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転生研究者の異世界魔法論 ――魔法を科学したら最強になった件――  作者: 夜透


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押し寄せる魔物

第71話「押し寄せる魔物」です。

魔人族領を襲った魔物の群れ。

アルたちは、その猛攻を食い止めようと戦います。

しかし、倒しても倒しても押し寄せてくる魔物たち。

果たしてアルたちは、この異常な猛攻を止めることができるのか。

それでは、どうぞお楽しみください。


 最初に飛び込んできたのは、一匹のオークだった。

「来るぞ!」

 ガレスが叫ぶ。

 巨大な斧が振り下ろされる。

 その前に。

 アルが左手を向けた。

 風が弾ける。

 オークの身体が大きく横へ吹き飛んだ。

「次!」

 間髪入れず、別の魔物が飛び込んでくる。

 アルは手を振る。

 地面から土が盛り上がり、魔物の足を絡め取った。

「今だ!」

 ガレスが踏み込む。

 一閃。

 魔物が地面へ倒れた。

「……すごい」

 フィオナが呟く。

 だが。

「次、くるよ!」

 イザベラの声が響く。

 街道の向こう。

 魔物の群れが途切れない。

 一匹。

 二匹。

 十匹。

 その数は、まるで減っていないように見えた。

「多すぎる……!」

 ガレスが歯を食いしばる。

 アルは周囲を見渡した。

 魔物たちは無秩序に襲ってきているわけではない。

 前方の魔物が倒されれば、後ろから別の魔物が押し出されてくる。

 そして。

 そのさらに後方には、黒ローブがいる。

「……やっぱり」

 アルは呟いた。

「魔物を止めるだけじゃ駄目だ」

 黒ローブを見れば、魔物たちの動きが変わる。

 腕を上げれば前進。

 手を横へ振れば、別の方向へ移動する。

 明らかに指示を出している。

「なら、あいつらを狙えば……!」

 イザベラが雷を纏う。

 だが、その瞬間。

 魔物の群れが一斉に前へ出た。

「くっ!」

 イザベラは攻撃を中断し、防御へ切り替える。

 黒ローブへ向かう道を、魔物が完全に塞いでいた。

「簡単には近づけないな」

 ガレスが剣を構え直す。

「それでも奴らをしとめないとこの猛攻は止まらない」

 アルも頷く。

 その時。

 足元を風が撫でた。

 いつもの風とは違う。

 自分の魔力が、周囲の空気へ自然につながっていくような感覚。

(……精霊)

 怯えている。

 それでも。

 離れようとはしない。

「……大丈夫」

 アルが小さく呟く。

「一緒にやろう」

 魔力を集める。

 風を生み出す。

 だが。

 以前とは違った。

 魔力が無理なく流れていく。

 必要な場所へ。

 必要なだけ。

 アルは手を振った。

 風が地面すれすれを走る。

 魔物の足元を正確に薙ぎ払った。

「今だ!」

 ガレスが駆ける。

 倒れた魔物を次々と切り伏せていく。

「アル!」

 エルシアの声。

 右側から大型の魔物が迫っていた。

 アルは振り向く。

 右手の剣で薙ぎ払い、左手に魔力を集めて炎を生み出す。

 しかし、その炎は一直線には飛ばなかった。

 途中で僅かに軌道を変え、大型魔物の側面へ回り込む。

 炎が魔物を包む。

「……!」

 アル自身が驚いた。

 以前なら、ここまで細かく魔法を制御するには集中が必要だった。

 今は。

 まるで魔力の流れそのものが、自然に答えを選んでくれているようだった。

(違う)

 アルはすぐに考え直す。

(俺が選んでる)

 精霊が魔法を使っているわけではない。

 魔力を増やしているわけでもない。

 ただ。

 自分が見落としていたものを、感じ取らせてくれている。

「……これが」

 アルは小さく息を吐く。

「精霊とのつながり……」

 その直後。

 水がアルの周囲に集まった。

 無数の水滴が一つにまとまり、細い槍のような形になる。

 アルはそれを前方へ放った。

 魔物の群れを貫く。

 その動きは無駄がない。

 必要以上に魔力を使わず、狙った場所へ正確に届く。

「アル……」

 セレスが驚いたように呟いた。

 だが。

 感心している暇はなかった。

 地面が大きく揺れる。

「……何?」

 フィオナが振り返る。

 山側から。

 さらに巨大な魔物が姿を現した。

 オークジェネラルだった。

 しかも、一匹ではない。

 二匹。

 三匹。

 その後ろにも、まだいる。

「……嘘だろ」

 ガレスの表情が険しくなる。

 倒しても。

 倒しても。

 新しい魔物が現れる。

 アルは周囲を見渡した。

 街の中にも。

 森の中にも。

 山の斜面にも。

 魔物の姿が見える。

「……増えてる」

 エルシアが呟いた。

「うん」

 アルは頷く。

「俺たちが倒しているより、増える方が速い」

 その言葉に、全員が沈黙した。

 前方では魔人族も応戦し続けている。

 その向こうには魔物が波のように押し寄せてくる。

 さらにその後ろから、黒ローブが魔物を操っている。

 戦線は少しずつ北の海岸線へ押し出されていた。

「このままじゃ……」

 セレスが唇を噛む。

「魔人族が海岸線まで追い込まれる」

 アルは北を見る。

 そこには、逃げる魔人族。

 押し寄せる魔物。

 そして。

 そのすべてを動かしている黒ローブ。

「……止めないと」

 アルは右手を握り締める。

「ここで止める」

 アルは得意の雷魔法で数を減らそうと魔力を練る。

 何本もの雷が魔物の群れに降り注ぐ。

 そのすべてに。

 精霊が寄り添っているようだった。

 アルたちは、魔物の群れを押し返そうとする。

 だが。

 次の瞬間。

 森の方から。

 これまでとは比べものにならないほど巨大な咆哮が響いた。

 グオオオオオオ――――ッ!

 地面が震える。

 魔物たちが一斉に吠え返した。

「……まだいるのか」

 ガレスが呟く。

 アルは北を見つめる。

 その表情から、余裕が消えていく。

 敵は。

 まだ本気を出していない。

 そして。

 アルたちの戦線は、少しずつ。

 確実に。

 北の海岸線へ押し込められていた。


第71話「押し寄せる魔物」を読んでいただき、ありがとうございました。

アルたちは魔物の群れを相手に戦い続けますが、その数は一向に減りません。

精霊とのつながりによって、少しずつ変化し始めたアルの魔法。

しかし、それだけでは押し寄せる魔物の群れを止めることはできないようです。

ここからアルたちは、さらに厳しい状況へ追い込まれていきます。

次回もよろしくお願いいたします。


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