再会
第83話「再会」をお届けします。
龍王のもとを旅立ち、山を下るアルとエルシア。
そして、ようやく辿り着いた交易都市で、離れ離れになっていた仲間たちと再会します。
果たして、ガレスたちは無事だったのか。
アルたちが知ることになるのは、喜びだけではありませんでした。
今回も楽しんでいただけましたら幸いです。
翌朝。
アルたちは、龍王の祠の前に立っていた。
数日を過ごした場所。
そして、アルが一度は死を覚悟した場所でもある。
「……行かなくちゃ」
アルが呟く。
「うん」
エルシアが頷いた。
その後ろには、巨大な龍王が静かに佇んでいる。
「龍王さま」
アルは振り返った。
「本当に、ありがとう」
「礼などよい」
龍王は淡々と答える。
「おぬしは生き残った。それだけのことだ」
「それだけじゃないよ」
アルは自分の胸へ手を当てる。
龍血によって変化した身体。
以前とは違う魔力の流れ。
そして腰に差した、異界の鍛冶師の太刀。
「命を救ってもらった」
「それに、龍人になった身体も、この太刀も……まだ分からないことばかりだ」
アルは苦笑する。
「だから、これから自分で調べていく」
「それでよい」
龍王は静かに頷いた。
「おぬしは、おぬしの道を進め」
「……はい」
アルは頷く。
そして少し迷ってから、尋ねた。
「また、ここに来てもいい?」
「好きにするがよい」
龍王はそう答えた。
「ここは誰かに閉ざされている場所ではない」
「……ありがとう」
アルは笑った。
短い別れだった。
けれど、アルにとっては忘れることのできない時間だった。
命を救われた。
そして、新たな可能性まで示された。
そのすべてを、これから自分自身の手で確かめていく。
「行こう、エルシア」
「うん」
二人は山を下り始めた。
しばらく歩くと、アルは振り返る。
遠くに見える祠。
アルは小さく頭を下げる。
そして、再び前を向いた。
それから二日ほど歩くと、山道の先に街道が見えてきた。
山道を抜けた先に、街道が見えてきた。
さらに進むと、遠くに城壁が見える。
「もう少しだな」
アルは地図を確認した。
目的地は、山脈の麓にある交易都市。
冒険者や商人が多く集まる場所で、ガレスたちとの合流地点として指定した。
「アル」
隣を歩くエルシアが声をかける。
「疲れてない?」
「大丈夫」
「本当に?」
「うん」
アルは笑った。
龍血によって変化した身体は、以前よりも明らかに丈夫になっているようだった。
それでもエルシアは心配そうにアルを見る。
「……無理はしないでね」
「分かってる」
やがて二人は交易都市へ入った。
久しぶりに聞く、人々の声。
荷車の音。
商人たちの呼び声。
山中とはまるで違う世界のようだった。
「まずは冒険者ギルドへ行こう」
「うん」
二人は街の中を進む。
ギルドへ到着すると、アルは受付へ向かった。
「すみません」
「はい。ご用件は――」
「ガレスという冒険者が来ていると思うんですが」
受付嬢が確認する。
そして、少しだけ表情を変えた。
「あ……はい」
「現在、こちらに滞在されています」
「本当?」
「はい。ただ……」
受付嬢が言葉を濁す。
アルの胸に、嫌な予感が走った。
「何かありましたか?」
「……お怪我をされているようで」
「分かりました」
アルはそれ以上聞かなかった。
会えば分かる。
そう自分に言い聞かせる。
「案内してもらえますか?」
「はい」
受付嬢に案内され、ギルドの奥へ進む。
そして。
「……アル!」
聞き覚えのある声がした。
振り返る。
「ガレス……」
そこに、ガレスが立っていた。
以前より顔色が悪い。
身体には包帯が巻かれている。
そして――
片腕がなかった。
「……生きてたか」
ガレスが笑う。
「そっちこそ」
アルは一瞬、言葉を失った。
胸の奥から、安堵が込み上げてくる。
「……よかった」
それだけしか言えなかった。
「エルシアも無事か」
「うん」
エルシアが頷く。
ガレスは二人を見て、ゆっくり息を吐いた。
「そうか……」
その表情にも、安堵が浮かぶ。
「うん」
「詳しい話は、あとで聞かせてくれ」
「分かった」
アルは周囲を見回す。
「他のみんなは?」
ガレスの表情が僅かに曇った。
「……」
「ガレス?」
「座って話そう」
その言葉に、アルの胸が締め付けられる。
部屋の奥には、負傷した仲間たちがいた。
イザベラ。
フィオナ。
リシェル。
そして、セレス。
「アル!よく無事で」
イザベラが安堵の声を上げた。
「イザベラこそ」
イザベラは安堵したようにアルを抱きしめた。
そしてアルは一人ずつ確認するように顔を見る。
だが。
「……ドノヴァンは?」
沈黙。
「……レオンは?」
「グランとカインは?」
皆の顔に沈痛な表情が浮かぶ。
アルの胸の奥に、冷たいものが落ちた。
再会できた。
それは間違いなく嬉しい。
けれど。
この再会は、すべてが元通りになったわけではなかった。
「……まずは、話そう」
ガレスが静かに言った。
アルは黙って頷いた。
その先に待っている話を、聞く覚悟を決めるように。
第83話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、龍王のもとを旅立ったアルたちが、ようやくガレスたちと再会するお話でした。
無事に再会できたことは嬉しい。
けれど、あの戦いを経て、すべてが元通りというわけではありません。
次回は、ガレスたちが経験した「敗走」の真実が明らかになります。
アルたちが知らなかった戦いの裏側を、ぜひ見届けていただければと思います。
次回もよろしくお願いいたします。




