↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生研究者の異世界魔法論 ――魔法を科学したら最強になった件――  作者: 夜透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/123

魔人族領へ

今回から、いよいよ魔人族領編へ入ります。

アルたちが辿り着いた魔人族領で待っていたのは、普段とはあまりにも違う静けさでした。

そして、セレスにとっては故郷であるこの場所で、一体何が起きているのか。

ここから少しずつ、状況が明らかになっていきます。

それでは、「魔人族領へ」をお楽しみください。


 山道を抜けると、景色が大きく変わった。

 それまで続いていた森が途切れ、視界が一気に開ける。

 遠くには巨大な山々が連なっていた。

 その麓から広がる広大な土地。

 そこが魔人族領だった。

「……ここが、魔人族領」

 アルは立ち止まり、遠くの景色を見つめた。

 エルシアも隣に並ぶ。

「思っていたより、広いね」

「うん」

 アルは周囲を見渡した。

 街道は確かにある。

 しかし。

「……静かだな」

 その言葉に、ガレスたちも周囲へ視線を向けた。

 人の姿がない。

 荷馬車も走っていない。

 商人の声も聞こえない。

 そして。

 魔物の気配すらない。

「……魔人族領って、こんなに静かなの?」

 フィオナが不安そうに呟いた。

「違う」

 答えたのはセレスだった。

 彼女は険しい表情で街道の先を見つめている。

「この道は、魔人族領の主要街道の一つなの」

「普段なら、もっと人がいるはず」

 セレスは耳を澄ます。

「……何も聞こえない」

 アルも同じように周囲の気配を探った。

 風が木々を揺らしている。

 それ以外には。

 何もない。

 鳥の声も。

 獣の気配も。

 魔物の気配も。

「……おかしい」

 セレスが呟いた。

「どうした?」

 ガレスが尋ねる。

「門が……」

 セレスが街道の先を指差した。

 そこには魔人族領へ入るための門が見えていた。

 だが。

 門番がいない。

 周囲に警備兵の姿もない。

「……誰もいない?」

 イザベラが眉をひそめる。

「ありえません」

 セレスが即座に答えた。

「ここは主要街道です」

「入領する者を確認するため、必ず門番がいるはずです」

 セレスの顔から血の気が引いていく。

「……何かあったんだ」

 アルが呟く。

「うん」

 セレスは頷いた。

 そして。

「急ごう」

 声が震えていた。

「私の故郷が……」

 アルはセレスを見る。

 エルフの里を出発してからも、彼女が故郷を心配していることは知っていた。

 だからこそ。

「分かった」

 アルは頷いた。

「急ごう」

 一行は歩く速度を上げた。

 街道を進む。

 だが。

 やはり人の姿はない。

 民家が見えても、扉は閉ざされている。

 畑にも人影はない。

 家畜の姿すら見当たらない。

「……避難したのかな」

 エルシアが呟く。

「その可能性はある」

 アルは周囲を観察する。

「でも、それなら何かしら痕跡が残っていてもおかしくない」

「荷物や足跡……何かしら残るはず」

 アルの言葉に、ガレスが頷く。

「確かにな」

 しばらく歩いた。

 すると。

 遠くの山の麓。

 黒いものが空へ伸びているのが見えた。

「……煙?」

 フィオナが呟く。

 細い黒煙だった。

 山の向こうから、ゆっくりと空へ昇っている。

 セレスが立ち止まった。

「……あれ」

 その瞳が大きく見開かれる。

「何か、燃えている……?」

「まだ距離があります」

 アルは煙の方向を見る。

「でも、あそこから上がっているのは間違いない」

 その時だった。

 かすかな音が聞こえた。

 ドン――。

「……今の音?」

 イザベラが振り返る。

 全員が耳を澄ます。

 もう一度。

 ドンッ――。

 今度は先ほどよりもはっきり聞こえた。

 アルの表情が変わる。

「……戦闘音?」

 ガレスが剣へ手を添える。

「その可能性が高い」

 セレスは北を見つめたまま動かない。

「……あの先に、私たちの街があるの!」

 セレスが駆け出した。

「セレス!」

 アルたちも後を追う。

 街道を北へ進む。

 走る。

 その距離が縮まるにつれて。

 黒煙が少しずつ大きくなっていった。

 そして。

 音も増えていく。

 遠くで何かが崩れる音。

 地面を揺らすような衝撃。

 時折、魔物らしき咆哮まで聞こえる。

「……近い」

 エルシアが呟く。

「うん」

 アルは走りながら周囲を確認する。

 それでも。

 道には誰もいない。

 逃げてくる人間もいない。

 魔物もいない。

 まるで。

 すべての生き物が、この場所から消えてしまったかのようだった。

「……逆だ」

 アルが呟く。

「え?」

 フィオナが振り返る。

「魔物が南へ逃げているなら、北へ近づくほど魔物が減るのは分かる」

「でも……」

 アルは北を見る。

「ここまで何もいないのはおかしい」

 精霊の気配も探る。

 風。

 土。

 木々。

 そこにあるはずの自然の気配が、妙に薄い。

 そして。

 精霊たちも怯えている。

「……何かを怖がってる」

 アルが呟いた。

 セレスが振り返る。

「精霊が?」

「うん」

 アルは北を見る。

 黒煙が、先ほどよりも太くなっていた。

 ドンッ――!

 今度は地面まで僅かに震えた。

「……!」

 全員が足を止める。

 その直後。

 山の向こうから、巨大な咆哮が響き渡った。

 グオオオオオオ――――ッ!

 セレスの顔が強張る。

「戦闘……?」

 セレスが呟いた。

「魔人族領への……襲撃……」

 アルは北を見つめた。

 黒煙。

 響き続ける衝撃音。

 そして、遠くから聞こえる無数の咆哮。

 まだ戦場そのものは見えない。

 それでも。

 何が起きているのかだけは、もう分かった。

「……急ごう」

 アルが言う。

「まだ間に合うかもしれない」

 セレスが強く頷いた。

「うん!」

 一行は再び走り出した。

 魔人族領の奥へ。

 近づくほど。

 戦闘音は大きくなっていく。

 黒煙も、空を覆い始めていた。

 そして。

 山の向こうから。

 巨大な何かの影が、一瞬だけ姿を現した。

「……あれは」

 アルが目を細める。

 次の瞬間。

 複数の魔物が、山間からこちらへ向かって駆け下りてきた。

 だが。

 アルたちを襲おうとはしない。

 ただ必死に。

 南へ。

 逃げている。

「……やっぱり」

 アルは呟いた。

「魔物たちは……何かから逃げている」

 その先。

 魔人族領のその奥で。

 戦いが始まっていた。

 そして。

 その戦いは、確実に。

 アルたちのいる場所へ近づいていた。


第69話を読んでいただき、ありがとうございました。

今回から、魔人族領での新たな展開が始まります。

これまでとは少し違った緊張感の中で、アルたちは魔人族領へ足を踏み入れました。

そして、セレスにとっては故郷でもある場所。

ここから何が起きるのか、アルたちは何を目にするのか。

次回から、いよいよ状況が大きく動き始めます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。