で死んで、そしたら告白してきた子はワルキューレで、エインヘリヤルとしてスカウトされて。
神に殺されて、同僚に喧嘩売られて、八千人と戦って。
歳さんと出会って、巨人を倒して、弁慶さんと出会って。
黄泉に連れて行かれて、俺の中のイザナギの欠片と出会って。
そして、覚醒した。
セカンドラグナロク? 日本神話の再興?
今はそんなこと、どうでもいい。
惚れた女を守るために。
何より、俺の充足のために。
立ちはだかるなら悪魔も倒す。
邪魔をするなら神でも殺す。
最強の盾と、最強の矛。
雑でも、適当でも、流されててもなんでもいい。
俺はただ、目の前の敵を打ち倒す。
「ぅおらあああっ!!」
「死ねええええっ!!」
数えきれない数の剣が、刀が、槍が、拳が、槌が、斧が俺に襲いかかる。
「…………」
俺はただ、無言で盾を正面に向け、横薙ぎに振り抜く。
技もなにもない。ただ振るだけだ。
だが、それだけで、目の前に拡がる戦士たちの海が、真っ二つに割れた。
「なっなん……っ」
「あの力はなんだ!?」
「おかしいだろ! あいつも俺らと同じエインヘリヤルだぞ!!」
惜しい。
一緒じゃねえんだ。
知ってるか?
抑えつける力が強いほど、反発する力は強くなるんだぜ。
18年間、神の力で抑えつけられてた俺の魂がどれほどか。
味わえよ。
割れた戦士の海の先。
そこには、伝説の僧兵、武蔵坊弁慶が立っていた。
おーおー、嬉しそうに笑っちゃって。
俺も同じですよ、弁慶さん。
あんたと、戦ってみたかったんだ。
「……」
「……」
なにか喋ろうと思っても言葉が出ない。きっと弁慶さんもそうだろう。
後ろではアカネが絶賛無双中だ。彼女の起こす風が、ここにまで吹き込んでくる。
「っくぜぁああ!!」
「まてぇっ!!!!」
「……あ?」
俺と弁慶さんとの間に、入ってきたやつがいた。
日本刀か、いい趣味してるな。
「……誰だっけ? ああ」
少し考えたあと、思い出した。
「せんぱいじゃないですか。ショッピングモールの」
「そうだっ!! あれからも模擬戦で顔合わせてただろうが!」
「へ? そうなんすか? ……まあいいや。ちょっとどいてくださいよ」
「そうはいくかっ!! 結城ハガネ! 俺と勝負しろっ!!」
……え? しょうぶ?
「……本気すか」
「当たり前だ! 少しは強くなってるようだが、こっちだって毎日訓練してんだ! てめぇ一人にやられねえっ!」
……へえ。
あのせんぱいが。
……かっこいいじゃねえかよ。
だったら俺も本気だ。
俺と先輩の間に土埃が舞う。
おれは盾を前に。せんぱいは刀を上段に構えた。
そして。
「きぇああああ!!!!」
「っしゃあこぉいっ!!」
せんぱいが構えたまま気合を入れる。
「ちぇええすとぉぉおおおおっ!!!!」
「! はええっ!!」
やべえ、つええじゃんせんぱい。
弾丸の様に飛んでくるせんぱいに、カウンターのバッシュを仕掛ける。
「うおおおおっ!!」
「おおおおおおっ!!!!」
振り下ろされる刀とイージスがまともにぶつかった。
――ぃぃぃいいいいいんんん……――――。
さっきのヘイムダルと似た状態だ。
だが、俺はイージスを飛ばされず、代わりにせんぱいの刀が、真っ二つになっていた。
ひゅん、と風切り音を上げて、折れた切っ先が地面に突き刺さる。
「……くそ」
せんぱいが地べたにへたりこんだ。
お疲れ様。
「……なんて言わねえぜ、せんぱい」
俺はせんぱいの顔に、パイルバンカーを向けた。
「おい! もう勝負は決まってんだろ!!」
「てめえ鬼か! もう戦う気なくしてるじゃねえか!!」
「っせぇっ!!!!」
馬鹿じゃねえのかこいつら。
「あめえんだよ馬鹿どもが!! さっき歳さんはなんて言ったよ!? せんぱいはどんな覚悟で喧嘩売ったんだよ!?」
ここでトドメを刺さねえなんざ。
ハナから選択肢にねえんだよ。
「そのせんぱいの覚悟を!! 味方のてめえらが!! 邪魔ぁするってのかぁっ!!!!」
しーん、と空気が静まり返る。
土埃はもう舞っていなかった。
俺はせんぱいに向き直り、再びイージスを構える。
「いい気合でした。つええっすね、せんぱい」
「世辞はいらねえよ。殺れよ」
「押忍」
ばしゅ、と射出音がし、せんぱいは一度大きくのけぞって、そのまま光となって霧散した。
「……さて」
「……見事」
次はあんただ、弁慶。
ごめん、まだ戦闘全然続きますw
引き続き応援、お願いします!
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