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2章2話『三角型のチョコパイ』

お箸とスプーンがお皿に触れ合い、高い音が鳴り響く。こんな豪華な食事をしていても、何故だか『会話』の『会』の字も無いような、長く気まずい時間が続く。

でもそれも当然であろう。ただ朝カケルを起こしに行っただけなのに、ドアノブが取れ、ドアが粉砕してしまったのだから。




────めっちゃ気まずい。





本当に俺何やったんだよ。正直全く身に覚えが無いんだけど。 でも何も無くしてマジルがあそこまで怒ることは無いだろう。 というか今はニッコリとしてご飯食べてるんだけど。 何かそれも逆に不安だ。



と、とりあえず、この空気をあのドアと同じように粉砕しなくては……




「い、いやー、でも凄いよなー。 昨日も思ったけどこの世界にお箸があるなんて。お米みたいな主食もあるし……」




「────────」




話が続かない!



何で誰も話してくれないの? まぁ確かにドアが壊れたのは衝撃的だったかもしれないけど、会話するくらい良くない? そんなに話しちゃいけない空気になっています? 皆さん。

もうこうなったらササッとご飯を済ませた方がいい気がするなー。




……クンクン



ってか何か少しパンの甘いいい香りがする。まだ何かご飯が出てくるのかな? 嘘でしょー。これじゃあこの気まずい空気がまだまだ続く事になっちゃうんじゃないですかー?




「あ、そろ……そ……ろ……かな?」



シェルは席を立ち、キッチンへ向かった。



あ、今のシェルが作ってたの? 何かほんのすこーし不安なんだけれども。昨日の夜は正直たいした料理を作っていなかったような? それともあれかな? 昨日はよく分かんない焦げた紙みたいなやつはあったけど、パン無かったし、シェルの得意料理がパンだったから昨日はたいしたのを作れなかったみないな感じなのかな?



シェルはパンをお皿によそり、こちらへ持ってくる。



「おま……た……せ。」



シェルの手には2つのお皿が乗っている。



意外といい香りしてんじゃん。 どれどれ、グルグル巻になっているパンと……


「ってこれクロワッサンじゃね!?」




確かクロワッサンって作るの結構難しいんじゃなかったっけ?

やっぱり シェル、パン作りめっちゃ得意なんじゃ?




「こ……れ……ワッサン……クロー。」






「────ファ?」



今シェルなんて言った? 『ワッサンクロー』?


ぷふっ、プハハハハハ。 あーやべー、ちょっとツボるんだけど。



「シェル。それは『クロワッサン』だよ。いやー、シェルも面白い事も言うんだなー。ははははは、ちょっと次から『ワッサンクロー』っての使わせてもらうよ。」



カケルは声を出しながら大きく笑う。


だがそんなカケルもついには気づいた。



俺の他に笑っている人がいない? っていうか皆俺を細い目で見ているような。



「あれ? あ、あー間違えた。これ『ワッサンクロー』だった。

いやーちょっと俺の故郷でさ、この『ワッサンクロー』の事

『クロワッサン』って言ってたから、つい口に出しちゃった。あはははは。」




「────」



あ、あれー? ちがかったかな? なんとなく『クロワッサン』の事をこの世界では『ワッサンクロー』って言うのかなと思ったんだけど……

じゃあなんで皆俺のことを細い目で見ているの? ちょっと理由が知りたいなー。なんて思ったりして……




「いやー、ですよねー。ビックリしましたよカケルさん。」



お!? どうした? やっぱ当たってたか?


だ、だよなー。 はぁー、良かった当たってて。でもまー何かちょっと空気が和んだな。この空気に免じて、先程の細い目で俺を見た事を水に流してあげよう。



「あはははは、ごめんごめんセリナ。 ちょっと俺の故郷は変わっててさー。」




この流れは必ず掴む。



カケルは新しいネタが無いかと、もう片方のお皿を見る。


そこには三角型のワッサンクローよりは生地が固めで甘い香りを放つパンが沢山あった。




「こっちのパンは何?」



「あ……、そっち……は……、私の……オリジナル……作品で、 中に……チョコが……入って……るの。」



へー。これシェルが開発した料理なんだー。 凄いなー。 三角型で中にチョコが入ってる……


「ってそれ『三角チョコパイ』じゃね!?」



これは某ハンバーガーショップで売られている超人気商品じゃないですか。

いやー、ちょっとリアルで驚いた。 この世界に『三角チョコパイ』があったなんて……。




ちょっと食べてみたい




「あのさ、1つ貰ってもいいかな?」



「よろ……こんで。」



シェルはモジモジしながら言う。



よし、実食だ。大事なのは味だからな。


カケルは『三角チョコパイ』てきな物を手に取る。



お! さわり心地は最高だ。これは味も期待できそうだぞー。




「パク」



カケルは一口『三角チョコパイ』てきな物を口にした。



はあぅ!?







『ラーーーーーーーー』



何だか天からの囁きが聞こえてくる。







「リアレイト」






カケルの瞳から一筋の雫が垂れた。



やばい。止まらない。 こんなに美味しいの初めて食べた。あの『焦げた黒い紙』みたいな食べ物といい、この世界には驚かされる物ばかりだ。




「あ……、あの……、お口に……あいません……でしたか……?」



シェルが顔を紅くして、心配そうに言う。



「い、いや、断じてそんな事は無い。ちょっと予想よりも美味すぎて、透明な雫が出てしまっただけだ。」



「そう……ですか……。」



シェルは大きく息を吐きホットした。




「それよりカケル様? さっきの『リアレイト』っていうのはなに?」



マジルが不思議そうな目でオレを見る。



「あぁー。『リアレイト』っていうのは、『real(リアル)』と『great(グレイト)』の略で、まぁー機械的に訳せば『現実的に素晴らしい』って感じの意味なんだけど、俺は『本当に素晴らしい』みたいな意味で使っているんだー。」



「へ、へぇー」



カケルは熱血的に説明したが、その熱血さに誰もがついて行けず、再び辺りが静かになった。





「セリナ、今日の予定。」



ルミは今まで皆で作りあげた空気を感じていなかったかのような鋭い口調で言う。



「あ、はい。そうでしたー。 本当はカケルさんが起きたときに言おうと思っていたのですが、そんな空気ではなかったので。」




……何かよく分からないけどすみません。




「それで今日の予定何ですけれども、 午後から王城へ向かいます。」



「王城? 何で?」



まぁー俺も行きたかったから別にいいけど。



「実はカケルさんは、まだリスチニア帝国民ではなく、お客人扱いになっているのですよ。」



「はぁ、」



カケルは三角チョコパイを食べながら話を聞く。



「まぁ、いくつかリスチニア帝国民になる方法はあるのですけど、この国の王様にあって直接帝国民にしてもらうのが一番簡単なのですよ。」





なるほど、確かに、国の王様に会って話付けるのが一番楽だよな。

個人的にもあの夢の事で話してみたいし。

あー、でもこの話はセリナ達にも聞いてもらいたいな。




「わかった。じゃあ俺からも話いいかな?」



「お話ですか? よろしいですよ!」



「あぁ、実は────」



カケルはあの夢で聞いた事をセリナ達に話した。




「────って事なんだけど。」



まぁ、普通に考えたらこんな話信じてくれるわけないよなー。

正直俺も信じられてないし。



「んー、まぁそんな事ないと思うんですけどねー。

でも分かりました。この国の警備を強化しておくよう頼んでおきます。」



「え? でも本当にいいの?」



「ええまぁ。 ここにレイミがいないので嘘か本当かは確実には分かりませんが、私はカケルさんの事を少し信用していますので。」



うぅ、ありがとうセリナ、こんな俺の事を信用してくれて。


あ、でもそういえば、レイミはこの部屋にいないよなー。 何でだろう。



「ありがとうセリナ。 そういえばさ、話変わるんだけどレイミは何でこの部屋にいないの?」



「あぁー。レイミさんは私達の様に『レッドソウラー』ではないのでこの部屋に入れないんですよー。 本当は一緒にご飯食べたいんですけど。」



あー、なるほどね。確かにレイミと会ったのも違う部屋だったよな。



「じゃあ、そういう事なのでお昼までに仕度を済ませておいて下さい。」



「はーい。分かりましたー」

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