第24話 八千人再びからの八千人再びその2
とはいえ、どうしたもんかなどと考えていると、アカネが耳元で囁いてきた。
「ハガネ」
「おう」
「1発耐えて」
「え、俺殴られんの?」
「ちーがーう」
「ああ、あれか」
戦車の砲塔がこっちを見てる。
狙う相手なんか俺たちしかいねえんだから、まあ当たり前か。
受けて立つ、と覚悟はしたが、受けた後のプランは、俺にはなかった。
そこにわざわざアカネが耐えろと言ってきた。
てことは、何か考えがあるんだろう。
「射線の同志は避けろー!」
かすかに声が風に乗ってくる。
――うし。
「何する気かわかんねえけど、任せるわ」
「うん、任せて」
「ってーーーーっ!!!」
俺はイージスに戻したパイルブレードを地面に打ち込み、盾面に身を隠した。同時に轟音が鳴り響く。
ドォーーーーーォン!!!! ……フォォオッ!!!!
音の次に来たのは、衝撃波だった。空気がそのまま硬くなって俺にぶつかってくる。
「ぐっくぅぅっ」
地面に突き刺したパイルブレードがしなる。とんでもねえ勢いで、バカみたいにでかい手でビンタされてるような感覚。
そして。
でけえ太鼓をひっぱたいたような、耳を直接殴られたような轟音と共に、それが来た。
「ぐっあああっ!!」
真正面から来る、意思のない暴力。
加減などしようもない、衝撃の塊が俺に襲いかかってきた。
「……っぁぁああああああっ!!!!」
弾いたのは一瞬のはずだ。だが、肩から先の痺れのせいで、やけに長い間力を入れていたようだ。
気がつくと砲弾は俺の左側に逸れ、後ろから迫ってきていた、右翼の陣の一角を壊滅させていた。
「う、受けやがった……」
「嘘だろおい……」
様子を見ていた前線の連中から声が漏れる。
そうだろうそうだろう。
「に、二発目! 二発目まだか!!」
え、二発目!?
やべえ、想定してなかった。アカネが1発耐えろっていうから、無意識にそれだけしか考えてなかった。
まだ痺れのとれない腕で耐えきれるのか……?
だが、その心配は、杞憂にすぎなかった。
「! やってくれるじゃねえか……」
俺が砲弾を受け、弾かれた弾道が後ろの連中を蹂躙するのに気を取られた隙に、アカネは全速力で戦車に近づいていたらしい。
アカネは、戦車の砲塔を根本から斬り落としていた。
「槍で斬り落としたってのか!」
「ありえねえ……」
口々にざわめくやつらを横目に、おれはアカネの元へと向かう。
「くそっ、結城が動いたぞ!」
「風見さんと合流する気だ! その前に仕留めろ!!」
「うぜえっ!!」
盾を構えてパイルブレードを抜く。そして、敢えて密集している場所を狙って突っ込んだ。
「囲んで袋だ!」
「舐めんじゃねえぞガキぃっ!!」
「舐めちゃいねえよ」
だからこっちに突っ込んだんだ。
俺は、ブレードを横薙ぎに何度も往復させる。大味な動きなので、タイマンや広い場所では不利になるが、今ここは敵が密集していて、かつ味方はいない。
つまり、暴れ放題と。
密集地帯に突っ込んだ利点の一つはこれだ。
「どぉけぇえええっ!!」
受けて斬る。斬り終わりにバッシュを重ねる。また斬る。
口に出せばそれだけのことだ。
それだけの動きを、やつらは制御出来ない。
人が多いからだ。
子供の駄々っ子パンチを一人で受け止めることは出来るが、大勢となるとなぜか遠巻きになりがちだったりする。
誰かがなんとかするだろう、という心理も働く。
馬鹿野郎が。
誰も何もしちゃくれねえよ。
武器を持ったエインヘリヤルを、ただ一人で蹂躙する。
カッコいいじゃねえか。
俺だって元は18歳の若造だ。
惚れた女にいいかっこを見せたいという気持ちも当然ある。
蹂躙とは言え、当然無傷では済まない。あちこちに切り傷や打撲傷は出来ているが、そんなことは、今の俺にとってどうでもいいことだった。
「ハガネぇっ!!」
「! アカネか!」
アカネもこっちに向かっていたらしい。予定より早めに合流することが出来た。
「戦車ぶっ壊すとはすげぇじゃねえか!」
「言ったでしょ、1回耐えてって」
「くくっ、違いねえ。……いい感じに集まってきてるな」
「外側から飛び道具の人たちが狙いをつけてたよ」
「だろうな」
密集地帯のもう一つの利点。
それは、味方が密集した場所に飛び道具での攻撃は出来ない、だ。
「でも大丈夫」
「お?」
「来るついでに八割くらいは減らしたよ!」
「マジか! さすが俺の嫁!!」
「よ、嫁っ!?」
「おっと」
ダダ漏れになっちまった。まあいいか。
俺とアカネは、背中合わせに構える。
不安は全くない。ただ、ひたすらテンションが爆上がりしてる。
「とりあえずこいつら全員ぶち倒す! 右翼の連中も後ろから集まってる。この混戦でまとめてぶっつぶせれば後は正面の本体だけだ! 行けるか、アカネ!?」
「誰に言ってんのさ! 二人なら最強、でしょ?」
「……上等っ!」
覚悟しろよ、新選組。
本当の無双プレイってのを見せてやるぜ。
ハガネ&アカネVS八千人、まだまだ続きます!
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