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第15話 巨人からの合体技

 戦闘は、俺の投石から始まった。


「……ゴ」


 コツン、と背中に当たった石に、巨人はゆっくりと振り向く。腰に布を巻き付けただけのほぼ裸、武器もない。

 しかしトロくせぇ。こちとら、てめぇにだけ見つけてもらわないといけねえんだよ。ちんたらしてたら亡者にも気づかれるじゃねえか。


「……ぐる?」


 ほら、言ってる側から。と、やつらを挟んで反対側に回り込んだアカネがアクションを起こす。あっちは投槍か。かっこいいな。

 アカネに一番近い亡者の肩に投槍が刺さる。それに気づいた他の亡者もアカネを見た。3人の亡者は、そのまま音もなくアカネに近づいていく。

 今回は剣が2に棍棒1か。アカネなら問題ないだろうな。

 予想通り、亡者と巨人は指揮系統が違うのか、連携を取ろうという動きはない。それどころか、お互いを意識している素振りすらない。


「おら、こっちだデケェの!」


 巨人は俺に気づくと、にわかにスピードが上がった。それでも並の人間と変わらない程度、ではある。

 おっかねえのはその筋力だ。

 5メートルくらいかと思った身長は、一軒家の屋根を見下ろす程、8メートルはありそうだ。その巨体が、人間と変わらないスピードで動く。今このスピードってことは、戦闘モードはもっと速くなる。

 それを可能にするための筋力は、人間の数倍程度では済まないだろう。


「おごああああ!」


 地面を震わせる程の咆哮。威嚇としては充分だ。

 けど、こちとら散々その手のは喰らってんだよ。


「うるっせんだよオラぁっ!!」


 盾を構えて突っ込む。上からヤツの拳が襲いかかってくるが、それは織り込み済みだ。

 右にステップを踏みながら両手で盾を持ち、拳をいなす。


「うぐっ」


 結構な衝撃があるが、拳はそのまま地面に突き刺さった。すかさず持ち替え、やつの手首に杭打機(パイルバンカー)を撃ち込む。


「あ゛あ゛!!」


 パイルバンカーは巨人の手首に突き刺さった。


「お、入った」


 とりあえずここまでは様子見だ。

 こいつがでかいだけなのか、それとも何か隠し玉を持ってるのか。それが分かれば、やれることも増える。

 俺だけで倒せるとは思わないが、アカネが来るまで、立ち回り次第ではなんとかなりそうだ。

 そのアカネはと言えば、現在絶賛大暴れ中である。

 剣の1体は既に消え、残りは剣1、棍棒1。今回は俺との距離が離れているため、広範囲を攻撃する技は使えない。最悪俺を巻き添えにしたところで、巨人にどう影響するかが分からない。なので、アカネは1体ずつ片付けていかないといけない。


 さて、今は巨人(こいつ)だ。

 手首から血を流しながら、巨人はそれでも動きを止めない。地面を殴った右手をそのままに、左の拳が横薙ぎに俺を襲ってくる。


「おあっ!」


 足がもつれて倒れた俺のすぐ上を拳が通り抜ける。その時に発生した風で、俺の身体は一回転した。


「くっそ、きっちぃ……」


 まともに当たったらアウトだ。単純に防御に徹するなら二、三撃は耐えられるだろう。だが、それ以上は無理だ。

 だが。


「当たらなきゃいいんだろ!」


 体勢を立て直し、通り過ぎた拳が戻る前に密着する。巨人が立ち上がっていない今は、チャンスだった。


「おらぁっ!!」


 パイルバンカーを脇腹に。ガイン、と硬い音がして弾かれる。

 骨か。でも。


「お゛ろああああああっ!!」


 巨人は脇腹を抑え、巨体を倒して転がった。どうやら相当効いたらしい。


「どうよ!!」


 勝ち誇った瞬間、ゾクリ、と背筋に寒いものが走った。

 痛みを堪えつつ、巨人がこちらを視ていた。

 その目は澱み、暗い光をたたえている。


「……やっとかよ」


 あの目は、本気だ。

 それまでどこか余裕のあった巨人に、今はその余裕がなくなっている。

 アカネは丁度2体目の棍棒を屠り、最後の1体、剣の亡者と対峙していた。


――――


「があああっ!!」

「おらぁあああっ!!」


 巨人が拳を叩きつける。

 俺が盾でいなす。

 一発一発は重いが、大振りだ。力任せにぶん殴ってくるから軌道が読める。全身の力を使い、丁寧にさばいていく。

 だが、それも臨界点に達しようとしていた。

 巨人が大きく両腕を上げ、一際大きい咆哮と共に、同時に振り下ろしてきた。


「ごっがあああああああっ!!!!」

「うおおおおおっ!!」


 それは、偶然だった。

 さばききれないと踏んだ俺は、巨人の股の下を全力で走り抜けた。直後、

 ドゴン!!

 という大きな音と共に、俺の背中に何かがぶつかった。巨人の拳で剥がれた地面が、俺を直撃したのだ。

 それに押され、俺の身体は加速した。


「おわあああっ!」


 吹き飛ばされて加速した先には、アカネと向かい合う剣の亡者が、後ろ向きに立っている。

 チャンスだった。


「うらぁっ!!」


 パイルバンカーを亡者に向け、レバーを引く。加速した俺から放たれた杭は、剣の亡者の胸元を貫通し、アカネの眼の前で止まった。


「きゃあっ!!」


 言いながらアカネは視点を俺へ、更に俺の後ろへと向ける。そしておもむろに彼女の槍、蜻蛉切を振りかぶり、そして俺の後ろ、巨人の頭へ向けて、全力で投げつけた。


「あ゛っ!! ぎぃあああああああ!!!!」


 蜻蛉切はヴン、と音を立てて巨人の口に吸い込まれた。


「ぎゃああぉあああっ!! げぇっ、げぇぇぇっ!!!!」


 口を抑えてのたうち回る巨人。その隙にアカネは新しい槍を手に出現させていた。


「ハガネ!!」

「おう!!」


 俺は左腕の盾を構え、右腕の肘を肩まで上げて、腕を畳んだ。そこにアカネが膝を立てて乗る。

 練習した合体技だ。


 訓練の途中発覚したことだが、俺の瞬発力は航続距離こそ短いが、アカネのそれを瞬間的に上回るらしい。

 それを有効活用すべく開発した技だ。


「うおおおお!!」

「はああああ!!」


 アカネを乗せた状態のまま、巨人に向かって走る。数歩進んだところでジャンプ。更にアカネが俺から飛び立ち、そのまま槍を突き出して真下に落下する。俺は盾を構えたまま、巨人の心臓部に向かって落下する。


「打突式!!」

「ダブルインパクトぉぉ!!」


 俺の盾が巨人の心臓部を強打する。ビクン、と手足を痙攣させる巨人に、時間差でアカネの槍が襲いかかる。


「ゴフッ!!」


 巨人は喉元を槍に貫かれ、大量の血を吹き出しつつ絶命した。

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