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転生研究者の異世界魔法論 ――魔法を科学したら最強になった件――  作者: 夜透


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黒く染まった精霊石

今回は、黒ローブを追った先で、アルたちが新たな手掛かりを発見します。

これまで謎だった黒い魔石に加え、今回登場する「精霊石」。

そして、その精霊石に残された異常な痕跡。

少しずつ見えてきたものがある一方で、謎はさらに深まっていきます。

この先、アルたちはこの謎を追って、さらに北へ向かうことになります。

よろしければ、今回も楽しんでいただけると嬉しいです。

 森の中には、重たい静けさが漂っていた。

 先ほどまで黒ローブの姿を追っていた一行は、足を止めて周囲を見回している。

「……見つからないな」

 ガレスが低く呟く。

 木々の間には、いくつもの獣道が伸びている。

 地面には足跡も残っているが、途中から不自然なほど途切れていた。

「魔法で隠れた可能性は?」

 イザベラが周囲を見渡す。

「あり得るな」

 レオンが頷く。

「気配も完全に消えている」

 ドノヴァンも険しい表情を浮かべていた。

 グランたちも周囲へ視線を巡らせる。

「これだけ探して見つからないとなると、すでにかなり離れたかもしれません」

 カインが言った。

「それでも、まだ近くにいる可能性は捨てられない」

 ガレスが答える。

「手分けして周辺を調べよう」

 全員が頷いた。

 再び捜索が始まる。

 アルも一行から少し離れ、木々の間を歩いていた。

 黒ローブの姿は見えない。

 それでも、何かが残されているような気がしてならなかった。

(黒い魔石……)

 以前見つけた異常な魔石が頭をよぎる。

 呪いの石。

 黒ローブ。

 そして今回の追跡。

 すべてが繋がっているように思える。

「……何かないかな」

 アルは足元へ視線を落とした。

 その時だった。

 木の根元。

 土に半ば埋もれるようにして、何かが光を反射した。

「ん?」

 アルは足を止める。

 しゃがみ込み、周囲の土を手で払った。

 現れたのは、小さな石の欠片だった。

 透明感のある表面。

 しかし、その一部だけが黒く濁っている。

 しかも――。

「……割れてる」

 アルは欠片を拾い上げた。

 綺麗な断面が残っている。

 まるで、内部から何かに耐えきれなくなって砕けたようにも見えた。

「アル?」

 少し離れた場所からフィオナの声が聞こえる。

「何か見つけたの?」

「うん。ちょっと変な石が……」

 アルは答えながら、もう一度その欠片を見る。

 そして、無意識に鑑定眼を使った。

 半透明の文字が浮かび上がる。

  名称:割れた精霊石

 状態:一部汚染

 魔力反応:異常

 構造:一部損傷

「……」

 アルは黙った。

 精霊石。

 その名前には聞き覚えがない。

 少なくとも、今まで自分が知っている魔石とは違う。

 魔力反応は異常。

 状態は一部汚染。

 そして構造そのものが損傷している。

(何だ、これ……)

 アルは欠片をじっと見つめた。

 その時。

「――っ!」

 背後から息を呑む声が聞こえた。

 振り返る。

 そこにはリシェルが立っていた。

 彼女はアルの手元を見たまま、動きを止めている。

「……精霊石?」

 小さな声だった。

「リシェル?」

 アルが首を傾げる。

 リシェルは答えない。

 ゆっくりとアルへ近づき、震える手で欠片を見つめる。

「……間違いない」

 その声には、明らかな動揺が混じっていた。

「これは……精霊石」

 アルは目を見開いた。

(やっぱり……精霊石なんだ)

 鑑定眼に表示された名称と一致する。

 だが。

(精霊石って……何なんだ?)

 アルには分からない。

 ただ、リシェルの表情を見れば、それが普通の石ではないことだけは理解できた。

「どうしたの?」

 セレスが近づいてくる。

 リシェルは答えようとした。

 しかし、欠片の黒く染まった部分を見た瞬間、言葉を失う。

「……どうして」

 その呟きだけが森に落ちた。

「何か問題があるのか?」

 カインが尋ねる。

 リシェルはすぐには答えなかった。

 欠片をじっと見つめている。

 やがて、震える声で言った。

「精霊石が……こんな状態になるなんて」

「こんな状態?」

 ガレスが問い返す。

 リシェルは欠片を指先で示した。

「割れているだけじゃない」

「この黒い部分……」

「何かに汚染されている」

 全員の視線が欠片へ集まる。

 アルも改めて観察した。

 黒い魔石とは違う。

 だが、その黒さにはどこか見覚えがあった。

(……似ている)

 以前見た黒い魔石。

 呪いの石。

 そして今、目の前にある精霊石の黒い部分。

 同じものだとは断定できない。

 けれど。

(偶然……なのか?)

 アルの胸に疑問が浮かぶ。

 ガレスも同じことを考えたのか、険しい顔をしていた。

「黒い魔石と……関係があるのか?」

 誰もすぐには答えられなかった。

「分からない」

 リシェルが首を横に振る。

「私にも、何が起きているのか……」

 彼女の声には、いつもの落ち着きがなかった。

 イザベラが腕を組む。

「黒い魔石」

「そして、汚染された精霊石」

「どちらも黒ローブが関わっている可能性がある」

 ドノヴァンが低く唸る。

「奴らは何をしている?」

「魔石だけじゃなく、精霊石にまで何かをしているってことか?」

 レオンも欠片を見る。

「それに、これは割れている」

「何かを試した結果……壊れた可能性もあるな」

 その言葉に、アルは反応した。

(試した……?)

 割れた精霊石。

 異常な魔力反応。

 一部だけの汚染。

 そして黒い魔石。

 もし黒ローブたちが何らかの実験をしているのだとしたら。

 まだ完成していないのかもしれない。

 何度も試している途中なのかもしれない。

「……不老不死」

 アルが小さく呟いた。

 全員がアルを見る。

「フェンリル様が昔話してくれた話」

「不老不死を求めた者たち」

 アルは精霊石を見つめた。

「黒い魔石と精霊石」

「それに黒ローブ」

「全部、何か繋がってるのかもしれない」

 誰も否定しなかった。

 むしろ、その場にいた全員が同じ疑問を抱いていた。

 黒ローブは何者なのか。

 黒い魔石で何をしようとしているのか。

 なぜ精霊石まで汚染しているのか。

 そして――。

 過去に語られた不老不死の話と、今回の事件にはどんな関係があるのか。

 答えは、まだ何一つ分からない。

 ただ一つ確かなことがある。

 この欠片は、黒ローブたちが残した新たな手掛かりだ。

 そしてその謎を解くためには。

 精霊石について知る必要がある。

「……戻ろう」

 カインが静かに言った。

「これ以上ここで考えても、答えは出ない」

「一度、フェンリル様へ報告すべきだ」

 ガレスが頷く。

「ああ」

 全員が同意した。

 アルは最後にもう一度、手の中の欠片を見つめる。

 黒く染まった精霊石。

 その存在は、これまで追ってきた謎をさらに深いものへと変えていた。

(精霊石……)

(いったい、何なんだ?)

 その答えを知る場所がある。

 まだ誰も口にはしていなかったが。

 この時すでに、一行の意識は北方のさらに奥――。

 エルフの里へと向かい始めていた。


45話を読んでいただき、ありがとうございました。

今回は、これまで追ってきた黒ローブと黒い魔石に加えて、新たに「精霊石」という要素が登場しました。

黒い魔石と精霊石。

そして、過去に語られた「不老不死」の話。

それぞれがどのように繋がっているのかは、まだアルたちにも分かりません。

次回からは、いよいよ物語の舞台がエルフの里へと近づいていきます。

精霊石についても、少しずつ明らかになっていく予定です。

ここからまた新しい展開が始まりますので、ぜひ次回も読んでいただけると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします。

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