第43話:おむつなゆうちゃ! の、ひ!
吹き飛ばされた男が壁際でうめいている。
かなりの勢いで壁に叩きつけられていたが、それほど傷をおっている様子がない。
凄いタフな人族だ。
と、男を見ていると、すぐ側の魔法陣から、3人の人族が飛び出してきた。
どうやら、この魔法陣は転移の魔法陣のようだ。
出てきたのは、革の鎧を着た戦士風の男、鉄の鎧に大盾を持った騎士風の男、真っ白い豪華な法衣を着た女。
男2人はまだ若いが、法衣を着た女の人は明らかにお婆ちゃんなんだが……。
「勇者様!」
と、戦士が声を上げる。
あ、勇者だったんだ。光る剣を持ってたし、あれって多分、聖剣だよね? 簡単に弾かれてたけど。
「おのれ、魔王ぉぉ……」
どうしたんだろう? いきなり戦意を喪失したぞ?
お婆さんなんて、座り込んだまま、にこにこしてるし。
まあ、そんなことよりも、勇者だ! こいつのせいで、成長止まっちゃったじゃん!
許せないよね、ソラちゃん!
――あい!
ということで、鼻息荒く勇者の元へ歩いていく。
「ソラ様! 近づいては危ないですよ!」
「ソラリスや。そやつはもう戦えん。放っておいたほうが……」
「ゆるしゃないもん!」
だよね! 成長止まっちゃったんだし!
「パパをきじゅつけようとちたもん!」
だ、だよね! それは許せないよね!
で、勇者の元へきて、座り込んでる勇者の顔を見る。
うん。凄いおじさん。しかもイケメンじゃなくて、おつむが弱そうな顔。
勇者のイメージって、若くてイケメンでモテモテって思ってたんだけど。いや、記憶がほとんど無いから知らんけど。
――いってやってもいい?
ああ! 思いっきり言ってやれ!
「おむつみたいな、かおちて!」
いやいや! おつむな、お、つ、む!
「まだおねちょ、ちてるんでちょ!」
それ、わたしたちのことだよね!
「だから、まだおむつちてるのって、いわれるんだよ!」
アヤネちゃんに言われたけど! あれか? おつむとオムツを間違えたから暴走してるのか?
勇者に向かって叫んでるけど、言葉の剣はわたしたちに刺さってるからね、ソラちゃん!
ちょっと代わって!
――や! まだいうの!
これ以上はわたしの心のライフが0になっちゃうから!
――や!
「あきゃらめふろむもでちょ!」
なんて? 主導権争いで意味不明な言葉になったぞ?
「ぐ! 最後の言葉が1番心に響いたぜ……」
どして!? 響くところなんてっていうか、理解できたの?
まあ、いいや。わたしもこの勇者に言いたい事あるから、ちょっと代わって。
――あい。
左手を腰まですっと持っていって腰に当て、右手でばっと指差して!
と、勇者が手を伸ばしてきて、捲れたスカートを戻してくれた。
「オムツでも丸見えはイカン」
あ、すいません。意外と紳士なんですね。
「えっと……てんい、なんて、ひきょうでちょ!」
「いや、森はな……木が動いて迷路になるわ、怖い精霊が追いかけてくるわで、抜けられなくてですね……」
……トレンティーさぁぁぁん!




