19話 『絶望』 〜 命名者:知ってた。 〜
『死』の能力はわりと汎用性が高そうです。
おはざっしゅ(3回目)はーくんだよ!
前回のあらすじ
・育ちすぎたポチ、地球を割る。
・むしゃくしゃして殺った、今は反撃されてる。
・宿敵が増えるよ、やったねシーぽん!
うーん……山のようなオオカミ、星をくだく……。
タイヘンなことだけど……銀河にパンパンサイズの龍の友達がいるんだよね。とはいえ、図体ににあわずきづかいのヒト(オレは意思疎通可能ならヒトあつかいするよ?)だからふだんは20メートルサイズと小型になってる──十分おおきいな!
アレでまだ成長中だっていうんだからたまらない、オレなんて13き──140センチで成長が止まってるのに……おのれおのれおのれ!
とりみだした……なんかむこ探しで世界をとびまわってるらしい、条件の合う龍がなかなか見つからないんだって、ボヤいてたなぁ。
最近は会うたびに「ニンゲンにしておくのが惜しい」とか、「はーが龍ならいいのに」って冗談をいわれる。ホントーによくいわれる。
それにしても、龍って、ヤバイね。ドラゴンの知り合いなんて彼女しかいないけど。ドラゴンの大きさがヤバイ。彼女が飛び抜けて大きいなんてこともないんだろうから、銀河サイズの龍がゴロゴロしてるんだ……異世界ヤバイ! 包容力がマジパない。
あ、それと星をくだく、なんてここにいるメンバーなら余裕でいけるだろうね……え、オレ? オレ ニンゲン。オレ ジンガイ チガウ。
はーくんでした! ウホウホ?
「死んだワタシの意識は薄れながらも世界に残る」
「自分から動くことはできないが、漂いながら世界を観測する」
「いや、薄れた意識では能動できない、夢見心地なのだ」
「……ん? 夢見心地といえば駄女神とナインはまだ起きないのか、って?」
「……え? 人の名前はちゃんと呼べ? それ、ハルに言われたくないな……まあいいか、うん。気をつける」
「それで、ワタシは言ったよ? 死ぬほど疲れているから起きない、って」
「……そんなまさか──って? それこそまさかだよ。そんなことをしようとしたら駄──女神ともかくナ──ノインは起きる、絶対起きる」
「『死』は深い眠り例えられる──だからヤってないよ。ちゃんとあとで起きるからね」
「『死』を拡大解釈をすれば、この力で眠りを操れる、って事」
「と言っても、格上のあのふたりを眠らせるのは難しい」
「でも、既に眠っている時に、さらに深い眠りにつかせる事はできる」
「でもやっぱり、格上相手だからかな、死ぬほど疲れているぐらいにしか眠りを深められなかったんだけどね」
「格上じゃなければ、そのまま眠りを深め続けて永眠させる事だってできるかもしれない──正直言って効率は悪いし、普通に殺した方が早く回る課題やり方だから使い道はないかな?」
「いや、本当に眠るように死ねるから、そういう用途には向いてるかな?」
「あとは殺気を出さないのも利点? あ、やっぱり殺そうとしてたら殺気が出るな……うーん」
「まあ、使い道はおいおい考えよう」
「あ、ハル。気持ちよく眠りたいときは言って? 大丈夫、うまくやるから!」
「……疲れた時にたのむかも──って、もっと気軽に言ってくれてもかまわないんだよ?」
「それとね、えへへ……この力は逆に眠りを覚ます事だってできるんだ」
「モーニングコールが欲しい時も、ワタシはそばにいるよ?」
「あ、うん。ワタシに枕元に立たれるとビックリする……? ……そっかぁ……。そっか……」
「え、この仮面を取ればビックリしない? や、やだぁ……」
「そして時間が戻り、ワタシは蘇る」
「なんとなく気づいたことがある。ワタシが死んだ後の事も、ある程度わかるようだだ」
「これは『死』の能力を持っているからか(時間が経てば蘇る?)、あるいは次の周回での復活が確定しているからか、それはよくわからない。これを確かめるすべはない」
「前回はワタシが死んだから、あのオオカミが現れたようだ……こう言ってはなんだけど、死んでいて助かった思いだ」
「それから、『宿敵』と顔を合わせるたびに殺し合いをする様になった」
「これでは以前と何も変わらないな、と思わないでもない」
「そうやって数度、数十度と回を重ねた」
「不意をつかれ不覚を取って以降は、しばらくワタシが勝ち越していたが、何度も死合う事に『宿敵』は腕を上げる」
「そして、再びワタシは殺される」
「正直言って、悔く憎く腹立たしい。しかし、腕を上げたなと、感心しないでもなかった」
「それから十数回に一度負けを挟む様になり、段々と感覚が縮んでいった」
「『宿敵』が腕を上げていたが、ワタシだって同じ様に腕を上げるのだ」
「しかし『宿敵』は実体があり、人に嫌われやすい……ならば練習相手には事欠かなかっただろう」
「実体のないワタシは『宿敵』としか触れ合い事はない……そう思うと、なんだかよくわからない感覚を覚えた」
「それからは、『宿敵』との死合いに勝った後に修練をする様になった──理由はなんとなく」
「さて、こうやって回を重ねた事でわかったことがある」
「まずは時間の巻き戻り」
「これはやはりと言うか、『宿敵』──いや、『生』の生死によらず滅び以外に戻る事はなくなっていた」
「バケモノオオカミ」
「それは決まって『宿敵』が勝った回に出現するようだ、必ず出現するわけではないが高い確率で現れるようだ……バケモノオオカミの出現には『宿敵』がなにかしら関わっているのだろう」
「『宿敵』の事」
「回を重ねる毎に強さが増してる……回を増す毎に表情を暗く険しくしている」
「呪いも累積して増えている……なんとなく許容限界が近づいてきているようである」
「それと、ワタシを殺した宿敵の行動」
「隠遁したり、滅びの回避を目指したり、人間を抹殺しようとしたり、世界を滅ぼそうとしたり、またはワタシ以外に殺されたりしたようだ」
「そしてさらに回を重ねた、ある周回」
「その頃にはワタシと『宿敵』の実力は拮抗するようになり、なかなか決着がつかなくなっていた」
「だから10分ほど打ち合って決着がつかねば引き分けとして、その日と死合いは終りと言う、暗黙の了解ができていた」
「それは滅びの時までだいぶ近づいていた」
「その日も、ワタシ達は死合いをしていた」
「死合いの趨勢はワタシに偏っていて、『宿敵』が地に膝をつけた時だった」
「そのまま決めよう、そう思うワタシとは裏腹に、身体が勝手に引き下がる」
「一体なんだ、と『宿敵』を見れば」
「全身から黒い靄を立ち昇らせる『宿敵』がいた」
「『いやだいやだ』と首を振っていたが靄が減る事はなく、時間が経つ毎に靄が昇る勢いは増し、『宿敵』は言葉を発さなくなっていた」
「やがて靄は一箇所に纏まり、あるモノを形づくっていった」
「ああ、何故気付かなかったのだろう」
「ああ、何故探ることを辞めてしまったのだろう」
「あんなに恐怖れていたのに」
「それは、ワタシが勝手に、もう二度と見る事はないと思っていたモノだった」
「山のような大きさのオオカミがそこにいた」
「真っ白になったワタシの思考とは裏腹に身体は勝手に動き出した」
「バケモノオオカミの影を縫うように走りそれに近づいていく」
「身じろぎをするバケモノオオカミをよそにそこへたどり着いた」
「『宿敵』の元に」
「顔に恐怖を貼り付けた『宿敵』はすでに事切れていた」
「その時にワタシがなにを思っていたのかはもう思い出せない」
「ただその時のワタシに肉体があれば黙祷していたのかもしれない」
「だが、ただじっとしている場合ではないとワタシの身体が思ったのか、『宿敵』の亡骸に手を触れた」
『我は半身たる『生』の身体、『生』の魂魄、『生』の死、それをもってここに顕れん! 我は『死』、推して参る!』
「ワタシの声無き口はそう詠唱えていた」
「そして、ワタシと『宿敵』は一つとなり」
「気がつくと受肉したワタシがいた」
「以前の様に骨だけではなく、ちゃんと肉体があった」
「そんな感動に浸る間も無く」
「産声を上げるバケモノオオカミに向かうのだった」
「全能感に包まれたワタシは高笑いを上げながら」
「絶対に負けない」
「そう、叫びながらバケモノオオカミに飛びかかった」
「もうなにも怖くない」
「ワタシの闘いはこれからだ!」
シーぽんの蛮勇が世界を救うと信じて……!




