第7話 奴隷
前日と同じように三日月の宿の主人に桶に入った水とタオルを貰い、《イグニス》 で温め歯を磨き顔を洗い体を拭く。
全て拭き終わったら、鎧と籠手を着け剣を背負い階段を下りる。
「おぉあんたか。今日も仕事かい?」
店主が聞いてくる。
「あぁ、今日も戻るのは夕方くらいになると思う」
「あいよ。精が出るねぇ」
「あぁそれと、宿泊をとりあえず一週間延長したい」
「了解、それじゃあ銀貨7枚ね」
「あぁ」
銀貨7枚を店主に渡す。
「そんじゃ、行ってくる」
「気を付けてな」
三日月の宿を出て、冒険者ギルドへ向かう。
――朝の肌寒い風を浴び、街の風景を見渡しながら向かっていると、ある建物の看板の文字が目にとまった。
" 奴隷商 "
看板にはそう書いてあった。
マジか、こんなところに奴隷商なんてあったんだな。気付かなかった。
俺がやっていたゲーム全てにおいて、そんな要素はなかったはずだが。
しかし、奴隷商か… 確かに異世界ものには定番だけどこの世界にもあるんだな。
人間を売買か… あまり気分はよくないな。
まぁ俺が奴隷を買ったりすることはないだろうし、気にしてもしょうがない。
冒険者ギルドに着き、依頼書が大量に張られたボードの前に行きそれぞれに目を通す。
ブランボアの討伐依頼から中にはB級の依頼まである。
さすがにA級の依頼なんかは無いみたいだな。もっと栄えてる都市の方ならあったりするのか?
話にあった王都ヴァルグラントとか。
いつか行ってみるのもありかもな。
そんなことを考えていると、前日と同じく後ろの方から聞き覚えのある声が。
あぁ、この声はあの2人組だな。
「おーい、カイルくーん!」
セラとノエルだ。
「おはよう、2人とも」
「おっはよー!」
「おはよう」
今日も元気なセラとクールなノエルである。
「昨日のサイクロプスの件はどうだった?」
ノエルが気になるのか少し食い気味に聞いてくる。
「あぁ、なんとか倒したよ」
「ノエルはもっと詳細が聞きたいんじゃないかな~?」
「そう」
説明しないといけないのか…
「そうか。ここだとあれだから、そっちの椅子の方に行こうか」
「はーい!」
「わかった」
ボードの前から移動し、昨日のサイクロプス戦の事を数分かけて話した。
「へぇ、あのガルドさんたちが敵わなかったんだ!」
「敵わなかったというか決定打が打てなかったって感じだな」
「それで結局カイルが加勢して倒したんだ?」
「あぁ、そうだな」
ノエルがなんだか少し考えている。
「うん、なかなか機会が無かったから聞けなかったけど、やっぱり聞かせて。カイル、あなたはなんで魔法が使えるの?」
「あぁ、そういえば確かに!ブランボアの時も使ってたしねー!剣士と言えば、使えない人がほとんどなのに」
またこの魔法の事か… どう説明したものか。
「世の中には、俺みたいに魔法を使える剣士も居るって事だな」
「まぁ中には使える人も居るけど、そのほとんどが火をつけたり水を出したり、その程度のものだよ。カイルみたいにあんな魔法使う人初めて見た」
「確かに!ブランボアの突進をなんか衝撃?みたいなもので逸らしてたし!すごい音と威力だったよねー!」
「えぇ。剣士があんな魔法を、しかもあんな威力のものを使うなんて聞いたことがない。カイル、あなたはなんであんな魔法を使えるの?」
余程気になっていたのか、思ったより踏み込んで聞いてくるノエル。
どうしてもこうしても、体はリバイバルのキャラの物だから使える、なんて言えないしな…。
「まぁ俺は特別って事だな、ハハハ」
笑って誤魔化すの精神。
「答えになってない」
ムスッとした顔で睨んでくるノエル。
「ガルドたちにも言ったんだが、あまりその辺のことは詮索しないでくれるとありがたい」
「そうだよね、冒険者に詮索は禁物、だもんね。ごめんねカイルくん」
そういえばみんな言ってるが、冒険者に詮索は禁物なのか?
「なぁ、この街に来てもう数回その冒険者に詮索はダメってのを聞いてる気がするんだが、なんでだ?」
「あぁそれはね、冒険者として登録するときってああやって簡単に登録できるじゃない?カイル君もやったから分かるよね?」
「あぁ」
確かに、こんなに簡単に登録できていいのかという感じだったな。
「だから、訳ありで稼ぐ手段として登録する元々身分が高かった人なんかも居るって話なんだよねー」
「そう、そしてそういう人たちは詮索されることを嫌う」
「そうして冒険者に詮索は禁物、っていう風潮が広まったわけか」
「そういうこと」
確かにあれだけ簡単に登録できる冒険者は、困ったときの稼ぐ手段として一番に思い浮かぶものだろうしな。
「なるほどなぁ。まぁ理由は分かった」
「お役に立てましたかな?」
ドヤ顔で胸を張るセラ。
「あぁ、お役に立ったよ。ありがとう」
「えらいえらい」
「えっへへ~」
セラの頭をなでるノエル。ほんとに仲のいい2人だ。
そういえば、ティナとシルヴィアが言っていたことを思い出した。
ノエルの俺を見る目が他とは違うとかなんとか。
ほんとにそうだろうか?ノエルは男に対しては特にって言ってたし、2人の勘違いだと思うが…。
好きのソレかは分からないって言ってたし、さっきも魔法のことを食い気味で聞いてきた。
まぁ、ただ単に興味があっただけか。1人で考え、納得する。
「カイル君どうしたの?考えごとー?」
「あぁ、少しな」
「どうせ私かセラのいやらしい姿でも考えてたんでしょ」
「俺がそんな奴だと思うのか」
「男はみんなケダモノ」
「アッハハ~」
やれやれこのエルフは…。
「そういえばカイルは1人でやっていくの?」
「まぁ、しばらくは1人だな」
「えー、いくらカイル君でも1人は何かあったときに危ないよ!」
確かにこの先、1人では危ない場面も出てくるだろうな。
ブランボア相手にもアレだったし…。
「同意。組む相手が居ない冒険者は、奴隷を買ってパーティを組んだりすることも多いから、それも視野に入れるべきだと思う」
「うんうん」
ここで奴隷が出てくるのか。奴隷を買ってパーティを組むか… 抵抗があるな。
「そういえば今朝、ここに来る途中で奴隷商の店を見かけたな。今までは気付かなかったが。冒険者が奴隷とパーティを組むってのは、普通の事なのか」
「そういう冒険者も多いって聞くよー?」
「えぇ、少なからず居るのは確か」
「奴隷って言うと、あまりいいイメージが無いな… 抵抗がある」
ボロボロな服を着て、ろくな食べ物も与えられずに売られているってのが、漫画やアニメではよくある描写だしな。
ほんとにいいイメージがない。
「そうは言っても、結構ちゃんとしてるって話だよー?自分を買った主人へ仕えた時の為に、困らない程度の最低限の読み書きや作法の教育はしているって話だし、身綺麗にして奴隷商でもちゃんと生活してるって聞くよ?」
「うん、奴隷商もそうしたほうが売れるって分かってるし、奴隷ってお金に困った家庭の人とかがその身を売ってお金にする手段って感じだから」
この世界の奴隷はそんな感じなのか?
「そうだったのか。俺のイメージとは違うみたいだ。ちなみに、奴隷っていくらくらいなんだ?」
「うーん、種族や性別にもよるだろうしその辺はわかんないなぁ」
「気になるなら奴隷商に話を聞きに行ってみたら?」
それも視野に入れるべきか…?
今は困ってないし金を稼ぐのが優先だから、追々でいい気もするな。
「まぁ今日の仕事が終わったら行って話を聞いてみるかな。さて、そろそろ依頼を受けないとな。2人も依頼を受けに来たんだろ?」
「あぁそうだった!つい話し込んで忘れちゃってたよ~」
「仕事のことを忘れないで」
「もー!元々はノエルがカイル君を引き留めたんじゃんー!」
「知らない」
「もー!」
奴隷か… まぁまずは依頼だな。
「んじゃ俺はこれで。またな」
「はーい!またねー!」
「じゃあね」
2人に背を向け、ボードの前に戻る。
大量の依頼書たちに目を通していると、見た事のある名前に目が留まった。
" ヴェノガルムの討伐 受注推奨ランク D "
ヴェノガルム… ここにきてモンスターもリバイバル以外のヤツが出てきたな。
ドラレクに出てくるモンスターで、獲物を切り裂く鋭い爪と牙、青黒い肌が特徴的な素早いやつだ。
それがDランク…?Cランク相当でもおかしくないと思うんだが。
っていうか、依頼ってどこまで受けられるんだ?
最初の説明の時、受付嬢はランクによって受けられるものと、受けられないものがあるとしか言ってなかったような。
仕方ない、受付に持って行って聞いてみるか。
ヴェノガルムの依頼書を取って受付へ行く。
「ちょっと聞きたいんだが、このヴェノガルムの討伐依頼って俺でも受けられるか?」
「はい、依頼は1つ上のランクまでなら受けられます。Eランクのカイルさんは、Dランクまでなら大丈夫です」
1つ上のランクまでならオッケーと。これもテンプレ通りだな。
ついでにちょっと気になることを聞いてみる。
「そうか。それとヴェノガルムがDランクになってるが、このモンスターはCランクくらいの危険度じゃないか?」
「冒険者の数が不足しているというのはご存知でしょうか?」
「あぁ、聞いたな」
「モンスターを倒せる冒険者の数が不足しているのに対し、こういった凶悪なモンスターは数が多く、駆除の手が全く追いついていないのが現状です。そこで冒険者ギルドは、比較的危険度の高いモンスター討伐依頼もなるべく低いランクで受けられるようにしております」
それだと、冒険者をなるべく死なせたくないと言っていたギルマスの言葉と矛盾してないか?
「ギルマスは冒険者をなるべく死なせたくないという感じだったが」
「ギルドマスター個人の考えはそうです。そして、そう考えているギルドの関係者も少なくありません。ですが、この制度は冒険者ギルドの上層部が決定していることなので…」
なるほどな。ブランボアの時も新人が受けられることに疑問を抱いたが、ギルドの上層部の連中はそうやって実力不足の冒険者にもモンスターを狩らせようとしている訳か。冒険者ギルドってのは、思ったよりろくなもんじゃないのかもしれない。
「なるほど、納得した。それと、このヴェノガルムの依頼を受けたいと思う」
「承りました。ヴェノガルムはかなり狂暴なので気を付けてくださいね」
受付嬢が依頼書に、受注済みのハンコを押す。
「あぁ、ありがとう」
「行ってらっしゃいませ」
そうして俺は初の1人での仕事、ヴェノガルム討伐へ向かうべくギルドを出た。
――また街のはずれの森へ来た。ここに来るのは何回目だ?まぁ、モンスターも住み着くのは森だろうから仕方ないけど。
さて、いつものように痕跡を探しますか
ヴェノガルムの足跡は猫のように特徴的だからな、すぐ見つかると思いたいが。
オオォォォン!
キャーー!
その時、街道の方から雄叫びと女性の叫び声が聞こえてきた。
雄叫びの方はヴェノガルムのものだ、間違いない。
ということは、ヴェノガルムが街道まで出て通りかかった人を襲ったか。
俺は急いで、声のした方まで走った。
木々の間から、街道が見えてきた。
そこに1台の馬車とそれを襲おうとしているヴェノガルムが居た。
「うおおぉぉ!」
俺は剣を抜き、こちらへ背を向けているヴェノガルムに斬りかかった。
直前でこちらへ振り返り、俺の攻撃を横に飛んで避けるヴェノガルム。
やはり素早いやつだ。後ろからの奇襲にも対応してくる。
馬車の方を見る。
血を流し倒れている運転手らしき中年と、護衛と思われる数人の男たち。
そして荷台に乗る何人かの少女たちの姿。
どうやら遅かったようだ。
だが、まだ荷台に乗っている少女たちは無事だ。
コイツは俺がここで仕留めないとまずい。
ヴェノガルムがこちらへ向かって走ってくる。
鋭い爪で俺を引き裂こうと、腕を振りかざす。
横へ避けてすれ違いざまに、ヴェノガルムの横腹へ一撃斬りつける。
ギャオオォォン!!
斬られた痛みからか、着地をミスりこけるヴェノガルム。
そしてそのまま暴れるように体勢を立て直し、こちらへ再び突っ込んでくる。
この動きはゲームでも見た動きだ。これは相当お怒りだな。
今度はその鋭い牙で噛みつこうと、大きく口を開けて飛び込んでくる。
それを再び横へ避け、横腹へ《インパクト》 を撃ちこむ。
ドオオォォン
《インパクト》 の凄まじい衝撃音と共にヴェノガルムが吹き飛ぶ。
キャオォン
吹き飛んだヴェノガルムが木へぶつかった。
そこへ追い打ちをかけるべく走り込む。
「おらああぁぁ!」
剣を振りかざし、ヴェノガルムの首めがけて振り下ろす。
だがヴェノガルムはそれを身を捻って避けようとする。
そのせいで剣はヤツの首ではなく、前足を斬った。
ザシュッ
手ごたえは十分だが、致命傷ではない。
前足からそれなりに血は出ているが、それだけだ。
足を引きずる様子はない。
だがここで手を止めるわけにはいかない。
オオオォォォン!!
ドラレクで幾度も聞いた咆哮だ。
怒りの咆哮、ここからが本番って事だ。
そしてものすごい勢いでこちらへ向かってくるヴェノガルム。
今度は飛び込んでくるのではなく、低い姿勢のまま走り込んでくる。
そして鋭い爪を横に薙ぎ払うように振ってくる。
それを横へ飛び避けるが爪が鎧に掠った。
すぐに体勢を立て直し、ヤツの方を見る。
「んなっ!?」
ヤツは避けられるのは想定内と言わんばかりに俺が避けた後、そのまま木を蹴りこちらへ飛び込んできていた。ゲームではこんな動き見たことがない。
まずい、避けられない。ヤツの爪がもう顔の目の前まで…
ズシャァッ
顔に凄まじい痛みが走る。
だが目はちゃんと視えている。なんとか目は避けられたようだ。
当たる直前に、身を捻って正解だった。
傷の具合を確かめるべく、顔の傷に指を触れる。
鼻と左目の間に一筋、左目の外側に一筋。斜めに傷が入っており、目は綺麗に避けている。
危なかった。もう少しで失明するところだった。
こりゃ一瞬たりとも気を抜けない。
ヴェノガルムの素早さもゲームの時とは段違いに速い。
素早さでは勝てそうにないな。さて、どうするか…。
そうこう考えているうちに、再びヤツがこちらへ向かってくる。
横へ避けるのはもう通用しないだろう。だとすれば突破口は… 下だッ!
《フロスト》でヤツの動きを鈍らせる。
あくまで敵の動きを鈍らせるだけで、《フロスト》はダメージがほとんどないため、お構いなしに再び口を開け飛び込んでくるヴェノガルム。
だが動きはかなり削げた。これならいけるッ!!
ヤツの攻撃をスライディングで下へ潜るようにして避け、ヤツの腹へ剣を振った。
ズシャアァッ
ヴェノガルムがそのまま転がりながら息絶える。
「ハァハァ… 俺の勝ちだ」
腹からは内臓が出ている。上手くいったようだ。
クソッ、顔が痛むな。
シャキッ
剣を鞘に納め、馬車の方へ歩み寄る。
「終わった。出てきていいぞ」
「きゃあっ!?」
馬車の中を覗き込み声をかけると、悲鳴を上げられた。
あぁ、この顔のせいか。ヴェノガルムめ。
「驚かせてすまない。ヴェノガルムに顔をやられてね」
「い、いえ、こちらこそ失礼しました」
馬車の荷台に乗っていた女性たちが出てくる。
1、2、3… 全部で5人のようだ。
「改めて、助けてくださりありがとうございました」
女性たちの中の1人がお礼を言ってきた。
銀髪のショートで整った顔立ちの美しい子だ。20歳くらいだろうか?
「どういたしまして。君たちだけでも間に合ってよかったよ。それで、君たちは?」
全員、首にチョーカーのようなものが付いている。
「はい、私たちは奴隷です。バルグラッドにある奴隷商からこの先のグリムフォードの奴隷商に移送される途中でした」
バルグラッドか。これもリバイバルに出てくる街の名だ。
今居る大陸はリバイバルのものという俺の予想は、どうやら正しいみたいだ。
「そうだったか。俺はグリムフォードで冒険者をやっている、名前はカイルだ」
「カイルさんですね、私はフィアと申します」
「フィアね、了解。それで?良ければ、グリムフォードまで送っていくけど」
「よろしいのですか?」
よろしいも何も。ついでだし。
「あぁ、俺も帰るところだしな。護衛は任せてくれ」
「助けていただいた上に護衛まで。ありがとうございます」
「別にいいさ。それよりフィア、この荷馬車の馬は操れるか?恥ずかしながら俺は馬に乗ったことが無くてね」
「はい、お任せください。グリムフォードまでしっかり運転します」
「あぁ、頼んだ。じゃあそこで少し皆と待っててくれ」
「はい」
倒れている人たち全員を確かめたが、皆息を引き取っていた。
「ヴェノガルムの討伐の証と、後はこの人たちを埋めてやらないと」
このまま放置するわけにもいかないしな。
「せめてものお礼に埋めるのは私たちでやります」
「私も手伝います!」
「これで何もしないのは罰が当たりますからね!」
「うんうん」
「任せてください」
残りの女性たちもそう言っているし、任せてもいいか。
「じゃあ、お願いするよ。って言っても、掘るものはあるのか?」
「はい、そういった道具は荷馬車に乗っています」
「そうか、それじゃあ俺は討伐の証を取ってくるよ」
「待ってください、その顔の傷を治させてください」
「治すって、どうやって?」
「私は治癒魔法が使えますので」
フィアは魔法が使えるようだ。
「そうなのか。じゃあ、お願いしようかな」
「はい、ではまず血を拭きとりますね」
フィアがポケットから布を取り出し、顔に付いた血を拭きとる。
「では、治癒をかけますね」
「頼んだ」
「<ヒーリング>」
顔が心地よい温もりに包まれる。横になっていたら思わず寝てしまいそうになる温かさだ。
でも正直、傷が治っている感覚はない。こういうものか。
「はい、終わりました。私の腕では、完全に傷跡を消すことは出来ませんでした。すみません」
やっぱり魔法に練度は存在するんだな。
「いや、助かった。傷だらけのままギルドに帰らなきゃいけないところだったからな」
「お役に立ててよかったです」
「傷跡は結構残ってるのか?」
「ぱっと見で分かる程度には。申し訳ありません」
「いいって、謝らないでくれ。それじゃあ、俺は討伐の証を取ってくるよ」
「では、私たちも取り掛かりますね」
「あぁ」
彼女たちに背を向け、ヴェノガルムの死体の方へ向かう。
確か討伐の証は、爪だったよな。しっかし、恐ろしく鋭い爪だな。これがもう少しズレて、首なんかに当たっていたらと思うと…。
いや、考えるのはやめよう。俺は勝った。それで充分だ。
剣でヴェノガルムの爪を数本斬り、袋へ入れる。
よし、これで討伐の証はオッケーだな。
彼女たちの方へ戻ると、まだ埋葬しなければならない遺体が残っていたので手伝った。
「ふぅ、これでいいだろ。あとは帰るだけだな」
「すみません、結局手伝ってもらっちゃって」
「別にいいさ。さぁ、グリムフォードへ行こう」
「はい、運転は任せてください」
――こうして奴隷の女性たちと街へ帰るという奇妙な事態になったのだった。




