↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生研究者の異世界魔法論 ――魔法を科学したら最強になった件――  作者: 夜透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/60

精霊石盗難の真相

第53話を読んでいただき、ありがとうございます。

今回は、エルフの里で起きた精霊石盗難事件について、詳しい話が明らかになります。

そして、アルたちが追ってきた黒ローブや黒魔石との繋がりも、少しずつ見えてきます。

精霊石を巡る事件の先に、アルたちは何を知ることになるのか。

ぜひ続きをお楽しみください。

 エルフの里。

 世界樹の近くに建てられた、一室。

 そこにはアルたち一行と、数名のエルフが集まっていた。

 先ほどまでの穏やかな空気は、もうない。

 セレフィアが静かに口を開く。

「数日前、この里から精霊石が盗まれました」

 アルは黙って彼女の話を聞いていた。

「盗まれたのは、どのくらいの大きさのものですか?」

「手のひらに収まる程度です」

「ただし……」

 セレフィアが言葉を止める。

「非常に重要なものです」

 アルは少し考えた。

「精霊石って、そんなに珍しいものなんですか?」

「ええ」

 セレフィアは頷いた。

「この里では、精霊石は単なる鉱物ではありません」

「精霊と、この世界を繋ぐためのものです」

 アルの目が僅かに細くなる。

「……精霊と、世界を?」

「正確には、精霊が持つ力と、物質世界の魔力を繋ぐものです」

 その言葉に、アルの胸が僅かに高鳴った。

(魔力と精霊を繋ぐ……)

 獣人族の森で拾った欠片。

 鑑定眼に表示された、

 ――精霊石。

 そして。

 ――一部汚染。

 ――魔力反応:異常。

 あの石のことを思い出す。

「その精霊石は、何に使うんですか?」

 アルが尋ねる。

 セレフィアは少し考えてから答えた。

「精霊の力を借りるためです」

「例えば、水の流れを整えたり、森の状態を感じ取ったり」

「精霊との意思疎通を助けることもあります」

「ですが――」

 セレフィアの表情が曇る。

「精霊石そのものに大きな力があるわけではありません」

「精霊と、人の魔力を繋ぐ」

「そのための中継点なのです」

 アルは思わず呟いた。

「……中継器」

「え?」

「あ、いえ」

 アルは首を振った。

 自分の世界の言葉で考えるなら。

 魔石が魔力を蓄えるバッテリーなら。

 精霊石は、その魔力を精霊へ繋ぐための装置。

 そんなイメージが浮かんだ。

「それで……盗まれた精霊石は?」

 ガレスが尋ねる。

 セレフィアは静かに答えた。

「護衛を付けて運んでいました」

「ですが、途中で襲撃を受けました」

 部屋の空気が重くなる。

「護衛は?」

「……命に別状はありませんが皆、重症です」

 アルが顔を上げる。

「全員襲われた?」

「はい」

 セレフィアは頷いた。

「現在は治療を受けています」

 アルは少しだけ安堵した。

「その人達は……何か見ていないんですか?」

「ええ」

 セレフィアは静かに答えた。

「皆、意識が薄れていたため、はっきりとは覚えていません」

「それでも、いくつか証言があります」

 ガレスが腕を組む。

「聞かせてもらえますか?」

 セレフィアは頷いた。

「黒いローブを着た者たちだったそうです」

 アルの表情が変わる。

「……黒ローブ」

 やはり繋がっている。

 獣人族領で追った者たち。

 そして、森に残されていた精霊石。

「何人くらいいたんですか?」

 ドノヴァンが尋ねる。

「そこまでは分かりません」

「護衛は、襲撃の直前に何人かの影を見たそうです」

 セレフィアは一度言葉を止めた。

「そして……」

「何かを見た」

 全員の視線が集まる。

「何を?」

 ガレスが尋ねた。

 セレフィアは答える。

「黒ローブたちは、魔法陣を展開していたそうです」

「魔法陣?」

 イザベラが眉を寄せる。

「その上に……」

 セレフィアがゆっくりと言葉を続ける。

「黒い石と、精霊石を置いていた」

 アルの胸が大きく鳴った。

(黒い石……)

(黒魔石)

 そして。

(精霊石……)

 その黒く染まった部分。

 すべてが繋がっていく。

「その二つを使って、何をしていたのかは?」

 レオンが尋ねる。

 セレフィアは首を横に振った。

「分かりません」

「護衛は、そこで意識を失っています」

「ただ――」

 セレフィアの声が僅かに低くなる。

「その時、里でも異変が起きていました」

「異変?」

 リシェルが尋ねる。

 セレフィアは世界樹の方へ視線を向けた。

「精霊たちです」

「精霊?」

「はい」

 セレフィアは頷く。

「突然、精霊たちが騒ぎ始めました」

「世界樹の周囲に集まり、森の奥へ近づこうとしなかった」

「まるで……」

 セレフィアが言葉を選ぶ。

「何かを恐れているようでした」

 アルは黙って聞いていた。

 黒魔石。

 精霊石。

 魔法陣。

 そして、精霊たちの異変。

(偶然とは思えない)

 研究者として考えれば、何らかの因果関係がある可能性が高い。

 だが。

 まだ情報が足りない。

「セレフィアさん」

「はい」

「その時、精霊たちは何を感じていたんでしょうか?」

 セレフィアは静かに首を振った。

「私にも分かりません」

「ただ……」

「これまで感じたことのないほど、大きな動揺でした」

 アルは拳を握った。

「……そうですか」

 しばらく沈黙が続く。

 その時、リシェルが腰に身につけていた袋へ手を伸ばした。

 そこには、獣人族の森で見つけた精霊石の欠片が入っている。

 中から、小さな石の欠片を取り出す。

「実は……」

 リシェルはそれを机の上へ置いた。

「私たちも、これを見つけています」

 セレフィアの目が見開かれた。

 その場にいたエルフたちも息を呑む。

「これは……」

 セレフィアがゆっくりと近づく。

 そして、震える指で欠片へ触れようとして――。

 止めた。

「……間違いありません」

「精霊石です」

 リシェルは頷く。

「でも、この精霊石は……」

 セレフィアは欠片を見つめた。

 透明感のある表面。

 その一部を覆う、黒い濁り。

 そして、残された亀裂。

「……汚染されている?」

 セレフィアの声が震える。

「はい」

 リシェルが答える。

「獣人族の森で見つけました」

「黒ローブを追っていた時に」

 セレフィアは顔を上げた。

「黒ローブ……」

 ガレスも頷いた。

「俺たちは、そいつらを追っていたんです」

「そして、その途中で黒い魔石も見つけました」

 セレフィアの表情が変わる。

「黒い魔石……」

「はい」

「それは……」

 セレフィアが言葉を失う。

 アルは彼女を見る。

「何か知っているんですか?」

 セレフィアはすぐには答えなかった。

 世界樹の方へ視線を向ける。

 しばらくして。

「……私には、分かりません」

「ですが――」

「この里には、精霊王と呼ばれる存在がいます」

 アルの目が輝く。

「精霊王……?」

 セレフィアは頷いた。

「はい。精霊の頂点に立つ存在です」

「精霊王ならなにか分かるかもしれません」

「そして……汚染された精霊石のことについても」

 セレフィアは欠片を見つめた。

「あなたたちが追っている事件は、この里だけの問題ではないのかもしれません」

 アルは黙って聞いていた。

 黒魔石。

 精霊石。

 黒ローブ。

 そして、不老不死。

 すべてが少しずつ繋がっている。

 だが、まだ核心には届いていない。

 セレフィアは世界樹を見つめていた。

 そして。

「明日、世界樹へ案内します」

「そこでなら――」

 セレフィアはアル達を見る。

 アルは頷いた。

「お願いします」

 エルフの里へ到着したばかりだというのに。

 アルの前には、また新たな未知が広がっていた。

 精霊石。

 黒魔石。

 そして――。

 精霊王。

 研究者としての好奇心が、静かに刺激されていく。

 その一方で。

 世界樹の遥か上空。

 誰にも見えない場所で、一つの淡い光が揺れていた。

 まるで。

 何かを恐れるように。

 ――エルフの里で、事件の核心へ続く扉が開き始めていた。


第53話を読んでいただき、ありがとうございました。

今回は、これまで追ってきた黒ローブや黒魔石と、エルフの里で起きた精霊石盗難事件が繋がる回となりました。

そして、ここからアルにとって新たな未知となる「精霊王」へと話が進んでいきます。

魔法だけではなく、精霊という存在そのものを研究対象としていくアルが、この先何を知っていくのか。

少しでも面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

次回もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。