第42話:あたちが、まもるもん! の、ひ!
その日は、やけに胸騒ぎを感じる日だった。
お昼ご飯のあと、ジェノさんに絵本を読んでもらっているときも、なぜか、パパのところに早く行かなきゃいけない、っていう想いが大きくなっていった。
普段、ソラちゃんが想っていることは、パパに会いたい、であって、行かなきゃ、ではない。
――ソラしゃん……おむねが、くるちい。
うん……わたしもだよ。
「ソラ様……」
「あう?」
「体が光ってますけど、何かあったんですか?」
「え?」
自分の手を見ると、腕も手も光り輝いて、その輝きは部屋を照らしだすほどだった。
ソラちゃん、なにか魔法を使おうとした?
――なにもちてないよ?
……行かなきゃって胸騒ぎ……。パパに何かあったのかも!
「ジェノしゃん! パパ、どこ?!」
「え? 今の時間ですと、大広間に」
「つれてって! はやく!」
「――っ! グランゾ様に何かあったのですね!?」
すぐに抱きかかえてくれる。
すぐに察して行動してくれるジェノさんの存在が頼もしい。
「我に風の軽やかさを! ハイクイック! 火の揺らめきは体の深遠に! フィジカルブースト! しっかり掴まっていてください!」
「あい!」
部屋をとんでもないスピードで出て行く。
見慣れた廊下さえも、そのスピードで霞むほどしか視界に捉えられない。
そして……あまりの速さにビックリして、ちょっとちびった……。
あっという間に大広間について、扉を体当たりのようにして開けると、大広間の中央に魔法陣が描かれていて、人族の男が光る剣を振り上げてパパに切りかかろうとしているところが視界に飛び込んできた。
ここからじゃ間に合わない!
「パパァァァ!」
ソラちゃんの叫びで、体を覆っていた光が塊となって飛んでいき、人族の男を軽々と追い越し、パパを包み込んだ。
カキィィィン!
パパを包んだ光は、男の剣を弾き返し、後方に吹き飛ぶ男。
そして、パパを包んでいた光は、パパの中に吸い込まれていった。
「ソラリス……。聖女の加護を俺に与えてくれたのか」
よかった! パパは無事だよ!
――ゆるしゃないから……。
え? あ、怒りの赤い感情が……。
「あ……俺はいったい何を……」
男は片膝を着き、項垂れて……なぜか、戦意喪失して。
「パパをいじめちゃ、だめ!」
「ぐぼあぁ!」
どごぉぉぉん!
ソラちゃんが駆け出したと思ったら、一瞬で男に到達して、そのままの勢いで突き飛ばし、男は壁に衝突した。
――びっくりちた!
わたしもビックリしたよ!
それ以上に、幼女に吹き飛ばされた男のほうがビックリしただろうけどね!
わたしの体全体から、パパの存在が……因子が駆け巡ってる。
これって、怒りで完全に魔王の因子が馴染んじゃったってことだよね。
ああ、これあれだ……身長100センチ到達前に、成長が止まったぁぁぁ!