第8話 新たな仲間たち
フィアたちと一緒にグリムフォードの街まで戻ってきた。
街に入る金はどうするんだろうと思っていたが、ちゃっかり馬車の運転手らしき男の財布を回収していたようだ。
普通ならどうかと思う行為だが、彼女たちは奴隷だ。そうするしかないのだろう。
門番へ人数分の通行料を払い、街へ入ったところで聞いてみる。
「この街の奴隷商と言っていたが、どこのだ?」
「えぇっとそれが名前しか知らなくて… 先に言っておくべきでしたね。すみません」
「そうだったか」
参ったな。俺もこの街には来たばかりで詳しくないし、セラたちに聞ければ一番いいが… 彼女たちも恐らく依頼を受けてギルドには居ないだろうし。
仕方ない、一度ギルドへ行って今回の報酬を受け取りがてら、受付嬢にでも聞いてみるか。
「よし、そしたら一旦ギルドへ行って聞いてみよう」
「分かりました」
というわけで一旦ギルドへ行くことに――
――ギルドの脇へ馬車を止めてもらい降りる。
「さて、聞くだけだしフィアだけ来てもらおうか。他の子たちは待っててもらえるか」
「分かりました」
「承知しました」
「はい」
「はーい!」
フィアを連れてギルドの扉を潜り、受付へ行く。
受付嬢はセラとノエルの友達でもあるエレナだった。
こちらに気付くなり驚いたような顔をする。
「あ、カイルさ… ってえぇ!?その顔の傷どうしたんですかっ!?」
エレナの大きな声に周りの冒険者の視線が集まる。
「今日受けたヴェノガルム討伐依頼でやられてね。もう少しで目をやられるところでしたよ、ハハハ」
「笑い事じゃないですよ!その傷跡を見る限り大怪我じゃないですか… まぁ、生きて戻ってきたからよかったですけど…」
「すみません、今後はもっと慎重になります」
心配してくれるとはな。いい人だ。
「それで、そちらの女性は?奴隷のチョーカーが付いてるみたいですが」
「あぁ、ヴェノガルムに襲われているところを助けたんだ。他にも4人、奴隷の女性が外の馬車に居る。バルグラッドの奴隷商からここグリムフォードの奴隷商に移送中だったみたいなんだ」
「なるほど」
「ただこの子は奴隷商の名前しか知らないみたいでさ。俺もこの街に来たばかりで詳しくないし、とりあえずここで聞いてみようかと」
「そういうことでしたら、お力になれるかと思います」
よかった、エレナなら知ってそうだ。
「フィア、その奴隷商の名前は?」
「はい、黒鎖商会と聞いています」
「なるほど、黒鎖商会ですか」
「分かるか?」
「えぇ、もちろん」
よし、これで送り届けられそうだ。
「その黒鎖商会ってどこにあるんだ?」
「えぇっと場所は… そうですね、三日月の宿の近くと言えばわかりやすいでしょうか」
俺が泊まっている宿の近く?
やっぱり今朝見た奴隷商がその黒鎖商会だったんだろうか。
「そうか、分かった。助かったよ、ありがとう」
「お役に立てたようで何よりです」
「あぁ、それとヴェノガルムの討伐報酬をついでに」
「わかりました」
ヴェノガルムの爪を渡し、報酬を受け取る。
金貨3枚か、あのモンスターを倒してこれは少ない気もするが…。
冒険者も大変だ。
「ありがとう。そしたら行こうかフィア」
「はい、受付さんもありがとうございました」
エレナに頭を下げるフィアと共に馬車へ戻る。
「さてみんな、奴隷商の場所が分かったから送ってくよ」
「ふぅよかったぁ」
「ありがとうございます!」
「一安心だー」
俺も一安心だよ、場所が分からなかったらどうしようかと。
フィアが手綱を握り、馬車を動かし始める。
俺は宿からギルドまでの道を思い出しながら、道案内した。
" 奴隷商 "
―黒鎖商会―
今朝は下の文字まで見てなかったが、ちゃんと看板に商会名が書いてあった。
「さぁ、着いたぞ」
「カイルさん、本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
皆律儀にお礼を言う。
「いいさ。それより、ここの店主に説明したほうがいいだろうな。君たちだけでいきなり行っても、納得しないかもしれないし」
「確かにそうですね。バルグラッドの奴隷商の方から話は行っているでしょうが、説明してくださるとスムーズに進むかと」
「店主の名前は分かるか?」
「えぇっと確か… エドガー様だったかと」
エドガーか、覚えやすくていい名前だ。
「わかった。それと奴隷商ってこのままいきなり入ってもいいのか?」
「えぇ、いいと思います。少なくともバルグラッドの方では受付がありましたし」
「よし、それじゃあ入ろう」
「はい(はーい)」
奴隷商の扉を開け中に入る。
中に入ると、広いロビーにフィアが言っていたように受付があった。
受付には、従業員らしき女性が1人立っていた。
「すまない、エドガー氏は居るか」
「商談でしょうか」
後ろの彼女たちを見ながら受付の女性が言う。
売りに来たと思われたのか。
「いや違う。モンスターから彼女たちを助けたんだが、話を聞くとバルグラッドの奴隷商からここの黒鎖商会に移送中だったらしくてな」
「なるほど、そうでしたか。伝えてきますので少々お待ちを」
受付の女性が2階へ上がっていった。
「よかったな。これで一安心だ」
「すべてカイルさんのおかげです。何から何までありがとうございました」
「ありがとうカイルさん」
「ありがとうございました!」
「ありがとー!」
「感謝です」
ほんと、みんな律儀だ。
まぁ、礼を言われて悪い気はしないけど。
そうして話していると、2階から先程の受付の女性ともう1人、髭を生やした目力のある男が下りてきた。
「話は伺わせていただきました、わたくしはこの黒鎖商会の店主をやらせて頂いております、エドガーと申します。この度は、彼女たちを助けていただきありがとうございました」
「俺は冒険者をやっている、名前はカイルだ。残念ながら俺が駆け付けた時にはもう護衛の者たちは… すまない」
「それは残念ですが仕方ありません。こう言うのもあれですが、よくある話ですので。それにカイル様のおかげで彼女たちは助かったのです。気になさらないでください」
見た目とは裏腹に、意外と柔らかい感じの店主だな。
「さて、カイル様には謝礼をご用意させていただきますので、奥の部屋までご一緒に来ていただけますか。あぁそれと君、彼女たちをそれぞれの部屋へ案内してやってくれ」
「かしこまりました。さぁ、皆さんこちらへ。部屋へ案内します」
店主が受付の女性へ指示を出す。
それにしても謝礼か、この男も律儀だな。
「カイルさん、本当にありがとうございました(ありがとうございました!)」
フィアたちがまたお礼を言ってくる。まぁ、彼女たちとはもう会うことはないだろうしな。
「あぁ、元気でな」
「はい!」
「それではこちらの部屋へ。そこで謝礼をお渡しします」
「わかった」
エドガーに案内され、奥の部屋へ向かう。
部屋へ入ると、ギルマスの部屋と同じようにソファが2つ、机を挟んで向かい合うように置かれていた。
その左側のソファへ座り、エドガーが右側へ。
それと同時に、従業員らしき女性がお茶を運んできた。受付の女性とはまた別の女性だ。
俺とエドガーの前へお茶を置き、女性が出ていく。
そこでようやくエドガーが口を開いた。
「では、改めまして。この度は彼女たちを助けていただき、ありがとうございました」
「別にいいさ。たまたま成り行きでそうなっただけだしな」
「それでも私たち奴隷商にとって、商品である彼女たちを失うことは、己の命を失うも同義なのです。その彼女たちを救っていただいたカイル様は、まさに命の恩人というわけですね」
んな大袈裟な… と言いたいがまさにその通りか。
奴隷商は奴隷が居てこそ成り立つものだしな。
「まぁそこまで言うなら素直に感謝を受け取っておくよ」
「はい。それで、謝礼の方ですがもう少しお待ちを。すぐに従業員の者が持ってきますので」
「あぁ、待たせてもらうよ」
コンコンッ
「入りなさい」
待っていると、従業員がトレーに乗せた袋を持って入ってきた。
従業員からその袋を受け取り、中の金額を確認するエドガー。
確認し終わると、その袋をこちらへ渡してくる。
「では、こちらが謝礼の金貨2枚と銀貨5枚になります。ご確認を」
日本円で2万5千ほどか、思わぬ臨時収入としては充分だな。
袋を受け取り、中身を確認する。
「確かに受け取った。助かるよ」
「こちらこそ助かりました」
「それじゃあ俺はこれで」
「お待ちを。カイル様、しばらくお時間をいただけますか?」
帰ろうとしたら、エドガーに止められてしまった。
何か用だろうか。
「あぁ、今日の仕事はもう終わったし大丈夫だが」
「ありがとうございます。それで引き留めた理由ですが、カイル様はお1人で冒険者をやっておられるのでしょうか?それとも誰かとパーティを?」
「いや、1人だが」
「そうですか。冒険者とは、いつ命を落としてもおかしくない職業です。そこでカイル様、奴隷を買ってパーティを組んではいかがでしょうか」
なるほど、俺が1人だと踏んで奴隷を売りつけようと。
「確かにそういう冒険者も居るとは聞くが…。でも俺はこの街に来てまだ日が浅いし、来る途中に財布を落としてしまってな。無一文から冒険者を始めたから、お金もそんなに持ってないんだ。そもそも奴隷っていくらくらいするんだ?」
「そうでしたか、それは大変だったことでしょう。奴隷の値段についてですが、戦闘奴隷なのか生活奴隷なのか、種族は人間か獣人か、などで金額は大きく変わってきますので一概には言えませんが、最低でも金貨15枚ほどから若い美人の生活奴隷などになると金貨100枚以上になることもあります」
金貨100枚、つまり100万以上することもあると。
まぁそれは若い女性の生活奴隷の場合だろうけど。
っていうか生活奴隷ってなんだ?
「そんなにすることもあるのか。それに生活奴隷って何なんだ?」
「生活奴隷とは、主人の身の回りの世話や家の家事などをするための奴隷の事です。中には、主人の夜伽の相手になることを了承している生活奴隷もおります。若い娘で夜伽を了承している生活奴隷ともなれば値は張るようになってしまいますが。それが生娘ともなれば、そこから更に倍の金額になることも」
夜伽の了承をしている生活奴隷か… 俺も男だし魅力を感じないわけではないが…
あくまで俺が欲しいのは、戦力になるやつだ。
「倍の金貨200枚はすごいな。だが、誰しもがそんな大金を出せるわけじゃないだろ?そういった奴隷を買えない者の場合、女の戦闘奴隷とそういう関係になったりすることは無いのか?」
「もちろんないことはありません。戦闘奴隷でも本人が承諾すれば、抱くことも恋人になることも可能ですし、そういったケースも少なからずあります」
「あるのか」
「えぇもちろん。ですが生活奴隷に比べて戦闘奴隷の女性は数が少ないので、そういった例は少ないですが」
やっぱり、戦闘奴隷は男の方が多いんだな。それもそうか。
「生活奴隷に興味がおありですかな?」
「そりゃ俺も男だからな、その言葉に魅力を感じないわけじゃない。ただ先にも言ったように、俺は金をあまり持っていない。生活奴隷を買う金なんて無いさ。それに俺が欲しいのは戦えるやつだ。この顔の傷、フィアたちを助けるときに戦ったヴェノガルムに付けられたんだ。1人だとこの有様だからな」
「なるほど、そうでしたか。傷は治癒されているようですが、ご自分で?」
「いや、フィアが治してくれたんだ」
エドガーが眉をピクッと動かし真剣な顔つきになる。
「ほう、それは治癒魔法ですかな?」
「あぁ、銀髪のショートヘアで、整った顔立ちの子が居ただろ。あの子に治癒魔法で治してもらった」
エドガーが少し考えるそぶりをする。
「その娘をここに呼んで話を聞いても?」
「あぁ、構わないが」
「ありがとうございます。おい、誰かいるか」
ガチャッ
年のいった髭を生やした老紳士という言葉が似合いそうな男が入ってくる。
「はい、御用でしょうか」
「先程、こちらのカイル様と一緒に来た銀髪の髪の短い娘をここに呼んでくれ」
「かしこまりました。すぐに連れてまいります」
従業員の男が出ていく。
「何故フィアを?」
「魔法が使える人間は一般の方でもたまに居ますが、そのほとんどは薪に火をつけたり皿洗い用の水を出したり簡単なものです。強力な攻撃魔法を撃ったり治癒魔法を使えたりするのは基本的に、専門の学校で学んだ魔術師の方のみなのです」
「なるほど、だから魔術師が使うような治癒魔法を使ったフィアを呼んだと」
「はい、そういうことです。奴隷が魔法を使えるとなると、金額は大きく変わってきますから」
なるほどな、そういうことか。
コンコンッ
「エドガー様、連れてまいりました」
「入れ」
ガチャッ
そうこう話していると、老紳士がフィアを連れて戻ってきた。
もう顔を合わせることはないだろうと思っていたが、こうも早く再会するとはな。
「お呼びでしょうか、エドガー様」
「あぁ、カイル様から治癒魔法を使ったと聞いてな。直接聞かせてくれるか」
「分かりました。確かに、私は治癒魔法が使えます。ですが、それだけなのです」
「と、いうと?」
「治癒魔法しか使えないのです」
生粋のヒーラーってか。
「他の攻撃魔法などは使えないのか?」
「はい。少し長くなりますがお話しします」
「構わない、カイル様の横に座りなさい。よろしいですかな?」
「あぁ、俺は構わないよ」
「ありがとうございます。フィアにもお茶を持って来てくれ」
「かしこまりました」
「ありがとうございます」
老紳士が再び出ていく。
「では、話してくれ」
「はい。私の両親は2人とも冒険者で父は剣士、母は魔術師でした。そんな2人の間に産まれたからか、私も物心つくころに魔法が使えることに気が付きました。それを母に伝えると、母は私に魔法の使い方を教えてくれました。ですがそうして教えて貰ううちに、私には攻撃魔法の才能が無いことが分かりました。そして唯一、満足に使えたのがこの治癒魔法の力というわけです」
攻撃魔法は使えないか…
「では、専門の学校で学んだわけではないんだね?」
「はい」
コンコンッ
「入れ」
「失礼します」
ガチャッ
老紳士がお茶を持って戻ってきた。
フィアの前にもお茶が置かれる。
「話してくれてありがとう。遠慮せず飲んでくれ」
「ありがとうございます」
老紳士が出ていき、フィアがカップに入ったお茶を飲む。
「金額が大きく変わると言っていたが、どれくらい変わるんだ?」
本人の前でこの質問は、少しノンデリすぎたか?
だが気になる。
「そうですね、この若さと容姿なら金貨50枚以上は固いでしょう。そこに治癒魔法も加わるとなれば、金貨70、80枚は行くかと。奴隷オークションなら、もっと出す人も居るかもしれません」
奴隷オークションなるものもあるらしい。
しかし、金貨80枚以上か…。俺には手が届きそうにないな。
俺は治癒を使えないから、フィアが居ればと考えたが…。
まぁ、自分のスカスカな懐を嘆いても仕方ない。
「そりゃ凄いな。金持ち以外無理なんじゃないか」
「そうとも限りません。分割で払えるようになっていますから。冒険者の方たちは分割払いが大半ですよ」
「確かにそれなら、組む相手の居ない冒険者でもパーティを組めるか」
「はい、そうしてパーティを組めば稼げるお金も増えますから」
分割か…。
コトッ
フィアがお茶を飲み終わったようだ。
「ではフィア、君は戻りなさい」
「はい、失礼します」
俺とエドガーに頭を下げ、フィアが出ていった。
「まぁ、分割で払えるなら俺にも買えそうだな。話は戻るが、俺に奴隷を勧めてきたよな。だが先に言った通り、俺が欲しいのは戦える戦力になるヤツだ。フィアのように治癒が使えるなら最高だが。この商会には戦闘奴隷は居るのか?」
「もちろん、居りますよ。中には獣人の娘も何人か居りますので、カイル様も気に入るかと」
獣人の娘という言葉に少し反応してしまう。
俺も男だから仕方ないんだけどさ。
獣人か… 猫耳とか居るだろうか。
「残念ながら、治癒を使える者はフィア以外では居りません。魔法が使える者が奴隷というのは、非常に稀なケースですので」
「まぁそうだよな。俺自身、治癒が使えないことを考えると… 魅力的ではある」
「パーティに治癒が使える者が居ると、それだけで生き残れる可能性が上がりますからね」
フィアが加われば、俺が怪我をしても治せるようになる。ただ問題は…
「そういえば、フィアは生活奴隷なのか?それとも戦闘奴隷なのか?」
「彼女はまだ来たばかりですから確認しておりませんね。確認させます。誰かいるか?」
ガチャッ
老紳士が入ってくる。
「はい、居ります」
「今日カイル様と一緒に来た5人に、生活奴隷か戦闘奴隷か確認を取ってくれ」
「承知しました、すぐに確認を取ります」
老紳士が出ていく。
――そして10分ほど経過しただろうか。
コンコンッ
「入れ」
「失礼します」
ガチャッ
老紳士が戻ってきた。
「確認は取れたか?」
「はい、聞いたところ5人とも全員生活奴隷で登録されておりました。一応、バルグラッドの奴隷商からの書類にも目を通しましたが、間違いありませんでした」
「そうか、ご苦労」
「では、失礼します」
5人とも生活奴隷か… となるとフィアをパーティにという選択肢は無くなるか…
「生活奴隷となると買うという選択は無くなるな。さっき言っていた、何人かいるという獣人の娘の戦闘奴隷を見せてもらうことは?」
「もちろん可能です」
「では頼む」
「分かりました。おい、いるか?」
ガチャッ
「はい、居ります」
「ミシェル、アリシア、メルの3人を連れてきてくれ」
「分かりました」
獣人の子たちの名前か。さて、どんな子たちが来るか…。
コンコンッ
「連れてまいりました」
「入れ」
ガチャッ
10分ほど経ち、老紳士が3人の獣人の女の子を連れて戻ってきた。
金髪ロングヘアに灰色髪のショートヘア、そして茶髪のショートヘアの子だ。
3人とも絵に描いたような猫耳だ。そして顔も皆整っていて美人だ。
戦闘奴隷というからてっきり、筋肉ムキムキな獣人が出てくるかと思っていたが。
「こちらがうちに居ります、女性獣人の戦闘奴隷です。金髪の娘がミシェル、灰色髪の娘がメル、茶髪の娘がアリシアです。お前たちも挨拶を」
「ミシェルです!頑張って戦います!よろしくお願いします!」
「メルでーす!お役に立てるよう精一杯、頑張りまーす!」
「アリシアです。足を引っ張らないように頑張りたいと思っています」
「カイルだ、よろしく」
全員、耳がピクピク動いている。
「質問なんだが、それぞれ武器は何を?」
「ミシェルは双剣、メルは片手剣、アリシアは弓となっております」
「ふむ、それぞれ違ってバランスがいいな」
「どの娘を迎えてもお役に立つと思います。1人と言わず、全員迎えるのもよろしいかと」
こいつ、悪魔の目をしていやがる。
「俺がそんな金持ちならよかったんだがな。この子たちはいくらするんだ?」
「3人とも若い娘で年齢も近いので、同じ金貨40枚にさせてもらっております」
1人40枚… 仮に全員迎えるとなると120枚。4人になるとどれくらい稼げるものなのかにもよるが…。
「仮に全員迎えたとして、4人だと毎月いくら稼げるのかにもよるな。1人40枚が安いのか高いのかも分からない」
「そうですね、あまり詳しくは知りませんが、冒険者は1人でも稼ごうと思えば1か月で金貨50、60枚は稼げると聞いたことがあります。こちらの娘たちの金額ですが金貨40枚は平均的、と言ったところです。オークションならもう少し出すお方も居られるでしょうが」
1人でもその気になればそれだけ稼げるのか。ただそれはその気になれば、の話だ。
その気で50、60枚ということを考えれば、普通は1か月で20、30枚が精々といったところか。それを前提に考えるならば、120枚は大したことはないか。
ただそれよりも気になるのは…
「オークションの方が高く売れるなら、なぜそうしないんだ?」
「オークションに参加されるのは、貴族などのお金持ちの方がほとんどです。そしてそういった方たちは、生活奴隷を買うために参加されている場合がほとんどなのです。なので、オークションでは戦闘奴隷の需要はそう高くないのです」
「なるほどな」
だから戦闘奴隷は店頭で売るしかないと。
出来ればここでこの3人を全員売ってしまえ、という思惑もあるんだろうな。
「普段は頭金と利息が付きますが、カイル様にはうちの奴隷たちを助けてもらった恩があります。そこで、頭金なし利息なし、月々金貨10枚の12回払いでいかがでしょうか」
ほんとにここで売ってしまえという感じだな。
だが、頭金も利息もない月々10枚か… 悪くないな。
「分かった、買おう」
欲を言えば、男のメンバーも欲しかったが… 仕方ない。
「お買い上げありがとうございます」
「やったー!ありがとうございまーす!」
「ありがとうございます!」
「よろしくお願いします」
奴隷として買われたのに、お礼を言うのはよく分からないがまぁいいか。
「ではお前たち、荷物をまとめて来なさい」
「分かりました(はい)」
彼女たちが支度をするため、一旦出ていく。
1人から一気に4人パーティになってしまったな。
そういえばギルドにはパーティの登録とか要るんだろうか。
まぁ、後で聞きに行けばいいか。
「では、私たちは契約の方を進めましょう」
「あぁ、わかった」
「契約書を出してくれ」
「こちらに」
エドガーが脇に立って残っていた老紳士にそう言うと、老紳士は1枚の紙を出した。
「こちらが契約書になります。よくお読みになりよろしければ、サインをお願いいたします。その後に血判をお願いします」
「わかった」
血判なのか… 異世界らしいな。
文字がずらずらと色々書いてあるがまぁ、当たり前のことばかりしか書いてない。
一通り読み、サインをする。
「では、血判はこちらの針を」
エドガーが針を渡してくる。
「わかった」
左手の親指の指先を刺し、名前の横に血判を押す。
すると契約書が光り始めた。
「なんだ?」
「カイル様はこういった契約は初めてですかな?」
「あぁ、冒険者登録をする時に同じようなものを見たが」
「冒険者ギルドの使うものは魔晶板ですね。我々商人がよく使うこちらは、魔紙と呼ばれるものです。まぁ機能はギルドと同じようなもので、この契約書がある限りサインした者の居場所なども分かる優れものです」
「なるほど、だからこれだけ簡単な契約でも逃げられないと」
魔道具ってやつはほんとに便利だな。
居場所まで分かるとは。
「フフッ、そういうことです」
コンコンッ
「入れ」
ガチャッ
やり取りしていると、3人が戻ってきた。
「準備してきました!」
「ではカイル様、表までお送りします」
「あぁ」
まずはよろしくということで、彼女たちにも声をかけとくか。
「さぁ行こうか、ミシェル、メル、アリシア」
耳をピクリと同時に動かす3人。
「はい!」
そうして俺は新たな3人の仲間と共に、奴隷商を後にした。




