第3話 初のモンスター討伐
セラちゃんとノエルちゃんに案内されブランボアの生息域の森まで来た
そう、俺が目を覚ました時に居た森だ
「ここがブランボアの居る森だよ~」
魔法を試したり割とこの森に滞在してたがよくブランボアと出くわさなかったな俺
運がよかったな
「初めての討伐だし何かあってもいけないから保険として私たちが側に居てあげる」
「やっぱりノエルは面倒見がいいなぁ」
「う、うるさい」
いやほんとにね、なんだかんだと面倒見がいい人だ
人じゃなくてエルフか
「そりゃ心強いね、でもパーティを組んでないと一緒に依頼は出来ないんじゃなかった?」
「そう、けどもし目の前で何かあったらさすがに助ける。放ってはおかない」
「そうそう、その場合依頼は失敗扱いになっちゃうけど命には代えられないからね~」
パーティを組んでない人が手伝ったとかどうやって分かるんだろうか、と疑問に思ったがその辺も便利な魔道具で分かるんだろうなと、一人で納得した
「それじゃあ、ブランボアの痕跡探しからやるか」
「お手並み拝見」
「わくわく」
ワクワクしながら見られるとやりづらい
まぁ彼女らは居ないものとしてやるか
装備もだが感覚もリバイバルの主人公と同じで普通の人間よりかなり鋭くなっているってのは街の入り口のところで確認したからな
痕跡を探しながら少し歩くと地面に動物っぽい足跡を見つけた
しゃがんでその足跡を観察する
足跡はイノシシのそれと変わらないものだ
「間違いない、ブランボアの足跡だな」
「おぉ、さっそく痕跡発見した?」
後ろからひょこっと顔を出すセラちゃんに驚く
「ビックリした、セラちゃん驚かせないでくれよ」
「アハハ~、ごめんごめん。それとそのちゃん付けはしなくていいよ~、その方が私も嬉しいし」
「あぁ、うん。それならお言葉に甘えて今後は普通に呼ぶよ」
確かにその方が俺としても呼びやすい
「ノエルもいいでしょ~」
「どうせ無理やり頷かせるんだから私もそれでいい」
「いやいやそんな~、私が無理やり頷かせるなんてあるわけ~」
「あんたはいつも強引じゃない」
ノエルの方も呼び捨てでいいみたいだ
さて、それよりも痕跡だ
足跡を見つけた場所から先の方の道を見るとさらに足跡が続いていた
立ち上がりその痕跡を辿りながら歩き始める
痕跡を追っていると途中で足跡が脇に反れていた
これは、獣道ってやつか
すこし草むらの中を歩いていく必要があるみたいだ
「気乗りしないけど行くしかないか」
「どうしたの?この先に何かあるの?」
「この先に痕跡が続いてるんだよ、ちょっと面倒だけどこの草むらの中を進まないといけないみたいだ」
「まぁブランボアらしいといえばらしい」
彼女たちはどうするんだろうか
このまま付いてくるのか?
彼女たちは二人とも足に履いているものは二―ソックスだけだがそんな装備で大丈夫なんだろうか
「私たちの心配をしているならお構いなく」
「そうそう、私たちは... よっと」
そういうと、彼女らは木の上に上った
マジか、意外と身体能力高いぞこの二人。
っていうか、ショートパンツのセラはともかくスカートのノエルは下からだと丸見えなんですが
「こうやって私たちは木の上を飛び移って行くから大丈夫」
「君たち意外と身体能力高いな」
「えへへ~、褒められちゃった」
やれやれ、草むらをかき分けて進むのは俺だけか
まぁこれも仕事のうちか、仕方ない
「じゃあ、このまま俺は痕跡を追いながら進むから」
「あいあいさ~」
「了解」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
痕跡を追いながら草むらをかき分けて進むこと数分
木々の間から少し開けた場所が見えてきた
そしてそこに座って休憩するブランボアの姿もあった
「居たな」
草むらを抜け出しブランボアの後ろに立つ
後ろから奇襲してもよかったが、それじゃあ面白くない
それに、この世界のブランボアがどれほどの強さなのかも確かめないと
登録したての冒険者が相手にできるものなのか
「来い」
そう言いながら背中の剣を抜き右手で持ち戦闘態勢をとる
左手はいつでも魔法が使えるように空けておく
剣を抜いた際のキーンといういい音だけがこの緊迫した場面に響く
体高は俺の腰ほど。頭部から伸びる二本の角と、鼻先に生えた一本の角がこちらを向く
ゲームで見慣れた姿だ
だが、画面越しに見るのと、こうして目の前に立たれるのとではまるで違う。
ブランボアが前脚で地面を掻いた
次の瞬間、地面を蹴りつけて突進してくる
ブヒイィィ!
鳴き声は豚のそれと変わらないが突進のスピードがモンスターのそれだ
「結構速いな」
俺は落ち着いて横へ跳んだ
ブランボアの巨体が、先ほどまで俺の立っていた場所を通り過ぎていく
その側面へ剣を振り抜く
刃が毛皮を裂き、赤い血が飛び散った
プギイィアァ!
けたたましい鳴き声を上げるブランボア
「よし、いけるな」
手応えはあった。だが、ブランボアは止まらない
そのまま数メートル先まで走り抜けると、勢いを殺して急旋回した
...ん?
ゲームでは、こんな動きはしなかったはずだ
こんな急旋回して二回目の突進は見たことが無い
今は考えてる場合じゃないか
今度は単に避けるのではなく、突進の軌道を見極めて回避する
そう判断して横へ飛び退いた、その瞬間。
ブランボアの巨体が、あり得ないほど鋭く進路を変えた
「マジかよッ...!」
咄嗟に左手を出し《インパクト》を放つ。
ドオォォンッ!《インパクト》の心臓に響くような音が鳴り響く
おかげで突進の軌道は反れたが、肩に衝撃が走った
「ぐっ...!」
俺は吹き飛ばされ何回か地面を転がり、どうにか受け身をとった
素早く立ち上がり、構えなおす
突進を受けた肩は幸いそこまで痛まない、この防具のおかげか
ヤツの角が刺さらなかったのもたぶん、この防具のおかげだ
ブヒブヒッ
ブランボアは、すでにこちらへ向き直っていた
ヤツはまだ余力がありそうだ
ゲームの知識だけで簡単に勝てるほど、甘くはないらしい
そしてゲームにはなかった敵の動き
これは現実だということを改めて実感する
こいつが登録したての冒険者の相手?
そりゃ、冒険者も命を落とすだろうよ
初心者が相手にしていい敵じゃないぞ
「踏ん張りどころだな...」
ザッザッ、ブヒイィィ!
再びブランボアが地面を掻き、突進してくる
そして俺の目の前まで来た瞬間、ジャンプをして突っ込んでくる
その瞬間、不思議と俺の体は勝手に動いていた
ジャンプ突進を体を左に回転させて受け流し、振り向いた時に目の前に来たブランボアの後頭部めがけて剣を振り下ろす
「うおおぉぉッ!!」
勝った、剣を振り下ろす前からそう思っていた
キイィィーン、剣が振り下ろされる音とともに大量の血を吹き出し、ブランボアの頭と体が分離する
「ふぅ、なんとか勝ったな」
「おぉ~!強いねカイル君~!すごいよ~!」
「フン、なかなかの腕前なんじゃない?」
木の上で見ていたセラとノエルが声をかけてくる
ツンなノエルも認めてくれたって事でいいんだろうか
何はともあれこれで依頼は達成だ、そう思った瞬間だった
ガサガサと周りの草むらが動き、そこからブランボアが4頭姿を現した
ブヒイィィッ!ブヒイィッ!
仲間を殺されて怒っている様子だ
「おいおい、マジかよ...」
感覚が鋭くなっているはずなのに勝利の余韻で気付けなかった
「マズい」
「さすがにこれはやばいかも!」
そう言って加勢しようとするセラとノエル
「いや、手を出さないでくれ二人とも」
二人を止めつつ剣を握りなおし、戦闘態勢をとる
「えぇ!?カイル君、本気なの!?」
「さすがにこれだけの数を一人では無理」
確かにノエルの言う通り、一人で相手をするには分が悪い
だが、今の俺は負けるという気がしなかった
「あぁ、本気も本気、大真面目だ」
そう言う俺の口元は笑っていた。
次の瞬間、4頭のブランボアが地面を蹴り一斉に俺をめがけて突進してきた
ブヒイィィィッ!!!
「うおおぉぉっ!!!」
負けじと声を張り上げ剣を振り下ろした
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴトゴトゴトッ
ギルドのカウンターの上に置かれたブランボアの角の数を見てビックリする受付嬢。
まぁそうなるのも無理はないよな
「え、えっと少し前に登録されたばかりのカイルさんですよね?」
「えぇ、そうですけど」
受付嬢が若干引き気味で聞いてくる
どんな反応をすればいいのか困るからその顔やめて。
「そりゃビックリもする、登録したばかりの冒険者がブランボアの角を5頭分も持って帰ってくるんだから。しかも一人で。
ノエルさんや、皆まで言わなくとも俺だって分かってるんです
「あら、ノエルとセラじゃない。この方はあなた達の知り合い?」
「そうだよ~、って言っても今日知り合ったばかりなんだけどね、アハハ」
「エレナ、このブランボア討伐に関しては私たちが側で見ていたから保証する。彼は不正なんかはしていない」
ノエルが俺を庇ってくれてるぞ、最初の頃とはえらい違いだ
しかし、二人はこのエレナという受付嬢と知り合いなのだろうか
「そう、セラとノエルが保証するなら大丈夫ね。自己紹介が遅れました、私は冒険者ギルド、グリムフォード支部の受付嬢をしています、エレナと申します。セラとノエルとはプライベートでも付き合いのある仲です、今後ともよろしくお願いします」
「これはご丁寧にどうも、彼女らには街に入る際助けられました、カイルと言います」
プライベートでも付き合いがあるのか、つまりは友達ってことね
受付嬢と冒険者が友達ってなんかすごいな
「カイル君ってば凄かったんだよ~!後から現れたブランボア4頭を相手に、私たちもさすがに加勢しようと思ったんだけど、手を出さなくていいって。一人でシャキーン、シュバーッて倒しちゃったんだから」
「その効果音はともかく、確かにカイルは強い。私にそう思わせるほどだった」
ノエルが初めて俺の名前を呼んでくれたぞ、ついにデレたか
「ノエルにそこまで言わせるほどの腕前とは...。カイルさんなら最上位ランクも夢ではないかもしれませんね」
「買い被りすぎですよ、戦闘が終わった後至る所が傷だらけだったんですから。ノエルの回復魔法のおかげで綺麗に治りましたけど」
「あら、ノエルが他人に回復魔法を?珍しいこともあるものね」
やっぱりノエルは他人にはあまり魔法をかけたりしないんだな
「う、うるさい。私なりに彼の実力を認めた証と思って」
「ハハ、ありがとさん」
「ノエルがデレた~!」
「あんたねぇ!」
「いひゃいよぉ~」
セラはいつも頬を抓られてるな...
けど、この二人を見てるとなんだか穏やかになれるな
「それではこのブランボア討伐の証はお預かりしますね。報酬を用意してきますので少々お待ちください」
「分かりました」
ふぅ、なんとかこれで今夜の宿代と飯代くらいは稼げたかな
ブランボア5頭がどれくらいになって宿代や飯代がどれくらいするのか知らないけど。
そうだった... まだこの世界の通貨の価値を学ばないといけないんだった
「なぁ、ブランボア5頭っていくらくらいになるんだ?」
「う~ん、1頭で銀貨2~3枚ってところだから金貨1枚くらいかな?」
「うん、そんなところだと思う」
なるほど、ブランボア5頭で金貨1枚くらいか。
...金貨1枚?
「ちょっと待ってくれ。銅貨とか銀貨とか金貨って、それぞれどれくらいの価値があるんだ?」
「そんなことも知らないとかちょっと引く」
だってこの世界に来てまだ一日も経ってないんだぞ?
だから引かないで。
「アハハ、カイル君ってどんな田舎から来たのさ~」
セラが笑いながら言う。
「いやぁ、たまに来る行商人から買うのは師匠がいつもやってたからなぁ」
詳しく説明するわけにもいかないので、適当に誤魔化しておく
「えっとね、銅貨が一番小さなお金で、銀貨は銅貨10枚分。金貨は銀貨10枚分だよ~」
「つまり、銅貨100枚で金貨1枚ってことか」
「そうそう!」
なるほど。銅貨100枚で銀貨10枚、銀貨10枚で金貨1枚
この世界では、金貨1枚が銅貨100枚分の価値を持っているわけか
現代日本の感覚に置き換えるなら、銅貨が100円、銀貨が1000円、金貨が1万円といったところか?
もちろん、あくまで金額をイメージするための目安だ
「通貨の名前とかは無いのか?」
「名前?無いけど。要求されるときは銅貨3枚とかだし」
「カイル君も変なこと聞くね~」
至って普通の疑問では?
まぁそのままの名前で要求されるならシンプルで分かりやすくていい
シンプル イズ ベスト。
「ちなみに、宿に泊まるといくらくらいかかるんだ?」
「安い宿なら一泊で銅貨10枚くらいかな。食事はまた別だけどね~」
「食事代はどれくらいだ?」
「宿に出してもらうなら、銅貨5枚から8枚程度、外食なら店にもよるけどいいとこなら、銀貨2枚から3枚するところもある」
一泊千円程度か、食事は思ったより高いみたいだな
食事代の方が高くつくやつだなこれ
金貨とはいえ、もうちょっと稼がないとダメだな
それに、宿代と食事代だけじゃなく、装備の修理や消耗品の購入にも金が必要になる
「お待たせしました。こちらが今回のブランボア5頭分の討伐報酬になります」
エレナがトレーに通貨を乗せて戻ってきた
「金貨が1枚と銀貨が1枚になります」
「ありがとう」
受け取ろうとしてふと思い出した
金を入れるものが無い。
「えっと、お金を入れるものとかって付けてもらえたりしませんか?」
「えぇ、出来ますが持っていないのですか?」
「ここに来る途中でモンスターとの戦闘で落としてしまって。それで、彼女らにお世話になったというわけで」
「あぁ、そうでしたか。では少々お待ちを、通貨を入れる袋をご用意いたします」
「お手数かけます」
よし、これで財布もゲットだ
あとは...
「そういえばお二人さん、ブランボア狩りに出る前に、あとはご飯と宿に戻るだけって言ってたよね?」
「うん、そうだよぉ~」
「それがどうかした?」
恩には恩を、だ。
彼女らが居なかったら街の外で途方に暮れながら、野宿をする羽目になっていたかもしれない
ちゃんとお礼をしなきゃな。
「よかったら、飯を奢らせてくれないか?」
「えぇ!?いきなりどうしたの?」
セラが驚いてるけど、あんたのおかげで今俺はこうしてお金を手に出来たんだぞ
「どういうつもり?」
ノエルが少し警戒するような眼差しで聞いてくる
その目はやめてほしいな
「いや、君たちにはお世話になったからお礼をしなくちゃなって思っただけだよ」
「そんな気を遣わなくていいのに~、誰でも出来る事だよ」
誰でもあなたみたいには出来ないと思います
「誰でも出来る事じゃないさ、俺みたいな怪しい風体の大男に声をかけて助けるなんてこと」
「まぁ、確かにそれはそう」
ハッキリ言われると俺でも傷付くんですよ、ノエルさん
「それでお礼として、ご飯を奢りたいと」
「そういうこと。これぐらいしか思いつかないしさ。お高い店でもどんと来いだ」
「どうする?」
「う~ん」
セラとノエルが少し考える
「じゃあ、お言葉に甘えて奢られる~!」
少し悩んだ末、元気な返事が返ってきた
よかった、恩は返させてくれるみたいだ
「よしきた。店は君たちの好きなところでいいよ」
「じゃあお高い店で」
「アハハ、ノエルは容赦ないな~」
「ハハ、お手柔らかに...」
そうして三人でギルドの扉を潜り、食事へ向かった
――――――――――――――――――――――――――――――――――
外はすっかり暗くなり始めていた。空はオレンジ色で凄く綺麗だ、まさに異世界。
「さぁ、着いたよ~」
「って、いつもの店じゃん」
「アハハ~、いざどこでもいいって言われると思いつかなくてさ~」
「まぁそれは分かるけど」
彼女たちに案内されたのは、看板に金色の月が描かれた店だった
彼女たちがいつも利用している店のようだ
「いつも利用してるところ?」
「そう!ここは、金月亭っていうんだ~!私とノエルが気に入っていつも利用してるの!」
「粗野な男の冒険者たちが少なくて女性の利用者が多い店で落ち着いてる雰囲気で好きなの」
へぇ、女性の利用者が多い店か
「なんで女性が多いんだ?」
「店のオーナーが豪快な感じの女の人なんだけど、見た目とは裏腹に静かで上品な店にしたいらしくて、過去にはうるさい男たちを何人も追い出したとかなんとかって話だけど」
「そうそう、だから男の人たちはあまり来なくなったとか」
「それ、俺が入っても大丈夫な奴...?」
絶対場違いになるやつじゃん、居心地悪いやつじゃん
「アハハ、大丈夫大丈夫!うるさくしないなら男の人でも何も言われないから!」
「もっとお高い店でもいいんですよ...?」
「私たちは親しんだこの店が一番だから」
さいですか... まぁ、彼女たちへのお礼だしな。従うとしよう
「んじゃあ、いっぱい食べるぞ~」
うるさいこの子は大丈夫なんだろうか、と疑問に思いながら金月亭の扉を潜る俺であった。
「らっしゃい、おや、セラとノエルじゃないか。そちらの人はツレかい?」
「そうなんだ~!門のところで困ってるのを助けてあげたんだ~!」
「私は止めたけど強引にね」
「へぇ、セラらしいっちゃらしいね。まぁ、あまり騒がしくしない客なら歓迎さ。」
確かに見た目や性格は豪快な元冒険者と言われても不思議ではない感じだが、聞いていた通りうるさいのを好まないんだな
「俺はカイルって言います、セラとノエルに助けられたのでお礼にご飯を奢るって事でここに案内されました」
「おや、しっかりした装備の大男なのに随分礼儀正しいね。あたしゃ、リタ。よろしくね」
そりゃ、中身は日本人ですからね
「高い店でもいいって言われたけどやっぱりここが一番」
「そりゃ嬉しいね、ノエルもお世辞がうまくなったもんだ」
「お世辞じゃない、ここは静かでいいから」
「うんうん、そうだよね~!」
なかなかに親しいようだ。それに言っていた通り男性客もチラホラとはいるが女性の方が多い。雰囲気も大人の店って感じで二人が惹かれるのも分かる。
「さぁ、座って注文しな。喋ってても腹は膨れないよ」
「は~い!いっぱい食べるぞ~!」
「お腹ペコペコ」
大丈夫だろうか、俺の財布。
「さて、注文はどうする?」
「じゃあ、私から!川魚の香草焼きと~、月輪のクリームシチュー!あ、飲み物は森苺水で!」
「あいよ、ノエルはどうする?」
「んー、川魚の香草焼きに月雫のポトフ、飲み物は月花茶で」
「了解、カイルはどうする?」
「うーん」
メニューは見ているが初めての店だし何がいいのか分からん
察してくれたのかセラが助け舟を出してくれた
「じゃあ、月麦の丸パンに猪肉と根菜の煮込みとかどうかな!」
「確かにあんたは大きいしよく食べそうだからねぇ、いいんじゃないかい」
猪肉か...確かにいいかもな
「じゃあそれで、あとお酒って何があります?」
「定番は蜂蜜酒だね、ちょっと強くてもいいならうちのオリジナルの月光エールってのもあるよ」
蜂蜜酒か... ド定番だな。味が気になるな、月光エールはちょっと強いみたいだしあとで飲むか
「んじゃ、蜂蜜酒で」
「あいよ」
なんか、シャレた名前の料理名ばかりだったな
まさに異世界料理って感じで。
それも女性に人気な理由の一つだろうか
「セラ、いいチョイス」
「ふふ~ん、でしょ?」
二人は頼んだ料理にワクワクしてるんだろうか
ってか、これでいくらくらいなんだろ
銀貨3枚か4枚くらいで収まってくれればありがたいが
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「さぁ、お待たせ。これで全部だね」
「美味しそ~!ありがとうリタさん!」
「いい匂い」
「これは見ただけで分かる、美味いやつだ」
運ばれてきた料理たちを見て確信した
この店は当たりだ、まぁ他の店がどんなもんか知らないんだけど
また他の店も色々行ってみないとな
「それじゃあ、ごゆっくり」
「いただきま~す!」
それから皆で静かにうまい料理に舌鼓を打ちつつ夕食を楽しんだ
運ばれてきた猪肉の煮込み料理は思ったより量が多くて驚いたがそれでもペロリと平らげてしまううまさだった
猪肉を口に入れそれを蜂蜜酒で流し込む、まさに至福のひと時だった
「いやぁ、料理も美味くていい店だったなぁ」
「えへへ~、でしょでしょ~?」
「あそこの料理はグリムフォード一の美味しさ」
ノエルがそう言うなら他の店はそうでもないんだろうか
いい感じに酒が回って気持ちがいい
異世界の夜風、最高だな。暑くもなく、寒くもないちょうどいい温度だ
「ちょっと酔ってるみたいだけど、それで宿屋まで行けるの?」
「大丈夫大丈夫、ほろ酔いだから」
「宿屋まで送っていこうか~?」
ほんとお人好しだな
「宿屋ってすぐそこなんだろ?名前も特徴的だし」
「三日月の宿だよ」
「そうそう、三日月ね」
食事中、彼女たちにいい宿屋がないか聞いてみたところこの三日月の宿を紹介されたのだ
値段もそこまで高くなく、綺麗だということで
それと金月亭での食事代だが、俺たち三人合わせても銀貨3枚しない値段だった
あれで銀貨3枚しないってすごい
「ほら、ここをまっすぐ行けば三日月の看板が見えてくるから」
ノエルが分かれ道の右の道を指差す
「分かった、今日は本当に色々とありがとう。マジで助かったよ」
「いいのいいの~、また困ったことがあれば助けてあげるよ!」
「ハハ、心強いな。それじゃあ二人とも気を付けて」
「はぁ~い!じゃあね~!」
そうして、彼女たちは来た道を引き返していく
そういえば彼女たちはどこに泊まってるんだろうか
まぁいいか、そこまで聞く必要もないし。
またギルドとかで顔を合わせるだろうしな
振り返り、ノエルが指差していた道を歩き出す
――しばらく歩いていると、言われた通り三日月の看板が見えてきた。
これは分かりやすくて助かるな
ドアを開けて店の中へ入る、鈴が付いておりチリンと音がする
音を聞いて受付の奥から男が出てきた。店の主人だろうか
「いらっしゃい、お一人かい?」
気さくな店主だ
「あぁ、とりあえず三泊、そのあとまた延長すると思う」
とりあえず三泊にしとく、手持ちもそこまであるわけではないしな
「あいよ、では三泊で銀貨3枚だね」
「わかった」
財布という名の袋から銀貨を三枚取り出し渡す
聞いていた通り、一泊銀貨1枚ほどなんだな
「はい、これが部屋の鍵ね。部屋は一番奥の15号室ね」
「わかった、ありがとう」
15号室に向かう
――部屋に入ると、結構綺麗なベッドに椅子と机だけがあった。
確かに安い割には綺麗だな
何はともあれ、宿も確保したしこれで一安心
しばらくは、ここが俺の活動拠点だ
籠手を外し机の上に置き、鎧も脱ぎシャツ一枚とズボンのみになる
そしてそのままベッドへ倒れるように転がる
なかなかに濃い一日だったな、森で目覚めて街へ、そしてモンスター討伐
よく頑張った俺。今はとりあえず寝たい。
そして数分で眠りに落ちていった。




