舞とハルノお買い物について
『神秘の洞窟』の探検はその後も続いた。
あまり魔物の数が多くないダンジョンだったらしく、頻繁には出てこない魔物をティフィアに倒させ経験を積ませる。
しばらく経ったあとには、ティフィアはだいぶ蝙蝠を使役した戦闘に慣れてきたようだった。
「お師匠様が仲間にしたい魔物ってどんなのなんですか?」
戦闘の合間の休憩時間に、ティフィアがそう聞いてくる。
正直、これといって狙っていた魔物がいる訳でもないので、俺は首を捻りながら考える。
「強いて言うなら、今仲間にしてる魔物じゃ出来ないことができるやつが欲しいかな。
海で泳げる、とか」
「ここ、洞窟ですけど」
「まあここでは無理だな」
洞窟の中に湖があるようなパターンもあるかもしれないが。
とにかく、出てくる魔物が特にそそられるようなものもなく、俺は肩を落とす結果となった。
その後も目新しいことが起きることも無く、その日の修行は終了となった。
宿に戻ったあと、軽く嫉妬していた舞が可愛かったのは言うまでもない。
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一方の舞とハルノは、優斗とティフィアが『神秘の洞窟』に行っている間、仲良く買い物をしていた。
舞は基本的には優斗と一緒に行動しているため、ハルノと二人きりで話す機会は早々ない。
二人は女子トークで盛り上がっていた。
案の定、舞の肩にはリースがいるが。
「マイは、ユウトのどこで好きになったの?」
興味津々にそう尋ねるのはハルノだ。
お世辞にもイケメンだとは言い難い優斗のことを、誰が見ても美少女である舞がどのようにして好きになったのか、気になっていたのだ。
もちろん、ハルノ自身、優斗に宿のことや魔物の襲撃の時などに助けられ、その中身がカッコイイことは知っている。
ただ、それは偶然の産物であって、舞が優斗を気になるようになったきっかけが知りたかった。
「えへへ、なんか恥ずかしいな」
そう言いながら照れる舞の姿は、女であるハルノからしてもドキッとさせられる表情をしていた。
そして舞の口から語られるのは、優斗が土下座したあの日の出来事。
優斗にしてみたら、自分の黒歴史を掘り返されている気持ちになるだろうが、ハルノは別の部分で衝撃を受けていた。
「あのユウトが、土下座!?」
『にわかには信じ難いわね……』
舞の肩の上のリースまでもが同意するほど想像しにくい光景に、ハルノは驚きの声をあげる。
あの黒竜アマルーナを眷属にし、他にも様々な強力な仲間を持ち、本人も強く、あの常に余裕を見せている優斗にそんな弱い時代があったことが、二人には信じられなかった。
「まあ、今の優斗君を見てたらびっくりだよね。
でも、私はあの頃の、力はないけど心は強かった優斗君を好きになったの。
もちろん、今も大好きだけどね、えへ」
「うへぇ」
『流石は舞ね…!』
そう惚気けるように言われた言葉にハルノの口の中は甘ったるくなる。
リースにとって優斗は逆らえない対象であるので、その優斗と恋人の舞はその点においては尊敬できる部分だった。
「それより、ハルノちゃんはどうなの?」
「どうって?」
「カインドさんのこと」
自分の話は終わり、とばかりに舞が話題を変える。
ハルノはなるべくその話は避けたい、と食材選びに熱中している体を見せるが、舞は逃がさない。
「私はちゃんと話したんだからハルノちゃんも話さないと不公平だと思うな〜」
「うー、わかった、わかったから!」
ハルノの顔を覗き込むようにして笑みを浮かべる舞に、ハルノは降参、と両手をあげる。
「正直、あそこまで真っ直ぐ好意を伝えてくれたのは、嬉しかった気持ちもあったよ。
でも、この前のユウトとの戦いでちょっと失望したって言うのが今の気持ちかな」
「もしカインドさんが優斗君に勝ってたら?」
「勝たなくても、諦めないでいてくれたら、一緒に旅をしてもいいかなくらいには思ったかも。
たらればなんて意味無いけどね」
ハルノにとって、真っ直ぐに告白してくれたのは大きなポイントではある。
優斗と舞のような恋愛に憧れていたのも事実だし、もしかしたら自分がそういう風になるのかもと想像してみたりもした。
ただ、現実には、簡単に勝負を諦めたカインドとそれに落胆した自分。
その理想と現実の差異は、あまり思い出したくないことであった。
「そっかぁ。
なんかごめんね?無理に話させちゃって」
「いいよいいよ、お互い様だしね!」
モヤモヤしていたことを吐き出せて、逆にスッキリとしたハルノ。
二人の恋バナはそこで一旦終了し、話題は次に行く街の話へ。
『次は『ケッカイ王国』に行くのよね?』
「うん、タウリさんの話だと、そこに前の勇者がいるらしいから」
15年前に召喚され、その時代の魔王を討伐した勇者達。
自分たち(正確には一樹達)と違い、たった二人でそれを成し遂げた彼らは、『ケッカイ王国』で隠居しているらしい。
詳しい場所を教えてもらった優斗と舞は、次の目的地をそこに定めていた。
『それなら、舞に言ってほしい場所があるわ!』
リースがそういった類の注文をするのは珍しく、舞はリースに詳しい話を求める。
『舞には私がいるから必要ないと思うけど、一応、一応ね?
私の部下の精霊が『ケッカイ王国』のある場所にいるの!
だから、よかったら仲間にしてあげてくれない?』
「え、ほんと!?
私からもお願いしたいくらいだよ!」
そのリースの話は、舞にとって思いがけないことだった。
『精霊使い』である舞だが、そのレアな性質上、そもそも精霊を仲間にする機会がほとんどない。
リースを仲間にできたのも奇跡のようなものだった。
それが、新しく仲間を増やせて、それがリースの知り合いともなると、舞にとっては嬉しい知らせ以外の何者でもなかった。
「いいなー、マイは。
私も戦う力があったらなー」
「ハルノちゃんは女子力高いからいいじゃない。
私も料理ができたら、優斗君に手作りしてあげるのに」
「あはっ、こういうのをマイの国ではなんて言うんだっけ?」
「隣の芝生は青い、かな?」
そう言って笑いあう二人はどう見ても仲がよく。
二人の買い物兼女子会は、その後もしばらく続くのであった。
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