1章1話 『心臓って刺されたら痛いんだね』
そこは草原。膝より小さい草が無数生えている。心地がいい日差しに、丁度いい風。何か天が喜んでいるようだった。
「────セリナ まだ歩くのですか?」
「────ええ まだ歩きますよ。だって今日はこんなに心地がいい日ですし 歩かない理由があって?」
「────だったら1人で歩けばいいじゃないですか…… 私はもう疲れているんですけど」
「────えーそんな事言わないでくださいよー。 だってー1人で歩くより2人で歩いた方が楽しいでしょう。」
「────だったら私でなく他の人に……」
「────だからーそういう事言わないでくださいって。 ほら歩いていると気持ちいでしょう。こういう日は外に出てお散歩した
『ドサ』
ってあれ?今なにか踏んだ様なー」
足元には大の字で倒れている16歳くらいの男の子の腕があった。
「────あれー誰か寝てますねー」
「────そっとしといてあげた方がいいんじゃないですか。」
「────いや、こんな所で寝ていたら、こんなに暖かくて気持ちがいい日でも風邪をひいてしまうかもしれません。 起こしてあげましょう。
おーい こんなところで寝ていたら風邪をひいてしまいますよー
おーい」
「────はー別に起こす必要などないと思いますが……」
「────だって みんな風邪はひきたくないでしょう。 おーい おーい ほら手伝って」
「────な、何で私が……」
「────いいから」
「────うぅー ほら早く起きてください。」腕をさすった
『ドックン』
(う、お……俺は)
『ドックン、ドックん』
(一体……)
『ドックン、ドックンドックン』
(たしか…)
『ドックン、ドックン、ドックンドックンドックンドックンドックンドックンドックンドックンドックン』
「「あ、あいつに」」
『ゴッチーん』
「あ、いたたたた」
カケルは急に起き上がったせいで何かにぶつかってしまったようだ 。
「あー起きたー こんなところで寝てたらいい天気でも風邪を引いてしまうかも知れませんよー」
「こ、ここは ここはいったい?」
カケルは今自分がいる状況を理解できず辺りをキョロキョロした。すると前に少し薄みがかった茶色い長い髪の毛で、身長は160cmくらいの膝上くらいのスカートを履いたちょっと赤みがかった目の高校生ぐらいの年齢の女の子が立っていた。
「き、君は?」
「私はセリナ・クルーチェルといいます。自分のいる場所が分からないなんてちょっと変ってますね。寝ぼけているのですか? それとも本当に自分のいる場所が分からないんですか?」
セリナという女の子は少し近ずいて、しゃがんで問いかけてくる。
「え? は、はい全く分かりません。というか何もかも分かりません。何で自分がここで寝てるのかも分からない状況です。」
カケルは今いる状況を必死に説明しようとしたがうまく説明出来なかった。
訳も分からず男にあって、ここに連れてこさせられたんだ。 瞬時に状況理解出来るやつなんていねーよ。
「本当に変な人ですね。 でも彼女には謝っておいた方がいいと思いますよ!」
セリナは後ろの方を向いた。そこには黒髪の短髪で昔の日本の着物にちかい様な者を着た黒目の女の子が頭を抱えてしゃがんでいた。
「も、もしかして…さっきあたったのキミ?」
恐る恐る聞いてみると女の子はコクリと小さく首を振る。
……げ、マジか。
「あ、ご、ごめんなさい。いやーさっきは状況を把握できてなくてですねー…… てか今も全然理解出来てないんですけど……
で、でもぶつかったことは謝ります。本当に申し訳ございません。」
カケルは必死に謝る。
もしこの子がこの事を両親にでも言って俺が避難されるような事になったら大変だ。 このよく分からない状況に 面倒臭い事がプラスされ俺の頭がパンクしてしまう。
「いいです。気にしてません。」
え? 気にしてない。 あ、そりゃよかった。
「本当に? ありがとう。でも本当に大丈夫? 傷とかない? 何かあったら君のお父さんとかお母さんとか家族に迷惑かけてしまうかもしれないから。」
カケルは少しホットした。 これで面倒臭い事はプラスされない様だ。
「やっぱり許しません」
不意に黒髪の女の子がカケルから目をそらしながら言う。
……マ、マジすかー。
「え!? そんなに痛かった? 本当にごめんなさい。自分に出来ることなら何でもしますので、許しては頂けませんでしょうか?」
またカケルは必死に謝る。
正直、俺が彼女にとってどんな悪い事をしたかは分からないが、これ以上厄介事が増えては困る。 ここは俺の為にも絶対にお許しを貰わなくては……
「別に何もしてほしくありません……
いや、やっぱりこの場から消えてください。」
カケルを睨んで言った。
「え、えー……」
あー、これマジな奴だなー。これもう面倒事を取り下げにしてはくれないだろうなー。 はー、残念だ。
カケルは苦笑いをし、この状況をほんの少し呪った。
「ほーら 許してあげてください。別に好意的にぶつかってきた訳では無いですし。それに、この方に敵意は見えませんし。」
セレナはにっこり笑ってカケルを見る。
お、おー有難い。その言葉でもしかしたら俺が救われるかもしれない。だ、だが ここはとりあえず この雰囲気を変えなくては。
「そ、そーいえば まだ自己紹介がまだだっな。俺はカケル
佐根元カケル よろしく。」
カケルは、この雰囲気を変えてやろうと元気に自己紹介を始めた。
「先程も申し上げましたが改めて、私はセリナ・クルーチェル。
そして、そこで拗ねているのはルミ・シューリンクですよ。
よろしくお願い致します。」
「べ、別に私のことは紹介しなくてもいいです。」
勢いよくルミが言う。
「あら、でもせっかくだから。 それにルミも自分から自己紹介しないでしょう?」
「こんな奴にする必要ないでしょう。それに、こっちから言わせてもらえば、セリナが自己紹介する意味などないと思いますが。別にこれからお付き合いしていく訳でも無いですし。」
ルミはプイとそっぽを向いていった。
「まーまー セリナ、ルミ 2人ともよろしく」
「はい、よろしくお願いします!」
セリナはにっこり笑っていった。だが、ルミは何も言わない。
まーそりゃ嫌われちゃったもんなー俺。 仕方が無いことだろうけど初対面の人にここまでされると少しへこむ。
「やっぱり第一印象は悪いよねー。」
再び微妙な空気になる。その空気を壊そうとセリナはまた新たに話題を作る。
「そ、そういえばカケルさんはお金とかは十分に持っているのですか?」
「んー新手の詐欺かなー?」
カケルは少しからかい気味に言ってみる。
「ご冗談を。もしお金を十分にお持ちでいないのならお昼をご馳走して差し上げようかなと思いまして。」
セリナは何も動じず答えた。
正直俺はあたふたするキミの顔が見たかったけど仕方がない。
「あ、ああ。えーっと 2000円だな。これだけあれば今日はたりるし、女の子におごってもらうのはなんか気が引けるしな!」
カケルはガッツポーズをとって言った。
「べつにそれは気にしなくてもいいのですが……円とはどこの国の通貨なのですか?聞いたことありません。」とセリナは首をかしげて言った。
「え? 日本だけど……」
カケルが心のどこかで思っていた [異世界]という予想が確信へと近ずいていく。
だが、出来ればそれはなしにしてもらいたい。 ここまで来て単位が取れず学校退学とか最悪だー。
「日本? それは一体どこの国の都市なのですか?」
セリナは、再び首をかしげて言った。
嘘でしょー。こんな時だけ変な感当たるのやめてよねー。
「日本は日本って国だけど……」
セリナの反応はない。
イヤイヤ 日本くらい知ってるでしょ。だって国際連合の加盟国で 俺の知っている世界の中では先進国。非核三原則や平和主義を掲げている超がつく程の有名国だぞ。てか、今セリナ達が喋ってるの日本語じゃん
「カケルさん、まだ寝ぼけているのですか? 本当におかしな人ですね! そろそろ夢の世界とおさらばしたらどうです?」
──── あ、なるほど。 確信した。これは夢だ。なるほどね。確かにこんな夢の世界とは早くおさらばしたいものだな。
ふ、そうと決まればやる事はただ一つ。この夢の世界からの脱出だ。
カケルは寝そべり両手を頭の下に敷、ただ友達に何かをお願いする様に言う。
「セリナ、俺の事殺してくんね?」
「え?」
セリナはいきなりの事に驚きを隠せず目を丸くし少しの時間固まった。
カケルはこれまでの経験上、死ぬ瞬間に目を覚ますことを知っている。
「カケルさん何を言っているのですか? 殺せとは冗談が過ぎて……」
「そういう事なら私が」
先程までふてくされていたルミが右手を伸ばして立っている。するとルミの手の近くがひかり、そこから赤く輝く剣が出てきた。
「ル、ルミ 多分この人は本当にちょっとおかしいぐらい寝ぼけているだけだです。それやったら普通の人は死んじゃいますから。ね、早まらないで下さい。」
ちょっとセリナは慌ててどうにかルミがやろうとしている事をやめさせようとした。
「何故セリナはこの者を守るのですか? 別にこの者を守る理由などないではありませんか。奴隷にでもするつもりですか?」
ルミはどんどんカケルに近づいていく。
別に何を言われようと俺は何も感じない。それどころか、こんな美女2人に囲まれる様な貴重な体験なんて、なかなか出来ないと この夢の世界を少し祝福している。
「別にそんなことをするつもりはありませんが…… ほら、もしかしたらカケルさんを殺したらどこかの国の王様が怒って攻め込んでくるかもしれない……でしょ? そんな事になったら大変だと思いませんか?」
セリナはまーまーと手を前後に振りながら言った。 だがこのセリナの弁明は普通に考えたら逆効果だ。
普通に考えたら……
「どこかの国の王様が怒るのであればこの者は敵の間者なのではないのですか。もしそうなら、ますますここで殺しておかないといけません。」
という答えが返ってくる。そんなのどこの世界でも当たり前だ。
ルミはカケルの横で両手で赤く輝く剣を握り上へ持ち上げた。つまりいつでも殺せるということなのだろう。
「い……いやーでも、流石に殺すのは……」
セリナはどうにか説得させようと必死にいい案を探しているが何も見つからないようだ。
「いや、ルミ頼む。」
正直、あれだけ考えて出た案が、敵国の王様が怒る。というものだけだったとしたらなら、相当頭が残念なのだろう。
とまぁ、冗談はこれ位にして、残念だがこの世界ともおさらばをしなくてはいけない様だね。 何かスッゲー眠くなってきた。
「ほら、そこの者も言っているではありませんか。早くそこをどいて下さい。」
ルミは一瞬の隙も見のがさないような目。まさに気を張って餌を食べているヤギや羊のような草食動物を密かに狙う虎のような目でセリナとカケルを見る。
「い、いやー。でも、流石に……」
セリナは諦めずにどうにかルミを説得しようとしている。
だがすまない。こんな俺のためにありがとう。
「セリナごめん」
「え?」
「ペラー」
カケルはセリナのスカートをめくった。 ヒラヒラと風にのり舞い上がる。
セリナは反射的に両手でスカートの前を抑え、高く響く声を上げる。
「キャャーーー」
「今だ」
そう言ってルミはカケルの心臓を刺す。
剣先が俺の体内へ1ミリ、また1ミリと入り込んでくる。
『『ブスグリュシュ』』
「「グゥゥヴぇぇえーーーーー」」




