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転生研究者の異世界魔法論 ――魔法を科学したら最強になった件――  作者: 夜透


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エルフの里の異変

第51話を読んでいただき、ありがとうございます。

今回、アルたちはついにエルフの里へと辿り着きます。

これまでとはまた違った文化、そして未知の存在である精霊。

しかし、里ではすでに何かが起きているようです。

黒魔石と精霊石。

そして黒ローブたち。

それぞれの謎が、少しずつ繋がり始めます。

ここから始まるエルフの里編も、楽しんでいただけましたら嬉しいです。

 獣人族の領域を出発してから、数日。

 アルたちは北へ向かう旅を続けていた。

 道は次第に険しくなっている。

 森の木々は高くなり、空を覆うように枝葉が広がっていた。

 獣人族の領域で見た森とは、どこか違う。

 静かだった。

 風が吹いている。

 鳥の声も聞こえる。

 それなのに、妙に気配が薄い。

「……森が深くなってきたね」

 アルが周囲を見渡す。

「そうね」

 隣を歩くエルシアが頷いた。

「この先から、エルフの領域に入るよ」

「もう近いんですか?」

「うん」

 リシェルが前方を指差す。

「あの山を越えれば、エルフの里が見えてくるはず」

 アルは目を細めた。

 遠くに、木々の間から巨大な山の輪郭が見えている。

 その向こう。

 そこにエルフたちが暮らしている。

「……楽しみです」

 思わず声が漏れた。

 エルフ。

 この世界に生きる種族の一つ。

 そして何より――。

 精霊。

 アルにとっては、未知の存在が待っている。

 だが。

「アル」

 イザベラの声が飛んできた。

「考え込むのはいいけど、前を見て歩きなさい」

「……はい」

 アルは慌てて前を見る。

 イザベラが小さく笑った。

「エルフの里に着いたら、いくらでも調べればいいでしょう?」

「そうですね」

 アルは頷いた。

 すると、少し前を歩いていたレオンが足を止めた。

「……止まれ」

 全員が立ち止まる。

 レオンが森の奥へ視線を向けている。

「何かいるのか?」

 ガレスが低い声で尋ねる。

「いや」

 ガレスはしばらく黙っていた。

「……人の気配だ」

 全員が警戒する。

 しかし、しばらく待っても何も起こらない。

「エルフの見張りかもしれない」

 リシェルが呟く。

「この辺りは、すでに里の警戒区域に入っているはずです」

 その言葉を聞いて、アルは周囲を見回した。

 確かに。

 よく見ると、木の幹に小さな印が刻まれている。

 自然にできた傷ではない。

 誰かが意図的に残したものだ。

「これ……目印ですか?」

「そうだと思う」

 リシェルが頷く。

「エルフたちは森そのものを道標にすることが多いの」

「面白い……」

 アルの目が輝く。

「どういう規則で――」

「到着してからにしなさい」

 イザベラが即座に止めた。

「……はい」

 アルは渋々頷いた。

 その時。

 森の奥から、声が響いた。

「止まれ!」

 鋭い声。

 全員が身構える。

 木々の間から、弓を構えたエルフたちが姿を現した。

 人数は十人ほど。

 全員がこちらへ武器を向けている。

「何者だ!」

 先頭に立つエルフが叫ぶ。

 リシェルが一歩前へ出た。

「私はリシェル。エルフ族です」

「後ろにいるのは獣人族、ドワーフ、人族……」

 エルフの視線が一人ずつへ向けられる。

「どういう集団だ?」

「獣人族領からの調査隊です」

 リシェルが答える。

「フェンリル様の命を受け、エルフの里へ向かっています」

 その言葉を聞いたエルフたちの表情が変わった。

「フェンリル様の……?」

「はい」

 リシェルが頷く。

「確認する」

 エルフの一人が前へ出る。

 リシェルといくつか言葉を交わしたあと、やがて警戒が解かれていった。

「……失礼した」

「現在、里は警戒態勢にある」

「警戒態勢?」

 ガレスが尋ねる。

「ああ」

 エルフは険しい表情を浮かべた。

「少し前に、里で問題が起きた」

 アルはその言葉に反応した。

「何があったんですか?」

「アル」

 イザベラが制する。

 しかし、エルフはアルを見ると、少しだけ表情を和らげた。

「……精霊石が盗まれた」

「!」

 リシェルが息を呑んだ。

「精霊石が……?」

「ああ」

「いつ?」

「数日前だ」

 アルは黙ってリシェルを見る。

 リシェルの顔から、明らかに血の気が引いている。

「それだけではない」

 エルフが続けた。

「精霊石を保管していた場所の警備兵が襲撃された」

「幸い命に別状はない」

「だが、何者が侵入したのか分かっていない」

 アルの脳裏に、あの黒く汚染された精霊石の欠片が浮かんだ。

 黒ローブの集団。

 黒い魔石。

 そして――。

 割れた精霊石。

(……まさか)

 まだ確証はない。

 けれど、偶然とは思えなかった。

 リシェルも同じことを考えているのだろう。

 険しい表情でエルフの言葉を聞いている。

「詳しい話を聞かせてもらえますか?」

 リシェルが尋ねた。

「ああ」

 エルフは頷いた。

「里へ案内する」

 そう言って、先頭のエルフが歩き始める。

 その先。

 木々の間から、巨大な樹木が姿を現した。

 幹は建物よりも太く、枝は空を覆い尽くすほど広がっている。

 その周囲には、木々と一体化するように建物が築かれていた。

「……これが」

 アルは息を呑む。

「エルフの里……」

 その美しい光景の一方で。

 里全体を覆うように、緊張した空気が漂っている。

 そしてアルはまだ知らなかった。

 この里で起きた精霊石盗難事件が――。

 黒い魔石と、あの黒ローブの集団を結びつける新たな手掛かりになることを。

 エルフの里で。

 新たな謎が、アルたちを待っていた。


第51話、最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回、アルたちはついにエルフの里へ到着しました。

これまで旅をしてきた場所とは、また違った雰囲気の里になります。

そして、そこで発覚した精霊石の盗難。

アルたちがこれまで追ってきた黒魔石や黒ローブと、果たしてどのような関係があるのか。

ここから少しずつ、この世界の「精霊」という存在にも触れていくことになります。

次回もよろしくお願いいたします。

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