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転生研究者の異世界魔法論 ――魔法を科学したら最強になった件――  作者: 夜透


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手掛かりを携えて

今回は、黒ローブの追跡を終え、獣人族の里へ戻るお話です。

黒ローブを捕らえることはできませんでしたが、アルたちは新たな手掛かりを持ち帰ることになります。

そして、その手掛かりとなる「精霊石」が、これから向かうエルフの里とどのように関わっているのか。

少しずつ、物語の謎が次の段階へ進んでいきます。

次回から、いよいよエルフの里へ向かう旅が始まります。

今回も楽しんでいただけましたら嬉しいです。

 森には、すでに夕暮れの気配が漂い始めていた。

 黒ローブを追っていた一行は、結局その姿を見つけることができなかった。

 周囲にはいくつもの獣道があり、森の奥へ続く痕跡も残っていた。

 だが、途中から完全に途切れている。

「……これ以上は難しいな」

 ガレスが周囲を見渡しながら呟いた。

「俺もそう思う」

 カインが頷く。

「ここまで探して見つからないなら、すでに別の経路で移動した可能性が高い」

 ドノヴァンが悔しそうに拳を握る。

「もう少しだったんだけどな……」

「仕方ないわ」

 イザベラが静かに言った。

「相手も逃げることを前提に動いていたのでしょうね」

 フィオナも周囲へ視線を向ける。

「それに、あの石……」

 その言葉に、全員の視線が一人へ集まった。

 リシェル。

 彼女の手には、小さな布袋が握られている。

 中に入っているのは、先ほどアルが発見した石の欠片だった。

 割れた精霊石。

 その一部は黒く染まり、異常な魔力反応を示していた。

「……これは、私が持って帰ります」

 リシェルが布袋を握り直す。

「不用意に触れない方がいいと思います」

「分かった」

 ガレスが頷いた。

「カイン」

「ああ」

「一度戻ろう」

 カインもすぐに同意する。

「そうだな」

 カインは森の奥へ一度だけ視線を向けた。

「この件はフェンリル様にもお伝えした方がいいからな」

 誰からも異論は出なかった。

「決まりだな」

 ガレスが言う。

「全員、帰還するぞ」

 九人は来た道を引き返し始めた。

 歩きながらも、誰も口数は多くなかった。

 黒ローブを見失ったことへの悔しさ。

 そして何より、最後に見つかった精霊石の存在。

 それが、今回の事件をこれまでとは違うものに変えていた。

 アルも黙って歩いていた。

 頭の中には、先ほど鑑定眼に表示された文字が残っている。

 ――割れた精霊石。

 ――一部汚染。

 ――魔力反応、異常。

 ――構造、一部損傷。

 そして、その黒く染まった部分。

 アルは無意識に自分の手を見る。

 あの黒さには、以前見た黒い魔石とどこか似たものを感じた。

 だが、同じものなのかは分からない。

 黒い魔石。

 汚染された精霊石。

 黒ローブ。

 そして、フェンリルから聞いた不老不死の話。

 それぞれが別々の出来事なのか。

 それとも――。

 まだ判断できるだけの情報はなかった。

「アル」

 隣を歩いていたイザベラが声を掛ける。

「大丈夫?」

「うん」

 アルは頷いた。

「少し考えてただけ」

「そう」

 イザベラはそれ以上聞かなかった。

 ただ、しばらくアルの隣を歩いていた。

 やがて森を抜ける。

 遠くに獣人族の里が見えてきた。

 夕暮れの光に照らされた家々。

 その向こうには、見慣れた大きな館が見える。

 門の前では、見張りの獣人たちがこちらへ気づいた。

「戻ってきたぞ!」

 声が上がる。

 門番たちが駆け寄ってくる。

「お疲れ様です!」

「黒ローブは?」

 ガレスが首を横に振った。

「逃げられた」

「そうですか……」

 門番の表情が曇る。

 だが、カインが続けた。

「ただし、新しい手掛かりを見つけた」

「新しい手掛かり?」

「ああ」

 カインはリシェルを見る。

 リシェルは小さく頷いた。

「詳しい話は、フェンリル様へ直接報告します」

「承知しました」

 門番はそれ以上尋ねなかった。

 一行はそのまま里へ入る。

 行きに見た穏やかな光景とは違い、今はどこか緊張した空気が漂っていた。

 誰もが、黒ローブの存在を警戒している。

 その中を歩きながら、アルはふと振り返った。

 森の奥。

 黒ローブが消えた方向。

 そこには、夕暮れの森が静かに広がっている。

 何も見えない。

 何も聞こえない。

 それでも。

 あの森のどこかで、何かが動いている。

 そんな感覚だけが残っていた。

「行こう、アル」

 エルシアの声に、アルは前を向いた。

「うん」

 やがて一行は、獣王の館へ向かって歩いていく。

 リシェルが持つ布袋の中には、黒く染まった精霊石の欠片がある。

 それが何を意味するのか。

 黒ローブたちは何をしようとしているのか。

 そして、この欠片がエルフの里とどのように繋がっているのか。

 その答えを求めるために――。

 一行は、獣王フェンリルへの報告へ向かった。


第46話を読んでいただき、ありがとうございました。

今回は黒ローブを追う一行が獣人族の里へ戻るお話でした。

残念ながら黒ローブを捕らえることはできませんでしたが、アルたちは「精霊石」という新たな手掛かりを持ち帰ることになります。

そして、この精霊石について知るため、一行はいよいよエルフの里へ向かうことになります。

精霊と深い関わりを持つエルフたちが、精霊石について何を知っているのか。

ここからまた新たな展開が始まります。

次回も読んでいただけると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします。

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