20話 幼児 〜 命名者:あれ? イモータルって、妹エターナルの略だったかな? 〜
やっと主人公の登場です(ネタバレ)
「いやあぁぁぁ────!!!」
「殺してぇ────!!!」
こんにちはーくん!
あら(まきじゃけの)すじ(こ)
・『宿敵』ちゃんつよくなる
・シーぽんもつよくなる
・わんわんお!
「あああぁぁぁ────!!!」
「うそ、声に出してた? え。 なんでなんでなんで!!?」
「えええ? ナンデ!? なんで話しちゃったのワタシ────!!?」
んー、『死』と眠りは近しい関係なんだねー。
あれかな、睡眠薬の過剰摂取で自殺する、ってヤツ。
眠るように死ねるんだってー……理解できないな、死を望むなんて。
唐突に暴かれた黒歴史にシーぽん床を転げ回っている。
仮面の隙間から覗く肌は真っ赤だ。
まさに恥ずかしくて火がでるといったところかな?
あはは……転げ回ってもその火は消えないよ。
怖がることはない、それもまた『シーぽん』なんだ……。
さぁ、全てを受け入れるんだ……うっぷ。
あ、ちょっとカメラ! カメラ止めて!
はーくんのキラキラが……お茶の間を彩ってしまうよ!?
ちなみに転げ回ってるシーぽんだけど、転がる直前まではーくんの事抱きしめてたんだよね。(離したとは言ってない)
ぐええ……おもちが逆流しそう……そうか、おもちの殺傷能力は飲み込んだだけでは終わらず、返しの一撃がある。
なるほどなるほど、すきの生じぬ二段構えだったのか! あっはっは、このはーくん、感服したよ!
「ううう……死にたい、死にたいよぉ……」
グエー死んだよー。
その後、シーぽんはうつぶせに倒れ、ピクリともしなくなった。
この時、広がった黒いマントと、中のシーぽんに押しつぶされたはーくんがいたことは意外に知られていない。
弱冠17歳、早すぎる幕切れだった。
あ、空気はあったまったんで本編どうぞ。
お送りしたのは、不定命でおなじみ、活ける生者(しかも超越種!)のはーくんでした!
「死にたい」
「……え、つづき?」
「あ、うん。負けちゃった……」
「ええ? 詳しく……」
「あの時のワタシはおかしかったんだ……必要ないのにわざわざ詠唱するとか……無駄に、ふっ! とか言ったり……うわあああぁぁぁ────!」
「だからね、調子に乗って挑んだけど、結局負けたの」
「どうしてか? 相性が悪かったのだろうか」
「それから何度も周回して、対峙してやっとわかった」
「ソレは不死の属性を持ち、それが同系統の『死』がぶつかると、相性ではなく質量の大きさで勝ち負けが決まるようだ」
「当時のワタシは擬似到達位階──擬似ではソレの質量を上回ることは叶わなかった」
「ソレは人々が『宿敵』に向ける悪意や悪感情を集めて成長して、育ちきった時、『宿敵』の命を喰らって出現する」
「絶望した誰かのもうどうにでもなれ、という想いから生まれた『絶望』」
「『生』が『宿敵』になるまで時間の巻き戻りを体感していた、ワタシ以外の存在の絶望」
「終わりが見えないのは絶望だ」
「先が望めない絶望、先を望まない諦観」
「『宿敵』直前の『希望』にテコいれしたのもコレだろう」
「その存在──世界『宿木』そのものが終わりたいと思ってしまった」
「どうして自分を苦しめるのかと『到達者』の代替品の『生』に八つ当たりしたのだ」
「『宿敵』は只々運が悪かっただけなのだ」
「ただ『希望』の次に生まれただけで『絶望』を孕まされたのだ」
「なまじ試練位階であったことも災いしたのだろう……それ以下ならば肉体が耐えきれず、生まれることもなかっただろう」
「不運はそれで終わらなかった」
「巻き戻り、その度に記憶を初期化される『宿木』の住人達は、記憶を持ち越さずとも無意識に澱のように不満が溜まっていた」
「度重なる『生』の失敗、『聖者』と『勇者』の失態」
「そして死を思う『宿木』の絶望」
「人々の無意識の集合である普遍的無意識──阿頼耶識が人類の存続を願い、その障害である存在を呪った」
「だがその矛先は『絶望』ではなく宿主である『宿敵』だった」
「愚かな事にそれは『絶望』の養分でしかなかった」
「その呪いはどういうわけか周回ごとに『宿敵』に累積し、強まっていた」
「呪いはそろそろ『宿敵』の許容限界に達してしまう」
「そうなってしまえば、『宿敵』の根幹から塗り替えてしまう事だろう」
「それによって何が起こるのか、先に確かめるすべはない」
「その回も終わり……果たして次の周回での『宿敵』は『宿敵』ままなのだろうか?」
「その周回で目覚めた時、ワタシはなぜだか今回で終わりだと直感……いや確信していた」
「不思議な感覚を抱いて日々を過ごしていると、不意に足を引かれる感じがした」
「比喩ではなく物理的な力だ……といってもその力はとても弱かったが」
「何かと思いそちらを見ると────」
「なぜか『幼児』がいた」
「乳飲子から脱していくらか経ったというくらいか」
「そんな『幼児』が笑顔でワタシに触れているというのだから訳がわからない」
「何故霊体のワタシに触れられるのか、何故『幼児』が一人でここに居るのか、足に触れる『幼児』の掌の温もりが」
「訳がわからなくなって、ワタシは動くことができなかった」
「動かないワタシに焦れたのか、『幼児』はなんとワタシの足(骨)を登り始めたのだ」
「更に訳がわからなくなり、しかし『幼児』を振り落とすわけにもいかず……」
「混乱したワタシは」
「その『幼児』を抱き上げてしまう」
「『幼児』は不思議そうな顔をしていたが、次第にキャッキャっと笑いだした」
「初めて感じる、そのやわらかさとあたたかさに、ワタシの混乱はもはや頂点に達しようとしていた」
「笑顔でワタシの顔に手を触れる『幼児』に気を回して居る余裕がなかった」
「ただただその腕の中の『幼児』を潰さないよう、落とさないよう、それだけに心を傾けていた」
「こう言ってはあれだが、生まれてから初めて感じた命に戸惑っていたのだ」
「思えばあの時にはもうその幼子に魅了されていたのかもしれない……」
『宿敵』さんがフェードアウトしました。




