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転生研究者の異世界魔法論 ――魔法を科学したら最強になった件――  作者: 夜透


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探究者としての生まれ変わり

第二話です。

今回から異世界の概要と主人公の方向性が明確になります。

魔法を“現象”として捉える物語です。

転生することは決まった。

ならば転生先の事をしっかりとリサーチしなければ。

「質問をしてもいいか」

 静寂の中へ声を投げる。

 すぐに返答があった。

『もちろん』

 相変わらず姿は見えない。

 だが確かにそこに存在している。

「あなたは何者だ。さっき創造主であり傍観者と言ってたよな?」

『うん。この世界を作ったのは僕だよ。でも干渉はしない』

「その創造主ってのは肩書か?傍観者っていうのは役職か?」

 一瞬の沈黙。

 そして。

『面白い質問をするね。君が知る言葉の通りだよ』

「研究者でね。そうか言葉の通りの創造主、傍観者ってことか」

『しいて言えば君たちの言葉で表現するなら神に近い存在かな』

「近い、か」

 曖昧な回答。

 だが不誠実さは感じない。

 むしろ分からないものを分からないと答えているようだった。

「じゃあ次」

『いいよ』

 矢継ぎ早に質問する姿勢に、創造主が笑った気配がした。

「あなたは全知全能か?」

 今度は少し長い沈黙が訪れた。

 やがて返ってきた答えは意外なものだった。

『ううん。違うね』

 悠真は目を細める。

「だよな」

『へ~、なんで?』

「全知全能なら俺に興味を持つ必要がない」

『あ~。なるほど!』

「未知があるから観察する」

「知らないものがあるから興味を持つ」

「それは研究者と同じだ」

 再び沈黙。

 今度は長かった。

『やっぱり君は面白いね!』

「よく言われる」

『嘘だァ(笑)』

「ばれたか(笑)……言われたことはないな」

『だよね(笑)』

 思わず苦笑が漏れた。

 神と軽口を叩いている状況がおかしかった。

 だが創造主も気分を害した様子はなかった。

『じゃあ本題に入ろうか』

 白い空間に光が灯る。

 無数の光粒子が集まり、一つの世界を形作った。

 映像。

 いや、それ以上だ。

 実際にその場へ立っているかのような臨場感。

 巨大な森林。

 切り立った山脈。

 広大な平原。

 石造りの街。

 高い城壁。

 中世ヨーロッパを思わせる街並み。

『具体的に見せた方が早いよね。これが君に行ってもらう世界だよ』

 悠真は息を呑んだ。

 知らない世界だった。

 だが同時に奇妙な既視感もあった。

 歴史書や映画で見た中世世界に近い。

『文明水準はさっき言った通り君の世界より遥かに低いんだ』

『蒸気機関もない』

『電気もない』

『内燃機関も存在しない』

「科学は?」

『発展していない』

 悠真の眉がわずかに動く。

「なぜだ?」

『必要がないんだよ』

 その瞬間。

 映像の中で炎が生まれた。

 何もない空間から。

 次いで雷が走る。

 風が渦を巻く。

 大地が盛り上がる。

「……魔法か」

『そう。誰でもって訳じゃないんだけどね』

 胸が高鳴る。

 未知だ。

 完全な未知。

 人類史のどこにも存在しなかった現象。

『この世界には魔力が存在する』

『人々はそれを利用して魔法を扱うんだよ』

『君の世界の電池みたいに魔力を魔石に閉じ込めて使うことも出来る』

『魔道具というものなんだけどこのシステムで誰でも魔法を享受できるんだ』

『だから化学なんてものに頼らなくても生活はできちゃう』

「魔力とは何だ」

『君に分かりやすく言うと…エネルギーだね』

「保存則はあるか」

『あるよ』

「無から有を生み出しているわけではない?」

『うん、違う』

 悠真の思考が加速する。

 ならば法則がある。

 再現性もある。

 観察可能で検証可能だ。

 つまり研究対象になる。

「面白い」

『そう言ってくれると思ってたよ』

「当然だろう」

 未知の学問。

 未知の法則。

 未知のエネルギー体系。

 研究者として興奮しない方がおかしい。

 映像が切り替わる。

 今度は種族だった。

『人族』

 最も見慣れた姿。

『エルフ族』

 長命で美しい種族。

『獣人族』

 獣の特徴を持つ者たち。

『ドワーフ族』

 頑健な肉体を持つ職人種族。

『魔族』

 魔力に優れた種族。

 次々と映し出される。

『各種族の価値観は全然違うんだ』

『歴史も違うしね』

『そして争いも絶えないんだよ……』

 映像には戦場が映った。

 魔法が飛び交い。

 剣がぶつかり合う。

 血が流れる。

 平和な世界ではない。

『さらに魔獣も存在するからね』

 巨大な狼。

 翼を持つ蛇。

 岩のような皮膚を持つ怪物。

 明らかに人類の脅威だった。

「なるほど」

『どう?感想は?』

「正直……恐ろしいな」

 創造主が笑った。

『そうだよね。君の世界ではありえない環境だもんね』

「だが面白そうだ」

『でしょ?そう言うと思ったんだ』

 悠真は少し考える。

 そして言った。

「状況は把握した。こちらの条件だ」

『いいよ。叶えられるものなら聞くよ』

 悠真は迷わない。

「まず身体だ」

 前世。

 病室の天井。

 運動会。

 遠足。

 修学旅行。

 恋愛。

 全てを諦めてきた人生。

「丈夫な身体が欲しい」

『理由は聞くまでもないね』

「ああ」

「前世では身体に人生を奪われた」

「二度目は御免だ」

 創造主は即答した。

『もちろんだよ』

 胸の奥にわずかな熱が灯る。

「ただの健康体ではなく病気への耐性もつけてくれ」

「こんな危険な世界に行くんだ。普通以上を要求したい」

『了解』

 あっさりと了承を取り付けたので拍子抜けしたが、ならばと続ける。

「毒耐性」

『OK』

「麻痺耐性」

『大丈夫』

「精神異常耐性」

『それもOK』

「なんでもありなんだな(笑)。なら全ての状態異常耐性はどうだ?」

『いいよ』

『なんなら普通より長い寿命だって与えてあげられるよ』

『研究には時間が必要だろ?』

 あまりに簡単だった。

 ならば遠慮する理由はない。ダメもとで要求してやる。

「次だ」

『今度は何?』

 研究者は準備を怠らない。

「鑑定能力が欲しい」

『お~そうきたね。理由を聞いてもいい?』

「観察は研究の第一歩だ」

 創造主が楽しそうに笑う。

『なるほどね』

「対象を分析できる能力を要求する」

『分かった。良いよ』

 よし。

 これでデータ収集はできる。

「さらに魔力だ」

「可能な限り多く欲しい」

『どうして?』

「研究には実験が必要だ」

「実験には資源が必要だ」

「魔法を研究するなら大量の魔力がいる」

 数秒の沈黙。

 そして。

『性分だね、分かった』

『君には規格外の魔力量を付与してあげよう』

 内心でガッツポーズを決めた。

 そして最後。

 最も重要な要求。

「魔法について聞きたい」

『なんだい?』

「この世界の人間は魔法をどう使う?

 ゲームや映画みたいに詠唱や魔法陣が必要か?」

『基本的にはそうだね。でもそれ以外の方法もある』

「それ以外の方法?」

『理解だよ』

『その現象がどうして起こるのか』

『何を材料にどうすればその現象が起こるのか』

『それが理解できれば魔法陣だの詠唱だのは必要ない』

 悠真は少し考えて。

「火を理解する」

「熱を理解する」

「電気を理解する」

「重力を理解する」

「現象を理解した上で魔法を使えばいいという事か」

 悠真は真っ直ぐ前を見た。

『正解!さすがだね』

「法則として扱う」

「学問として扱う」

「研究対象として扱う」

 沈黙。

 長い沈黙。

 悠真は悟ったように言った。

『やはり君を選んで正解だったみたいだね』

 その声には感心が混じっていた。

『魔法を科学と解釈するんだね』

「そうだ」

『誰も考えていない発想だよ』

「なら私が最初になればいい」

 白い世界が震えた。

 空間そのものが反応したようだった。

『良いねえ、最高だよ』

 光が集まる。

 世界が輝く。

『神崎悠真君』

『君に権能を付与するよ』

『現象理解』

 その言葉が響く。

『理解した現象ほど魔法の精度が上昇する』

『理解した法則ほど魔力効率が向上する』

『君の事だからきっと直ぐに理解が深まるだろうね』

『この力も君の好きに使えばいいよ』

 悠真の鼓動が跳ねた。

 最高だ。

 これ以上ない。

 まさしく研究者のための能力。

『他にもあるかい?』

 悠真は考える。

 そして首を振った。

「十分だ」

『良いのかい?欲がないね』

「違う」

 悠真は笑った。

「残りは自分で手に入れる」

 創造主は満足そうに言った。

『なるほどね』

『なら楽しみは後にとっておいて(笑)』

『さて、そろそろ転生の時間だ。思い残すことはないかい?』

「そうだな……正直不安もあるが、それ以上に楽しみだ」

『最後に君の転生先だけどね』

「そうだ。転移ではなく転生という事は、向こうで生まれ変わるという事だよな?」

『その通り』

『とある王国の辺境領主の子供という事で転生してもらうよ』

「なら、最後に一つ頼みたい」

『なんだい?』

「この歳の人間が幼児からやり直すのは正直キツイ」

『分かった』

『なら、ある一定の年頃になったら君の記憶その他が蘇るようにしよう』

「助かる」

『君の事だから、この世界の情勢とかそういう事前情報は必要ないね?』

「必要ない」

「しいて言うなら平穏で平和に研究に没頭できたらそれでいい」

 それを聞いて創造主が不敵に笑った気がした。

『何をもって平和で平穏かは人によるよね(笑)』

『こちらの要求を呑んでくれてありがとう。良い人生を』

 光が溢れる。

 世界が遠ざかる。

『新たな世界を知って、その果てに何を見るのか』

『そして何を成すのか、僕は楽しみにしているよ』

 意識が沈んでいく。

 最後に悠真は思った。

 病室はもうない。

 諦める必要もない。

 今度こそ。

 今度こそ。

 好きなように生きてやる。

 その決意と共に、神崎悠真の意識は新たな世界へと落ちていった

読んでいただきありがとうございます。


今回は世界観説明と能力付与回でした。

次回から本格的に異世界での生活が始まります。

引き続きよろしくお願いします。

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