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1章11話『ヴァント ブラック ペーパー』

机の上に次々と料理が並ばれていく。

あんまり日本では見た事のない料理ばかりだ。


だが、 いい匂いすぎる……


そういえばお昼ご飯を食べてなかったからなー。余計に食欲がそそられる。




「はい、完成!」



マジルはテーブルの前で両手を広げて言う。



料理が輝いて見てる


くっ、ダメだ。もう限界に近い。俺の腹が手が言う事を聞かなくなっていている。



「実は、いつもはここの料理人さんが料理を作ってくれるんですけど、今日はカケル様の歓迎会って事で、ここにいる皆で作りましたー。

わー、パチパチ」



いやー、全部凄いなー。俺のお母さんより料理上手いんじゃないか? どれも全部見た目が素晴らしくて、美味そうっ……で?


カケルは一つだけほかの料理と別次元な料理に気づく。それは違う意味での別次元を表す。正直あまり口にしたくないような……



何だか紙をクシャクシャに丸めて黒く焦がしたみたいな……


これって……実は美味しいのかな? 見た目はダメだけど、いざ食べてみたらめっちゃ美味かったてきな?


っていうかこれ誰が作ったのよ?

マジルはさっき見たけど普通な意味でやばかったし、セリナとシェルは揚げ物や焼き物担当じゃなくてサラダとか このお米みたいな穀物を…… って言う事はルミなのか?

やべ、ちょっと俺好みな設定してるじゃないのルミさん。

いや、でも影でセリナ達が作っていたのかもしれないな。



「うゎー、皆ありがとう。 どれも美味しそうだねー。

あと、これは誰が作ったの?」


カケルは少し笑いながら焦げた紙のような料理を指さす。



「あー、それはねー ルミが作ったんだよー。


っぷ、ははは、カケル様も酷いねー。ルミ 一生懸命作ったのにねー。」


マジルは椅子に座ったルミの頭をつんつんする。

ルミは少し頬を膨らませた。



「い、いや、別にそういう訳ではないんだ。 実は結構 一生懸命になってこういう料理を作ってくれる人……妖怪? 好きだなーと思ってさ、恋愛対象とかでない意味で。」



あはははは、ダメだったかー。 ルミが凄い睨んできてるよー。

うん。やっぱり皆料理は上手いって言われたいものだよねー。


でもやっぱそうだ。 これを作ったのはルミだったんだ。

一見、意外と家事全般出来そうな 見た目だけ若いツンツン娘が、『実は料理苦手なのー』みたいな?

うん、いいセンスだ。



「そう言うならカケル様。この料理、食べてみたらどうですか?」



あー、やっぱりそうなりますよねー。


正直あんまり食べたくない。 こういう女性も悪くないとは思うが『これから一緒に上手になっていこうねー』みたいな雰囲気で終わりたい。

いや、でも折角作ってくれたんだから 一口は食べよう。流石に一口も食べないのは失礼だ。



「うん、食べるよ。 折角ルミが俺の為に作ってくれたんだから、 食べないのは勿体ない。」


カケルは焦げた紙の様な料理が山の様に乗っているお皿を自分の前に持ってきて、大きく唾を飲む。

前もって水の場所の確認をしておこう。ヤバイと思ったらすぐに水で流し込めるように。


恐る恐る箸で焦げた紙の様な食べ物を持ち上げる。



そうだ。これはただ焦げているだけではないか。 ちょっと苦いだけだ。一瞬苦いだけ。

そうだよ、お茶に醤油と縁の振りかけを入れた飲み物程不味いものはない。あれだって頑張って200mmくらい飲んだんだ。

ちょっと焦げた食べ物一口くらいどおってことない。


い、いくんだ。食べるんだ。


口の前までゆっくり箸で持ってきて『パク』と勢い良く食べた。



「お、おー。 ルミのこの料理を見て、口にしたのは カケルさんだけじゃないですか? 私達も まだ食べられていませんし……」


「た、確かに……なかなかの根性してますね。カケル様は」



うぅっ、やばい。これやばいやつだ。 ダメだ、うぅーこれはマジでヤバイ。 あーダメだ、涙が出てくる。 ヤバイ、マジで悩殺される

だって、だってこれ。めっちゃ……








────美ん味いやんけー





全てがキラキラして見える。この黒い物体を食べただけなのに 周りが虹色に輝いて見える。


何だよこれ、何でこんな見た目からこの味が出てくるんだよ?

これあれか、セリナがあまり使わない方がいいって言っていた魔法か? ちょっと俺のご機嫌取ろうと魔法にまで手を出したのか?


あ、やっべ、もう一個欲しい。 もう一個食べたい。



「ルミさん。」


カケルは立ち上がった。そして勢いよく頭を下げ、手を胸の辺りに持っていく。



「先程のご無礼をお許しください。 そして叶うのならば、


もう一つ、頂いても宜しいでしょうか?」



「え?」


ルミの顔がほんの少し赤くなった。



初めての経験。まず私の料理を口にしてくれる事すら初めて。

褒められた。私が? 料理で? 何かの間違いだろうか。

自分の戦いの技術で褒められたことなら何度もある。飽きるほどに、腐るほどに……

でも、料理で褒められた事なんて……



「ど、どうぞ。食べてください。」


「いただきます。」


カケルはルミに一礼し、焦げた紙の様な食べ物を貪り食べる。



「カ、カケル様? そんなに無理しなくてもいいんですよ?」


マジルはカケルを心配するように言う。



無理?何だそれ、食って美味いものなのか?

ふふふ、分かっちゃいない。分かっちゃいない。


「「お前らは何にも分かっちゃいない! この料理の真髄を!この料理の素晴らしさを! お前らはこの料理すら食べていないだろう! 食ったことも無いくせに無理とかいうなー!」」



「あ、はい。 すみません。」


カケルはマジルとセリナに怒鳴りついた。

一方、セリナとマジルはそのカケルの威圧に少々引いた。


「もういい、俺がお前らに食わせてやる。」


カケルはお皿から焦げた紙の様な食べ物を手に取り、セリナとマジルの口に押し込もうとした。


が、セリナとマジルは全力で抵抗し、カケルの両手を掴む。



「カ、カケル様? さ、させないよ、させないからね。

それにね、カケル様、自分の好みを相手に押し付けてはいけないよ。その人にはその人の、妖には妖の『好み』があるのだから。

ね?そうでしょ?」


「そ、そうですよ、カケルさん。それにカケルさんが美味しいと思うのならご自分でお食べになればよろしいでしょう?

私達はこの黒くて美味しそうな料理をカケルさんに あげる と言っているのですよ。

ほら、遠慮なさらず、」




数十秒この近郊が続いた。


ちなみにルミとシェルは椅子に落ち着いて座り、マジルの作ったとても美味しそうな スープを飲んでいる。



ふ、絶対に食べさせてやる。 ここまで来たらもう美味いか不味いかではなく、食わせるか食わせられないかだ。

これはもうどちらの意地が勝つかの勝負だ。絶対に勝つ!


……だ、だが流石は『レッドソウラー』。戦争で鍛えられた力が予想以上に強い。 このままじゃ確実に力負けする。何か、何か手は……



カケルはこの部屋の中にある道具を片っ端から見て、使えそうな物を探した。だが、


見あたらねー。くそ、このまま行ったら…… 仕方がない。有効かどうかは分からないが、ここは日本に伝わる秘伝奥義で……




「お、おい 皆大変だ! 窓の向こうでカエルが空を飛んでるぞ!」


カケルは窓の外を大袈裟に見て、叫んだ。



さーどうだ、この秘伝奥義を使ったんだ。多少は動じてくれないと……困……


セリナとマジルは物凄い目でカケルを睨みつける。



あ、はい、流石に動じませんよねー。



「ふふふふふ、カケル様、 キミが前まで住んでいたところでは カエルが空を飛ぶ事が、もしかしたら 珍しかったのかもしれないけど、 ここじゃたまにある事だからねー。 別に今見なくても問題ないんだよー。」



そうきたか……


カエルが空をリアルで飛ぶとか反則だろ。 これはもう地の利としか言いようがない。

仕方がない。こうなったらヤケクソだ。 とりあえず何かで気を引こう。



「お、おい! ちょっとまて、 今そこで 鳩が飛んでたぞ!

……ん?」


カケルは痛恨のミスをしてしまった。


ヤベ、鳩が飛ぶとか普通じゃねーか。あーもうダメだ。これ以上この秘伝奥義を使っても意味がない。畜生、俺はここで負けるのか……



「え!? 嘘でしょ? どこ? カケル様、どこで鳩が飛んでたの?」


マジルは勢いよく手を離し、窓の外を見る。 それにつられてセリナも窓の外を見た。



「────ファ?」


あれ? おかしいな、鳩って普通空飛ぶよね?


……あー、あれね、そーいう事ね。 ここじゃ鳩って空飛ばないのね。

いやー、ややこしい。これ絶対に他にも色々有り得ないことが起こるよ この世界は。


っと、違う違う。こんな事考えている暇はない。


カケルは、焦げた紙の様な料理をきちんと持ち直す。



「時は来た。くらえ!『ヴァント ブラック ペーパー』(焦げた黒い紙)」


カケルはマジルとセリナの口に、焦げた紙の様な料理を突っ込んだ。


「ハンブ」


「ンムゴ」


セリナとマジルの口に焦げた紙の様な料理が入る。


「「んがぁぁぁぁぁーーーん



────美ん味い」」



マジルとセリナはワカメの様にクネクネする。



────ふ、俺の勝ちだ。

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