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第4話 異世界で迎える二度目の朝

窓から差し込む朝日で目が覚める。


「ふあぁ...」


体を起こし、伸びをする。


「うぅ、さむっ」


朝は少し冷えるな

日本で言う秋の朝みたいな感じだ


そういえば、昨日はそのまま寝たから気持ち悪いな

やっぱり異世界の庶民って体を拭くだけとかなんだろうか

風呂って無いんだろうか


あぁ、歯も磨きたい

この宿の主人に聞いてみるか。


シャツとズボンのまま部屋を出て受付まで歩いていく

受付には誰も居ない

呼んだら出てくるか?


「すまない、誰かいるか?」


少し声を張って尋ねると受付裏から店主が出てきた


「あぁ、あんたか。おはようさん、何か用かい?」


相変わらず気さくな感じだ


「聞きたいんだが、歯磨きとか顔を洗いたいんだがこの宿でそういうものを売ってたりしないか?」

「あぁ、もちろんあるよ」


よかった、あった


「セットになるが桶に入れた水と、歯を磨くためのブラシ、あと体を拭くためのタオルの三点セットで銅貨三枚だよ」


銅貨三枚か、安いな


「じゃあ、それをくれ」


袋から銅貨を三枚出して渡す


「あいよ、ちょっと待ってな」


店主が裏に引っ込む

これでとりあえず体も拭けるし歯も磨ける

やっぱり、朝はこの行動からじゃないと始まらないよな


「お待たせさん、これがご注文の品だ」


などと考えていると店主が受付裏から、水の入った桶とタオル、歯ブラシを持って戻ってきた


「助かるよ」

「まいど」


それらを持って部屋へ戻る

部屋へ入ってシャツとズボンを脱ぐ

昨日は戦闘もしたしとにかく拭かないと気持ち悪い

欲を言えば、風呂に入りたいが


タオルを水に濡らし、出来るだけ隅々まで拭いていく


「うぅ、冷たっ」


桶に入ってるのは水だから仕方ないけど

いや、待てよ?

《イグニス》で温められたりしないだろうか?

あれだけの火力が出る魔法だ

少し調整は必要だが、上手くできれば水もお湯に出来るんじゃないか?


やってみる価値はあるな

水の入った桶を机に置き、それにそっと左手を向ける

そして頭の中で、左手から弱い炎が出る《イグニス》をイメージする


体の中心から、左手の指先へ魔力が流れていくのを感じる


ボワッ


次の瞬間、左手からコンロの中火から強火くらいの炎が出た

よし、成功だ。やはりイメージが威力に直結するようだ



――炎を桶に入った水に向け続けること、数分。



水から湯気が上がり始めた

右手の指をつけてみる


うん、温かくなっている

湯加減もちょうどいい感じだ

完璧。


タオルを湯につけ絞り、体を拭いていく

温かいタオルが心地いい

寒いから余計にそう感じるな


体を拭き終わり、ズボンとシャツを着なおす

そういえば、洗濯もしたいところだな

この世界の人たちはどうしてるんだろうか

まぁ、あとで店主にでも聞いてみるか


歯ブラシも意外とちゃんとしてるな


歯を磨き顔を洗い、タオルで顔を拭く

鎧を着て籠手を着け剣を背中に背負う、これで準備は万端だ

お金を手にしたとは言え飯代と宿代で出費もしたしまだまだ稼がなくてはいけない

とりあえず、今日もギルドに行って依頼を受けないとな


そういえば、歯ブラシはともかくこの桶の水とかタオルは主人に返せばいいのか?

聞いとけばよかったな

まぁ、洗濯のことも聞いときたいしついでに持っていくか


受付まで降りていくと、店主がカウンターにいた


「すまない、このタオルと桶は返せばいいのか聞いていなかった」

「あぁ、使い終わったら返してくれ。歯ブラシは持っていてくれて構わんよ」


よかった、あっていたみたいだ


「ん?俺が渡したのは水だったはずだが、お湯が入っていないか?」

「あぁ、それは俺が温めたんだ」

「温めた?どうやって?」

「どうやってって... 魔法で」


店主が驚いた顔をしている

何か変なこと言ったか?


「あんた、見たところ剣士の冒険者かなにかだろ?」

「そうだが?」

「そうだがって... 魔法が使えるのか」

「あぁ、簡単なものしか無理だが」

「そ、そうか...」


この世界は、剣士が魔法を使うのはやっぱりおかしいのか?


「なんでそんなに驚くんだ?」

「あんた知らないのか?剣士って言や、魔法が使えず剣だけで戦うような連中がほとんどだ」


あー... やっぱりそうなのか


「ま、まぁ俺みたいに簡単なものを使う剣士も中には居るって事だよ」

「そうなのか?う~ん、聞いたことないが...」


店主がなにやら考えながらぶつくさ言っている

見せてくれとか言われたら面倒だし、ここは話題を変えよう


「それと聞きたいんだが、街の人たちは服を洗うのはどうしてるんだ?」

「ん?また、変なことを聞くもんだな。冒険者ならパーティの魔法使いに水を出してもらって洗うし、俺たちみたいな一般人は井戸から水を汲んで洗うのが普通だな。常識だろ?」


この世界に来て間もないので知らないんです。


にしても、本職の魔法使いは水も出せるのか

羨ましいな、俺も出せるようになんねーかな

火は使えるから水も使えるようになれればなぁ...


まぁ、無い物ねだりしてもしょうがない

今はとりあえず、金を稼がねば。


「そうか、分かった。助かったよ」

「お、おう?まぁ力になれたならよかったぜ」

「これからギルドに行って仕事だから、戻るのは夕方かそれ以降になると思う」


部屋の鍵を渡しながら言う


「あいよ、気を付けてな」

「あぁ、ありがとう」


そうして宿の扉を潜りギルドへ向かった



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ギルドの扉を潜ると、すでに多くの冒険者たちが集まっていた

依頼書が張られたボードの前で悩む者や、仲間と話す者、色々だ


とりあえず張り出されている依頼に目を通すか

ボードの前に歩いて行き、張られている紙たちを見てみる

どれどれ、他にはどんなモンスターが居るんだろうか

まだ、ブランボアにしか会っていないからな


――「ほら、やっぱり!見覚えのある後ろ姿だ!」


依頼書たちに目を通していると、感覚が鋭くなっているからか、後ろの方で元気のいい聞き覚えのある声が聞こえてきた

そう、この声はセラだ。ということはあの二人組もギルドへ来たようだ


俺は振り返り、声のした方へ目を向け手を上げる


「やっぱりカイル君だ~!おはよ~!」

「おはよう」


朝から元気なセラと朝もクールなノエルである


「よっ、おはようさん。昨日はよく眠れたか?」

「うん!美味しい物を奢ってもらったしバッチリスヤスヤだよ!」

「バッチリスヤスヤってなに」


ノエルのツッコミに、確かに、と心の中で同意する俺。


「やれやれ、セラはいつも元気だな」

「ふふ~ん、これが私の長所なのさっ」


絵に描いたようなドヤ顔をするセラ


「まぁ、この騒がしさが無いと一日が始まった感じがしないし」

「え~、なにそれ~!私は目覚ましか何かかっ」

「違うの?」

「ちが~う!」


あぁ、やっぱりこの二人はこうでなくっちゃな

二人の漫才を見て和む俺。


――バァンッ!


そんな彼女らを見て和んでいると、ギルドの扉が勢いよく開かれた


扉の方を見ると、腕や頬から血を流し、息も絶え絶えな傷だらけの二人の男の冒険者が居た。


「た、大変だッ!み、見たこともない巨大なモンスターに襲われた!」


その言葉に、ギルドのホールに居た冒険者たちがざわつく

見たこともない巨大なモンスターと言われれば無理もないか


すると、一人のガタイの良い冒険者が近寄って行った。


「とりあえず、落ち着いて話せ。ほら、肩を貸してやるからそこの椅子にでも座れ」


そう言うと、男は一人で二人の冒険者に肩を貸し、近くの椅子まで運んだ

なんだか面倒見のいい兄貴肌って感じの人だな、優しい人だ


「それで?見たこともない巨大なモンスターってのは?もう少し具体的に教えてくれるか?」


二人の冒険者を椅子に座らせると、兄貴肌の男が改めて聞く


「そ、その... 俺たちは最近登録したばっかのEランクなんだけど、今日は薬草採取の依頼を受けて森の方まで行ってたんだ。苦戦しながらもなんとか薬草を集めてたんだ。そ、そしたら森の奥の方から大きな足音と共に大きな目が一つだけの巨人が現れて襲ってきたんだ。低い大きな声で雄叫びを上げながら... 俺たちはすぐに逃げ出したんだ。やられて、怪我はしちまったけど幸いなことに、巨体のせいか足はそんなに速くなくて、それで命はなんとか助かったってわけだ」


一つ目の巨人?まさか...

俺は男のその言葉を聞き、思わず歩み寄っていく


「ちょ、どうしたの」

「カイル君?」


まだ確証はないが、予想が正しければ俺が知ってるモンスターだ


「目が一つだけの巨人と言ったな、そいつの肌は青白くなかったか?」

「あ、あぁ。確かに青白かったけど。な、なんだ?あんたあのバケモノを知ってるのか!?」


説明をしていた男が驚いた顔で聞いてくる


「見ない顔だな、あんたはそのバケモノを知ってると?」

「あぁ、俺は昨日この街に来て登録したばかりのEランクだからな。見覚えが無くて当然だろうな」


兄貴肌の冒険者が怪訝な顔で聞いてくる


「そうだったか。それで?あんたはそのバケモノを知ってると?」

「あぁ、俺の予想が正しければ、そいつはサイクロプスだ。まだ完全に断言できるわけじゃないが、特徴が一致してるんでな」


そう、特徴からしてそのモンスターは恐らくサイクロプス。

エタクロに出てくる敵で青白い肌に大きな一つ目、体は6、7メートルほどの巨人だ


「サイクロプス?長いこと冒険者やってるが、そんなモンスターは聞いたこともないぞ」

「そうなのか?まぁ、数が少ない上に普通は人の来ない山奥とかに居るもんだから知らなくても不思議じゃないが」


ベテランが知らないというから、とりあえずそういうことにしておく。


「そうか。それでそのサイクロプスとやらは強いのか?」


サイクロプスは普通に戦う相手ではない。普通は、数人で取り囲んで戦うような相手だ。

ギルドの受注可能ランクで表すなら...


「あぁ、強い。6、7メートルはある巨人でおまけに腕も長い。普通は5、6人で囲んで戦うような相手だ。戦うならCランク以上の冒険者たちが相手をするのが望ましいだろうな」


俺の説明を聞き、周りの冒険者たちがざわつく。


「それほどのモンスターか。いや、知っている奴が居て助かった。感謝する」

「いいさ。俺に出来るのは情報提供くらいだからな」

「っと、名乗り遅れたが、俺はここグリムフォードで長いこと冒険者やってるガルドってんだ、よろしくな。あんたの名前は?」

「俺はカイル。昨日この街に着いて、冒険者登録したばかりの新人だ」


お互い自己紹介をして、ガルドと握手を交わす。

かなりの大男だ、俺よりも大きい

転生したこの体もかなり大きいはずなんだが、やはり冒険者はこれぐらいがっしりしてないとやっていけないということか


「未確認のモンスターが出たという報告を受けて来たんだが」


ガルドと握手をしていると後ろから聞き覚えのない男の声がした

振り向くと、ガルドといい勝負なガタイのいい大男が立っていた


「あぁ、ギルマスか」


ギルマスって言った?マジ?冒険者ギルドのギルマス出てきちゃったよ


「あぁ、未確認のモンスターとなればギルドとしてはいち早く把握しないといけないからな」

「それなんだが、このカイルがその未確認のモンスターを知っててよ。情報を教えてもらってたところなんだ」

「ほう、見ない顔だな」


ギルマスともなれば威圧感がすごい


「昨日登録したばかりの新人だからな」

「その新人が未確認モンスターを知っていると」

「今まで居た環境が、世捨て人みたいな感じだったからな」


詮索はやめてほしい、とりあえず適当に誤魔化す


「とりあえずモンスターの情報はガルドに話したから、詳しいことはガルドに聞いてくれ」


とりあえず、この場はさっさと去りたいが


「待った」


止められてしまった


「カイル、君には私の部屋まで来てもらおう。ガルド、お前もだ」

「やっぱりそう言うと思ったぜ、分かったよ」


はぁ、とため息をついてセラとノエルに手を上げ、行ってくると合図を送る

二人とも苦笑いで送り出してくれた



――そして二階のギルマスの部屋まで来た



部屋に入ると、中央に机とその両脇にソファが置いてあった。


「とりあえず、座ってくれ」


ギルマスに促され、ソファに座る


「先程は失礼したね。改めて自己紹介を、私はここグリムフォードの冒険者ギルドのギルドマスターをやっている、ジークという。覚えておいてくれ」

「俺はカイル。先日この街に着いて、冒険者登録をしたEランクの新人だ」

「さて、早速本題だがそのモンスターについて詳しく話してくれ」


また説明しなきゃいけないのかよ、ガルドさんにお願いできないかな


「ガルドに説明したんだから、そっちから聞けばいいのでは?」

「私はある程度、人が嘘をついているかどうかが分かる人間でね。君の口から聞きたいんだ」


なるほど、俺が適当を言っていないか確認するためか

じゃあ、なんでガルドは連れてこられてるんだ?


「モンスターの名前はサイクロプス。一つ目の巨人で、肌が青白く腕が長い。最低でもCランク以上の冒険者5、6人で戦うのが望ましい相手だ」


ギルマスがガルドの方を見る

ガルドが小さく頷く

なるほど、事実確認のためにガルドも連れてきたわけか


「なるほど、分かった。情報提供に感謝する。これでギルドのモンスターリストも更新できる。急ぎこのモンスターの討伐依頼もギルドから発行しよう。もちろん、緊急扱いでな」

「どれくらい報酬を出してくれるんだ?」


ガルドがギルマスに聞く


「カイルの情報を聞く限り、最低でも金貨15枚は下らんだろうな」

「おぉ、15枚かぁ。こりゃやるしかねぇなぁ!」

「複数人で戦うような相手だ、危険だぞ」

「それでも、未知のモンスターだし報酬もそれだけ出るってんならやらない理由はねぇな」


これがベテラン冒険者か、未知の相手にも恐れてないな

そういえばノエルも言ってたな、冒険者はどんな相手でも恐れないって

そういうスローガン的なものがあるんだろうか


「さてカイル、君はなぜこの未知のモンスターのことを知っていたんだ?」


ガルドがいい感じに話を逸らしてくれてたのに、忘れてなかったか


「世捨て人のような環境にいたって言っただろ、ある人に弟子入りして山奥で修行してたんだよ」

「ほう、弟子入りして山奥で修行か」

「それで師匠に聞いたことがあったってだけだ。あまり詮索はしないでくれ」

「そうだぞギルマス、詮索はご法度だぜ」

「そうだな、すまない」


ガルド、ナイスだ


「それじゃあ、話は終わったし俺は戻るぞ」

「待った、コイツの討伐依頼に同行してくれないか?」

「は?ちょ、ギルマス何言ってんだ?カイルはEランクだぞ?」


本当に何を言ってるんだこのギルマスは


「その通りだな、俺はEランクでサイクロプスは最低でもCランク以上のモンスターだ。なぜ俺に同行しろなんて言うんだ?」

「なに、本当に同行するだけで下がったところで見てるだけでいい。ただ、戦うやつらに戦術やコツを教えてやってほしいんだ」

「師匠から聞いただけって言ったはずだが?」

「それでも、戦い方や弱点なんかは知ってるんだろ?」


あの短い会話から見抜いてたか

このギルマス、やりおる


「まぁ、知ってるには知ってるが」

「報酬は出す、頼まれてはくれないか。戦い方や、弱点を知っているだけで生きて帰れる可能性が飛躍的に上がる。今でさえ数の足らない冒険者を死なせたくないんだ」


確かにギルマスの言うことは最もだ

ギルマスなりに考えてるって事か


「でもそれなら、出発前にでも俺が戦うやつらに教えればいい話じゃないか?」

「相手を知っている者がいればいざという時、対処もできるかもしれないだろ?」

「つまり、保険で俺を同行させていざとなればお前も戦えと」


冒険者を死なせたくないと言いながら、いざとなれば俺には戦えと

この男、何を考えてる?腹の内が読めないやつだ


「まぁ、端的に言えばそういうことだ。我々にとっては相手は未知のモンスターだ。打てる手はなんでも打たなきゃならん」

「おいおいギルマス、本気か?いざとなれば、登録したてのカイルにも戦わせる気か?」


これにはガルドも疑問を抱いたようだ

そりゃそうだよな


「あぁ、本気だ。それに、私の見立てが正しければ君は相当腕が立つ、違うか?」


なるほど、俺の腕がそれなりだと踏んでこの作戦というわけか

ブランボアにも少し苦戦してしまった俺が、少なくともガルドよりは強いとは思えないが


「何故そう思うんだ?」

「君は俗世を離れ、師匠の下で修業をしていたと言った。それに、私には分かる。君から感じるオーラはまさに強者のそれだ」


オーラ?何を言ってるんだこのギルマスは。

魔力のことだろうか

まぁ、このギルマスが俺をここまで引き留める理由は分かった


「強者ねぇ。昨日はブランボア1体にも苦戦した身だが」

「謙遜を。登録したてのEランクがブランボア5体の角を持って帰ってきたと聞いているよ」


さすがギルマスというべきか。ちゃんと把握しているらしい。


「ギリギリ倒したんだ、しかし耳が早いな」

「こう見えても、ギルドマスターだからね」


やはり食えない男だ


「それで、この依頼受けてくれるか?」

「まぁ、ここまで言われちゃ断わらないが」

「助かる。では早速、討伐するパーティだがガルド、お前のパーティでやってもらう」

「端からそのつもりだ。うちなら俺含めて5人だしな、皆腕もいい」


ガルドのパーティは5人パーティなのか

ベテラン冒険者の5人パーティとなれば、心強いな


「期待しているぞ。では、あとでパーティメンバーにこの事を伝えておいてくれ」

「あぁ、分かってるよ。カイル、後でうちのヤツらを紹介するよ」

「わかった」

「それでは、準備が整い次第出発してくれ」

「おう」


こうして、緊急依頼という面倒に巻き込まれた俺であった



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ギルマスの部屋を出てロビーに戻ると、依頼書を見ながら話しているセラとノエルの姿が目に入った

ガルドと一緒に近付くと向こうも気付いたのか、振り向いて近寄ってくる


「やっと戻ってきた~、おかえり~!どんな話をしたの?」


セラが興味津々で聞いてくる


「それが俺も討伐に同行することになってさ」

「えぇ!?言ってたモンスターって強いんでしょ?」

「あぁ」

「そこで、ギルマスは俺のパーティに指名依頼を出してきた」


胸に拳をドンッと当て、誇らしげな表情をするガルド


「あぁなるほど、ガルドさんのパーティなら安心」

「おっ、ノエルもお世辞がうまくなったもんだ」

「お世辞じゃないと思うよ~」

「おっと、そうだったか?ハハハッ」


二人はガルドと知り合いだったのか


「ガルドのこと知ってるのか」

「うん、むしろこの街の冒険者なら知らない人の方が少ないんじゃないかな~」


そんなに有名人なのこの人


「この道十数年のベテランで、面倒見のいいおじさん冒険者ってことで有名」

「うんうん、私たちも冒険者になりたての頃は色々教えてもらったりお世話になったもんだよ~」

「おい、俺はまだお兄さんだぞ」


へぇ、この二人もお世話になってるのか

っていうか、十年以上冒険者やってるってすごいな


「そういえば、ガルドは冒険者ランクはいくつなんだ?」

「十数年とはいえ、残念ながらBランク止まりだ」


充分、凄いと思うが


「残念?なぜだ?」

「冒険者のランクって最上位のA+からEランクまであるっていうのは説明を受けたよね?」

「あぁ、そうだったな」

「一般的に、Bランクまでなら年数をかければ誰でも到達できる範囲って言われてるんだけど、そこから上のAランクからは実力や才能がないと無理だって言われてるんだ~。特に、最上位のA+なんかは国に2、3人居るかどうかの世界だとか」


国に2、3人ってやばいな。この世界の一つの国がどれくらいの人口なのかは知らないが、稀有な存在であることは間違いないだろうな。


「そいつは、凄いな。だからガルドは残念って言ったのか」

「あぁ、そうだ。冒険者の間じゃ、Bランクまでは5、6年で到達できるって言われてるからな。十年以上も冒険者やっててBランクの俺は、才能が無かったって事なんだろうな」

「そんなことないよ!ガルドさんはBランクでも最上位クラスの強さだってみんな一目置いてるんだから!」

「ハハ、ありがとよセラ。もっと頑張らねぇとな!」


こんな兄貴肌の男でも行き詰って落ち込んだりするんだな

しかし5、6年でBランクか。冒険者もなかなか大変みたいだ



――「ちょっとガルド、先に行くって言った割にまだ依頼受けてないの?」



皆で話していると、後ろからガルドを呼ぶ女性の声がした

振り返り見てみると、茶髪のショートの気が強そうな女性に黒髪のロングヘアの大人の女性な雰囲気の人、その後ろに鎧を着たガタイのいい坊主の男と、革鎧の動きやすそうな格好をした、ガルドと坊主ほど筋肉質な感じではないが背が高いブロンドの髪の短い男が立っていた


「おぉ、みんな来たか」

「来たか、じゃないわよ。依頼は?早くしないと報酬のいい依頼取られちゃうじゃない」


気の強そうな人が更にまくしたてる


「いやいや、待て。実はギルマスからの指名依頼があってな」

「へぇ、ギルマスから直々の指名依頼?」


ブロンド髪の男が言う


「実はな」――――



「なるほど、見たことのない一つ目の巨人モンスターか」


一通り説明し終わったガルド

その説明を聞いた坊主の男が考え込む、声が渋いな


「そうだ。それを知ってたのがコイツ、名前はカイルだ。件のモンスターを知っていて、弱点や戦い方などを俺たちに教えてくれることになっている。同行することになっているからみんなよろしくな」

「カイルだ、先日この街に来て登録したばかりの新人だがよろしく」


その言葉を聞いて、気の強そうな女性がグイッっと詰め寄ってくる


「登録したばかりの新人さん~?格好は上等な剣士だけど、そんな危険なモンスター相手に新人を連れて行けなんてギルマスも何を考えてるのやら」

「おいティナ、失礼だぞ。カイルは新人だがギルマスが強者のオーラだって言ったんだ。自分の身くらいは守れるはずだ。そうだろ?カイル」

「あぁ、その辺は安心してくれ」

「ほんとかしら」


この気の強い女性はティナというらしい。

物言いはアレだが、確かに当たり前の意見だ。

気を抜けば命を落としかねない世界だからな


「すまないなカイル、ティナはあれでいて優しいんだ。物言いは少しアレだが、無茶をして命を落とすやつを何人も見てきたからこそなんだ。許してやってくれ」

「気にしてないさ、最もな意見だと思うしな」

「理解があって助かる。そうだ、まだメンバーの紹介をしてなかったな」


個人的にはそれぞれの職業が気になるところだ


「まずはティナ、弓使いの後衛だ。弓の腕はピカイチだぜ。斥候もやったりするな」


さっきの女性は後衛か、性格的に前衛かと思ったが。


「次はシルヴィア、後衛の魔術師だ。魔法の威力が凄いんだぜ」

「よろしくね」

「よろしく」


黒髪ロングの女性は魔術師らしい、確かにそれっぽい


「次が、ロック。うちの盾役だ。ロックの守りはまさに難攻不落ってやつだ」

「守りと敵の注意を引くのは任せときな!」

「頼もしいな」


坊主の男はヘイトを買って味方から自分へ注意をそらす役か。


「そして最後が、ルーク。双剣使いで前衛だ。足の速さと身軽さではうちのパーティ一だな。その速さを活かして敵を翻弄するのが得意だ」

「よろしく~」

「よろしく」


ノリが軽いな


「よし、これで一通り紹介は終わったな。じゃあ、後はサイクロプスとの戦い方なんかを教えてもらうだけだが、これは道中に教えてもらうとしよう」

「わかった」

「それじゃあ、みんな行こうか」

「りょうかーい (おう)」


俺も二人に挨拶をする


「それじゃあ、行ってくる」

「気を付けてね~!」

「行ってらっしゃい」


――こうして俺は、ガルドたち一行と共にサイクロプス討伐へ出発した

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