59.5-3話 炎獄 〜 死神:地獄への、道は、善意で、舗装、されて、いる。 〜
また炭の話をしてる……。
ここら一帯地獄にかえてやらぁー!(挨拶) はーくんだよ!
・焚火は原初の炭焼きだった。
・燃え続ける炭『太陽炭』
・燃えない炭『黒曜炭』
そういえば、燃焼中の『太陽炭』は『魔氷』化しても燃えたままなのか? という電波をどこからか受信したよ?
その答えはイエスだね。『魔氷』被り物すると変化は止まるのでそれによって火が消えることはない。
ん? いや、『魔氷』の状態なら火を消さないこともないかな?
それはどうするのか? 簡単だ、『魔氷』化した『太陽炭』の枝葉から燃焼中の部位を取り除けばいい。そうすれば火はたちどころに消えるだろう。
でもさ、なんで消す必要があるのかな? 火をつけるのにすごく手間取ったし、『魔氷』なら熱さも気にしなくていいのに。
と、そういう結論で火は消さないでした。いつでも消せると思うと焦らなくなるんだよね? 『できる』は余裕につながるんだよ。
さて、『黒曜炭』は鋼(鉄と炭素の合金)の原料になると判明ったけど、それだけでは足りない。
その『黒曜炭』の鋼──仮に『黒曜鋼』と名付けよう。その『黒曜鋼』と柄に世界樹の枝でナタやオノ、ナイフにノコに各種農具や工具やら作ったけど、オレ用にひととおり揃えたらまた『黒曜炭』はあまり気味になる。
炭作りの技術練成は慣熟したけど、炭作りはやめたわけではない。だから作り続けるわけだけど、オレの成長よのびしろはとどまることを知らないようでどんどん炭作りが上手くなっていく。
するとどうなる? なにがおこる?
『黒曜炭』は腐っても最高品質。つまりオレの技術に比例するように『黒曜炭』の排出量がふえていった。
オレの特技の一つに『感覚の再現』というものがある、これは体感したことを(大概修練が必要だが)最終的に再現できること、それとコツを掴むと失敗しなくなるというもの……つまり──
──『黒曜炭』という本来はキセキの産物を、産廃扱いできるくらいに量産可能になってしまった。
作れば作るほど侵食するように増える『黒曜炭』の割合、このまま行きつくところまで行ってしまえば出来高すべてが『黒曜炭』になりかねない……!
そんな黒い未来はゼッタイに阻止しなければならない! と、業腹だけど手加減することにした。
オレは手加減は苦手だ、だってそらは妥協や手抜きのようじゃないか。妥協は嫌いだ、手抜きは嫌だ。
でも、できないわけじゃない。それに手加減は手加減であって、妥協や手抜きではない、そのはずだ。そう信じている。
単なることば遊びかもしれないけど、オレは妥協も手抜きもしない!
そう結論したがすぐに切り替えができるものではなく、手加減に失敗して『黒曜炭』の出来高がなぜか増えたり、手加減をしすぎて第三の炭が生まれたけど、そのあたりは割愛する。
何度かやってるうちに手加減のコツがつかめ、『黒曜炭』の生産量に歯止めをかけ、『太陽炭』の量産のコツをつかむことができた!
しかしどうしたことだろうか、手加減をしだしてからさらに炭焼きの腕が上がったように思えるのは? はたしてオレの気のせいか? まあ実害はないのでいいか。
さて『黒曜炭』の生産の問題は解決した。
そうなると、『黒曜炭』そのものの利用法を本格的に検討したい。
すでに行なっていることは、『黒曜鋼』の他に、消臭剤や浄水器への利用をしている、ゆくゆくはそれ用に、より特化した活性炭の開発も検討している。
ほかには叩くと澄んだ音がするから楽器にするとか? うん、冗談だよ?
カーボン素材や人工ダイヤなんかも検討してる。
いろいろ考えたけど、やっぱり炭はもやしてなんぼだよ! ともう一度燃やせないものかと試してみることにした。
前回もあらかたの方法は試したが失敗した、でもそれはものすごく火がつきにくかった『太陽炭』の例から考えると、『黒曜炭』はそれに輪をかけて火がつきにくいだけではないかと、各種方法を今度は時間マシマシで試してみた。
しかし、結果はやはり芳しいものではない。
だが一つだけ……一つだけ、試していない方法がある。前回の時にはなかった要素だ。
すなわちそれは『太陽炭』! 火のついた『太陽炭』と『黒曜鋼』を並べて置いたらいけるのではないか! そんな地獄の思いつきだった。
実際に火がついたらどれほどの威力を持つか検討もつかないのでできるだけの対策をすることにした。
世界樹火刑は断熱素材の壁で囲んだ建物で中央に火のついた『太陽炭』を安置している。この建物派外には熱が漏れない(あるいは限りなく断熱し無害化)つくりになっている。
今回はそれを下敷きにして、さらに空間を開けて三層ほど壁をつくり、さらに念には念を入れて、中央にそこまで広くないが狭くもない厚めの壁の小屋をつくってその中で作業した。
まず中心に置くのが大きめの『黒曜炭』、そして四方を囲むように同程度の『太陽炭』を四つ設置し、『太陽炭』に点火する。
この『太陽炭』は世界樹火刑に使ったものより一回り以上大きい。だから着火するまでかなりの時間を要した。
着火した『太陽炭』はすぐに赤熱化──青熱化して地獄じみた超高熱を発しだす。
そこでうれしい誤算が起きた。火のついた『太陽炭』の熱が、ほか三つの『太陽炭』に火をつけた! す、すごい熱だ!
青熱化した四つの『太陽炭』に囲まれた『黒曜鋼』は果たしてどうなるのか────
──すでに『太陽炭』が火がつくまでの時間は過ぎ、その倍、三倍よ時間が経過するも、依然として『黒曜炭』に火がつく様子がない。
そして、五倍の時間が経過したその時、若干あきらめムードがただよっていた空気を吹き飛ばされることになった!
唐突に先ほどまでとは桁外れの火力を発しだした!
ついに『黒曜炭』にも火がつき! その火力がそれなのか!? と確認した、まあ結果はわかりきっているんだよ?
調べた結果、『黒曜炭』は依然として火はついていなかった! あれー?
じゃあこの熱は、『太陽炭』四つ分よりも数倍さらに──いや十数倍の火力の出所は? と調べた。
その結果は──まあわかりきったことだけど──理由は『黒曜炭』だった事が判明した。
『黒曜炭』はけっして発火することはなかったが、しかし『太陽炭』が発した熱を限度いっぱいに吸収し、そして先ほど限界に達したためか溜め込んだ熱を増幅して放出しだした結果がコレだ!
当初とは全く違う結果に終わったけど、求めていた世界樹火刑の強化をはかることができた!
いや、強化された世界樹火刑はもはや火刑にはあらず! もはや地獄……! いや、地獄すら生ぬるい!
そういうわけで、この新設世界樹火刑は世界樹炎獄と名を改めることになった!
さて世界樹炎獄と犠牲者──もとい木偶がほしくなるわけだけど、さすがに無辜のエルフさんを拉致するほどオレは分別がつかないわけではない。
はぁ、どっかにわるいエルフさんをいないものか? と気分転換に森の中を歩いていると──
──何かが暴れているような音がした!
そこに近づいていくと知っているエルフさんと知らない日焼けしたようなエルフさんがいて争いあっているのが見えた。
ああ、これはいけない! とオレは争う二人に近づいて──
────その二人の間に割り込みをかけて、そっとある『魔氷』を実体化した。
そう、それは火がついたまま『魔氷』化していた『太陽炭』であり、至近距離でかつ不意打ちでその熱を浴びた二人は崩れ落ちてのたうちまわる。
そして、オレは二人をふんじばってから回収して、世界樹炎獄のある部屋へと自分ごと収納して移動した!
すこしでも空間が空いていれば、そこになんでも収納できる! それが『中原式収納術』だッ!
炭の話に終始しそうだったけど、なんとかエルフさん達を出せたよ?




