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職業リア充で異世界無双。  作者: すみを。
第2章:キハイ王国編
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キハイ王国の旅立ちと不気味な存在について

いつものようにギルドに顔を出していた今日。

ようやく、冒険者カードが出来上がったとタウリから告げられる。


「待たせて悪かったな。

ほら、これが冒険者カードだ」


渡されたカードはかなりいい素材が使われているようで、銀色に輝いている。

無くしたらめんどくさいことになるらしいので、丁重にカバンの中に仕舞う。


「お前らはもう『ケッカイ王国』に向かうのか?」


「ああ、流石に今日中にとはいかないが、明日には出発しようと思ってる」


いつ冒険者カードが出来上がるかわからなかったので、あらかじめ準備はしておいた。

『ケッカイ王国』への道も聞いたし、この街でできることはひととおりやったつもりだ。


「そうか、向こうについたらあいつらによろしく伝えといてくれよ」


「わかった」


俺が前の勇者に会おうとしていることはタウリも知っている。

その目はなんとなく懐かしむような感情を映し出しているような気がした。


「じゃあ、世話になった。

また会おう」


別れの言葉を残し、俺たちはギルドを去る。

次にタウリと会うのはいつになるだろうか。

旅を進める関係上、どうしても一度通った街に逆戻りすることは少なくなる。


そう考えると、なんとなく寂しいような気がした。





「『ケッカイ王国』まではそんなに遠くない。

けど、時間の短縮のためにまたアマルーナに乗っていこうと思う。

ティフィアは大丈夫か?」


「は、はい、頑張りますっ!」


前回、アマルーナの高速飛行で泣いてしまったティフィアに声をかけると、気合いの籠った返事が返ってくる。

ハルノはアトラクション感覚でワクワクしているし、舞も全然平気そうだ。


俺はとりあえずアマルーナを黒竜の姿で召喚する。


「『召喚サモン“黒竜アマルーナ”」


おぞましい音を立てながらゲートが開き、中からアマルーナが出現する。

最初は俺以外のみんなは少なからずビックリしていたが、今では慣れたもので、静かにその様子を眺めている。


「アマルーナ、また次の街まで俺たちを乗せていってくれ」


『うーむ、移動用に使われるのは気が乗らんと前も』


「もちろん、また思う存分戦ってやるから」


『ほら、さっさと乗って行く先を教えるのじゃ!』


前回と似たやり取りに皆が苦笑。

相変わらず戦闘狂でチョロいアマルーナである。


全員がアマルーナの背に乗り、方角を指定する。

前と同じことを繰り返さないために、速度は抑えめに、と忠告しておく。


『妾に任せるのじゃ』


「うぅ、高いです……」


ゆっくりと浮上し始めたが、ティフィアはやはりまだ怖い様子。

申し訳ないが慣れてもらうしかないため、介抱役をハルノに任せる。


「ほら、下見てみなよ!

『キハイ王国』があんなに小さくなってるよ」


「うわぁ、本当ですね!」


ハルノは別のことに注目させることで気を紛らわせる作戦に出たようで、それは大成功のようだ。

ティフィアはみるみるうちに小さくなっていく景色を見て、目を輝かせている。


「ねえ、優斗君。

『ケッカイ王国』についたら行きたい場所があるの」


「ん、どこに行きたいんだ?」


風で靡く髪を抑えながら、舞が俺の服の裾をクイクイと引く。

舞の頼みならなんでも聞くつもりなので、許可をとる必要は正直あまりない。


「リースが、『ケッカイ王国』に部下がいるって言ってたから、その子を仲間にしてあげたいの」


「ほー、それはいいな。

新しい精霊が仲間に加わるのは力強い」


リースは四大精霊の一人である。

そのリースの部下となると、かなり強力な精霊だと想像出来る。

アマルーナとの対戦に勝てたのはリースが途中で時間を作ってくれたからでもあるので、精霊の頼もしさは身に染みて実感しているのである。


「その時は、優斗君にもついてきて欲しいなぁって。

結構大変なダンジョンらしいんだ」


「もちろん行くよ。

ダンジョンならその件がなくても多分行ってるしな」


『キハイ王国』では仲間を増やすことが出来なかったが、『ケッカイ王国』にあるそのダンジョンが強力なら、その点でも期待できそうだ。


そうして期待に胸を膨らませていると、アマルーナが『む?』と訝しげな声をあげる。


「どうした?アマルーナ」


『なにか、前方から禍々しい雰囲気が漂ってきているのじゃ』


「前方?

こんなところでか?」


今いるのはかなり上空。

下の景色が見えなくなるほどの高さだ。

アマルーナが無駄な嘘を吐く訳が無いので、前方に何かいるのは事実。

となると、不吉な感じがしてくる。


『主殿、どうするかの?

避けていくことも出来るが、放っておいたらやばそうじゃ』


「そう言われたら、行くしかないな。

みんな、大丈夫か?」


俺とアマルーナの会話が聞こえていたようで、さっきまで後ろで楽しそうに会話を弾ませていたティフィアとハルノも、どこか緊張感のある表情を浮かべている。


だが、覚悟を決めたようでそのまま頷いた。


「気をつけてね、優斗君」


「ああ、やばそうなら逃げるよ」


心配そうにこちらを見つめる舞に、俺は笑いかけながら頷く。

さすがに、ここで戦うという選択肢は取りたくない。

リスクが高すぎる。



『ふむ、見えてきたぞ。

あれじゃな』


しばらく経ち、アマルーナがそう告げる。

さすがにその頃には不気味な感じがここまで伝わってきていた。


「あれは、なんだ?」


まだ離れているのではっきりとは見えないが、翼が生えているのが見える。

それも、よりにもよって黒い翼だ。


「只者じゃないのは間違いなさそうだな」


「うん、悪魔、とかなのかな?」


舞の推測はなんとなく的を得ているような気がした。

黒い翼を生やし、上空に鎮座する様子は、正しく想像上の悪魔そのものだ。

近づくにつれ、より一層緊張感が増す。


そして、はっきりと見える位置まで来た時、そいつはこちらを見てニヤリと口角を上げた。

中性的な容姿のそいつは、翼を除けばただの人間にも見えなくはない。


「まさか、こんなところに人がいるとは思いませんでしたよ。

それにその竜は黒竜。

中々に愉快な仲間をお持ちのようで」


「俺もこんなところに何かがいるとは思ってなかったよ。

聞いても無駄だと思うが、お前は誰だ?悪魔かなにかか?」


こちらを見ても余裕そうな雰囲気を醸し出しているそいつは、律儀にもその質問に答える。


「あんな汚らわしいものと一緒にしてもらいたくないですね。

私が使えるのはあの高貴なお方のみ。

その幹部が一人、ミルクペポッチと申します。

お見知り置きを」


ミルクペポッチと名乗るそいつは、その行動や表情の節々から悪意のようなものが滲み出ている感じがした。

この感覚、そしてそのセリフ。

何かに似ているような気がしていたが、それに舞がハッとした様子で気づく。


「もしかして、アルナの仲間かも?」


「そうか、それだ!」


誰かに使えるという発言も、人を小馬鹿にしたような様子も、アルナにそっくりなのだ。

それに対し、ミルクペポッチも少し驚いた表情を浮かべる。


「ほう、アルナをご存知で?

これはこれは、面白いですねぇ」


悪意が高まり、思わずゴクリと息を飲む。

ティフィアとハルノは、あまりの圧に言葉を発せないようだ。


「俺たちと、やる気か?」


「それも面白そうなんですけどねぇ。

なにしろ、許可が降りていない。

それに、私のやるべき事も終わったので、ここは去らせていただきますよ」


そう言われ、俺はアルナとの一件を思い出す。

確か、アルナも直接は俺たちに攻撃できないようなことを言っていた。

だから、アマルーナをけしかけたのだ。


いずれにせよ、去るというのならば好都合。

ここで戦うわけにはいかないので、ミルクペポッチの名だけ頭に刻み込む。


「あ、そうだ、そちらの名前を聞いても?」


「教えるわけないだろ」


「うふふ、そうですよね。

でも、あなた方の姿は覚えました。

また出会える時を待っていますよ」


その言葉だけを残し、ミルクペポッチは一瞬で姿を消した。

これが、俺たちとミルクペポッチの初のエンカウントだった。


感想ブクマ評価等貰えるとモチベあがるので是非よろしくお願いします!

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