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1章13話『2度目の対面』


「──────── は!?」




自分以外の物体が存在しない、ただ黒い空間が無限に続く世界。自分の呼吸音以外の音はなにも無く、ただただ静かで不穏な世界。 地面もないのに立つことができ、明かりもないのに色が鮮明に見える。

そんな世界の片隅でふとカケルは目を覚ます。



「こ、ここは?」



思わず上げた小さな声が、何重にも重なり響き合い、すこし大きな音をたてる。 だがそれもすぐに消えていき、何も無い世界に再び戻る。



こんな所に来た覚えなど勿論ない。だが今実際ここにいる。それがどういう事なのか正直よく理解できない。 可能性が高いのはこれが『夢』ということはだろうか。



カケルはこれまでの自分の行動を思い返す。


確か、ババ抜きが終わったあと皆でポーカーをやって、その後 結局ルミがビリだったから、部屋の空きがなく困っていた俺が、ルミの部屋に一時的にお邪魔する事になって……

あ! そんですぐに寝たんだ。



つまりこれはやっぱり『夢』って事か。


でも新鮮だ。こんなにハッキリ考え事が出来る夢なんて初めて見たからなー。

ん?これあれじゃねーか。 俺の考えた事が具現化されるみたいな事あるんじゃねーか?


……とりあえず、



「我が下僕よ現れろ!」


カケルは少し離れた場所に狙いを定めて『はぁ!』とカケルのイメージの中での召喚を行った。



「…………………………」



……何もおこらなかったようだ。



「知ってたよ、知ってましたよ。 この世の中自分の思い道理になる事なんて そうないんですよ。」



予想はしていたが、やっぱり少し残念だ。夢の世界の中でくらい自分の思い道理になったっていいではないか。 このままではもっと現実では大変そうだ。色々と……




「やー、こんばんは。カケル君。」



「あー、こんばんはー…………………… ん!?」



あまりにも いつも道理スムーズな挨拶に、カケルもいつも道理返事をしてしまった。


聞き間違いではないよな。 俺の空耳って事じゃないよな。


少し目をつぶって 適当に返事をしてしまったので、まだそこに本当に人がいるのか分からない。



もしかしたら来るかもしれない。『俺の時代』。夢の中だけの夢の世界。

ふふふ、では早速確認しよう。本当に我が下僕がいるのかを!


カケルは声が聞こえた方向に勢いよく振り向いた。



「うぉぉーー来たー! マジで来ました俺の時代!」


カケルは思わずガッツポーズをする。



「あはははは、 ゴメンねー 僕は君の下僕ではないよー。 タイミング完璧だったからちょっと期待しちゃった?」



正直めっちゃ期待しました。 ガチで『この世おば 我がものとぞ思う(藤原道長)』って歌が詠めるくらい期待しました。

ってかマジなんだよ……

分かってた。分かってたよ。どうせこんなもんだって。

でも、ちょっと期待裏切りすぎじゃないですか?



「じゃーさ。君は誰なの? っていうか何でここにいるの?

ここって俺が思うに俺の夢の中だと思うんだけど」



「そうだねー。ここは君の夢の中。まー、君の夢の空間を支配しているのは僕なんだけど。 あと、ここに僕がいる理由は君に用があったから。


そして僕が誰かは……君も分かるはずだよ。」



「え?」


俺が知っている人物。この世界に来てから知り合ったのはまだ女の子だけなんだけどなー。 でも、何だか口調は違くても聞き覚えのある声。


『俺の知っている人物』



────な!?



も、もしやあの時の。



カケルの顔はどんどん強ばっていく。 あの時の痛み、苦しみ。俺は1日経っても忘れていない。それにこれからも忘れないだろう。



「お前、あん時の……」



「やっと思い出してくれた?

そう。僕は君をこの世界に引きずり込んだ 張本人 だよ。」



くっ……


カケルは怒りを抑えきるので精一杯だ。 別にこの世界に連れてきたのを怒っているのではない。 いや、確かに少しそれもある。 だが一番の要因は、俺をあんな手口で引きずり込んだこと。


でもここで感情に流されるのは良くない気がする。 この男が俺をここに連れてきた理由も今なら分かる。 それにここでキレたら話が始まらない。



ふー


カケルは心を落ち着かせた。



「お前がここに俺を転移させた理由は分かった。でもいくら何でも急すぎる。俺が1日この国にいた限りではそんなに急ぐ必要はないと思うのだが?」



「なんだ、意外に冷静なんだね。もうちょっと突っ掛かって来ると僕は予想していたんだけど。それと僕には『バルデ・バルガマス』って名前があるから『バルデ』って呼んでくれるかい?」



「はいはい、それに突っ掛かったって何も得が無いからね。俺のレベルが上がる訳でもないし。

それで、理由は?」



カケルはすぐに回答を求める。正直この『バルデ・バルガマス』って言う奴の考えは理解した と言っても、信じた訳ではないし、どちらかと言うとあまり好きではない。そんな奴にこの対話の主導権は握られたくない。



「せっかちだなー カケル君は。僕はもう少し雑談をしたいと思っていたんだけど。

まーいっか。どーせ また話す事になるだろうし。」



バルデは少し残念そうな顔をする。だがそんな顔もすぐ切り替え真剣な顔つきをする。 この表情からは本当に何か大変な事が起こっているように見える。



「理由は昨日の朝言った通り この国を守る為だよ。」



そんな事はもう知っている。俺が知りたいのは、何でそんなに急いで俺をここに連れてきたかだ。



「それじゃ俺の質問の答えになっていない。さっきも言ったけど 街の人達も、国の兵士達も、ましてや この国にいるレッドソウラー達でさえ 国に大変なことが起こるという事を何の気にも求めていなかった。

それにセリナが食事の後に言っていた。この五大帝国の周りには自国の結界が張ってあって、進行する敵の軍隊を確実に感知することが出来るって。それなのに、」




「だから大変なんだよ。 みんな気付いてないから大変なんだよ。

このままいけば国が滅ぶ。おそらくあと2週間以内にね。そうならないためにキミを呼んだんだ。」



「く、国が 滅ぶ?」



国が滅ぶ。こんな事あるのか? マジルやルミの様な怪物がいる国があと少しで滅んでしまうのか? しかもその事をまだ誰も知らないなんて。本当にそんな事があるのか?



「もし今国が滅ぶことがあるなら、まず間違えなくレッドソウラー以上の者は殺される。勿論カケル君、キミも含めてだよ。それに、それ以外の人達だって当然無事ではすまない。」



そんな訳あるか。確かに俺はまだこの世界に来てから1日で、リスチニア帝国で過ごした時間は半日程度だ。だけどこの国をそう簡単に滅ぼせるとは思えない。


それにリスチニアの国土が世界で2番目に小さいと言っても、俺とルミ達が出会った場所まで相当な距離があったのに、国境までとなるとそれの何十倍も広いって言っていた。


確かにリスチニアの事も全然知らない俺に、他の国の事など知っているはずもないけれど、 もし仮に国境を無事何もなく入れたとして、そこから王都まで落とすのだったら相当時間がかかる。



「まー、今こんなところで何を言っても信じてはくれないだろうね。 証拠も何も無いし。」



信じねーよ。だってもしこの国が本当に滅ぶとしたら、俺を何のために連れてきたんだ。まだ俺は戦い方も知らない。まだ自分はこの国の者でもない。そんな奴にいったい何が出来るっていうんだ。



「だから、俺の話を信じるか信じないかは 自分で決めてくれ。

……その代わり、一度だけ失敗できる権限を与える。」



「失敗できる、権利?」


「そうだ。 具体的に言えば、一度だけ過去に戻れるって言う事。『魔法』でね。」



『魔法』ってそんな事も出来るのかよ。まじ未知数だな『魔法』。


って事はこの空間も魔法で作っているのか? 全く関わりがない世界と言語が一緒なのも『魔法』の力なのか?


って、違う違う。そんな事を考えている場合ではない。落ち着いて考えろ。

もし、本当にバルデが魔法で俺をここに呼んだと言うのなら、普通に考えて『遊び』ということは無いだろう。

それに、流石に信じ難いが バルデが嘘を言っている証拠もない。

まぁ、最悪のことを考えておく必要はあるか。




「分かった。 まず言っておくが俺はバルデの言う事を信じる気はない。

だって、まず第一に考えて、どれくらいの物かは分からないけど、セリナが言っていた 結界に察知されずにリスチニア領地内に敵が入り込む事はほとんど無いと考えられるから。


……だけど、バルデの言っていることも、 気には止めておいてやる。」



万が一の事を考えて行動することも決して無駄にはならないだろう。

まー、俺がこの予言を信じようが信じまいが最良な手だろうな。



「分かったよカケル君。 君が二回目で失敗しないって言うならば、君を信じて待っているよ。」



「ふ、俺はお前の事を信じていないからな。だから、二回目なんてありえねーよ。」



「ははは、そうか。」



バルデは笑いながらカケルに寄っくる。そしてカケルの胸に手を置く。




「一つだけ。 カケル君、ここでは人を殺す事になる。その覚悟はある?」



そうだった、人を殺すんだ。この世界では。

考えてもいなかった。ここは日本とは違う。人を殺めなければいけない世界。大切な何かを守る為に、何かを奪う為に。

そんな罪深い事本当に出来るかどうか分からないけど



覚悟は、しなくちゃいけないな。



「ああ。でも殺した人の事を忘れたりなんてしない。ずっと胸に留めて向き合っていく。 日本にいた頃の『人間』を忘れない為に。」



そう。もし日本に戻れたときの為に、この気持ちだけは持っていなくてはならないし、譲ることは出来ない。



「それでいい。 それじゃあ、君の魂を解放する最終段階に入るよ。」



「最終段階?」



「そう。元々この世界にいなかったカケル君は、魂をずっと心の中に閉じ込めている。

だから、それを無理やり解放してやるんだ。」



バルデの手が赤く光る。そしてそれはどんどん広がっていき、ついには直径が人の身長くらいにまで大きくなった。

それは魔法陣の様で、その陣の中に無数の知らない文字が書き込まれている。



「い、いったい何をするつもりなのかな?」



カケルは少し不安がる。

何だかこんな事昨日もあった気がする。



「ちょっと痛くなるけど我慢してね!」



やっぱりそうなっちゃうの。もうあんな苦しみを俺は味わいたくないんだけど……



「あんまり痛くしないでね……」



大きく広がった魔法陣が再び小さくなりバルデの手の平サイズにまでなる。



「は!」



バジルの手にあった魔法陣がカケルの胸へ流れ込んで来る。


や、やばい。こ、これは……




『ググァァァァーーーーーー』

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