1章9話『新たなる生活』
「もち。 んじゃー悪いんだけどもっかいジャッジしてもらえるかな? レイミ」
カケルはレイミに向かって手を差し出す。
「はい。 それでは失礼します。」
そういいもう1度カケルの差し出せれた手を掴みスキルを唱える。
『ジャッジメント・フェイク』
カケルの掴まれていた手と周り緑色に光る。ついでに手首の血管も強く握られた。
「カケルさん、貴方はこの国に害をなそうと思っていますか?」
レイミが問う。
もしこれが心拍数で測っているなら余りに緊張はしてはいけないだろう。
そのためカケルは大きく深呼吸をした。そして呼吸を整え答える。
「いいえ、思ってません。」
光は緑色のまま光る。何も変わらず
レイミもとても集中している。 カケルを殺すか生かすかを自分が決めると思っているからだろう。 間違いが必ずないように。 針に糸を通す様に細かく繊細な力加減で……。
緑色の光がどんどん薄くなって、ついには消えていった。
「カケルさんは、嘘を言ってはいません。」
レイミは皆に向かって言う。
レイミも少し笑みを浮かべていた。いや、この場にいるほとんどの者が笑みを浮べた。中でも1番笑みを浮かべていたのは意外にもマジルだった。
この様子だとこの世界でも あまり人を殺す事は好まれないのだろう。
だが今はそういう事はどうでもいい。 今は勝利の喜び、高揚、達成感で胸がいっぱいだった。
賭けに勝った。まーもともと勝ちゲーだったんだけどね。
そしてカケルは右手を拳いっぱい握って挙げた。
「言うまでもないね。」
カケルは少し格好をつけて言う。
もともと勝ちゲーだったがとても嬉しかった。
さーて晴れて『ブラックソウラー』としてこの国にいる訳だが、これからどーしたものか……。
そのとき
「カケル様ー!」
「っとぅわ、」
カケルに誰かが飛びついてきた。
だがここにはそんな事をするヤツいたか?
いや、いるな。ノリでセリナとかがやってきそうだ。
「ってて……、って え?」
意外だ。意外すぎる。俺的には1番か2番目に有り得ないと思っていたやつだ……。
そう。カケルに飛びついてきたのはセリナではなかった。 今カケルの上にいる奴。 それは意外にもマジルだった。
「い、いきなり どうしたのマジル。」
「カ、カケル様。先程までのご無礼をお許しください。」
「…………ファ?」
「え?」
俺につられて他の皆も唖然とする。 それはそうだ。今の俺ですらマジルに抱きつかれているとは思えない。
なんだなんだこの状況。マジルが敬語? いやいや有り得ねーだろ。さっきまであんなに威圧プンプン出してたんだぜ? しかもなになに『カケル様』って……。 そんなに俺の願いを聞きたくないってこと?
カケルは、いや、この場にいる者全員がこの状況に混乱する。
「先程までは、カケル様が゛敵゛という可能性がありましたので、少しきつくあたって……」
マジルは顔を少し赤くしながらカケルの顔を見つめる。
まて、いきなり俺の心を揺さぶるな。
い、いや、俺が落ち着けばいい。そう、深呼吸だ。深呼吸。 吸ってー吐く 吸ってー吐く…………。
無理だ落ち着けねー。ダメだ、俺は向こうの世界ではあんまり女子と関わりを持たなかったから……。 くそーその影響が今の俺に……
そうだ。何か話をするんだ。 そーだなー……
「じゃ、じゃあ何であんなに威圧を出してたの? 別に疑うだけならあんなに威圧ださなくても……。」
「出来ることなら、私もこんなにきつく当たりたくはなかったのですが、私よりも位の高い人を見て……。 正直、憧れとかもあったので、それを悟られないようにと心掛けていたら 自然と……」
マジルが皆の前で カケルにきつく当たっていた理由を話している中、ルミはある事に気づく。
「ね、ねーマジル。今、カケル君のこと『私よりも位が高い』って言いました?」
「ああ、言ったよ。 あー そうか。皆には言ってなかったよねー。
このカケル様。実は『ブラックソウラー』なんだよー。」
「「えーーーー!?」」
この場にいるカケルとマジル以外の皆が声をあげた。
この戦乱の世『ブラックソウラー』という者がいるかいないかだけで そうとう国の状態が変わるのだろう。 そのためセリナとシェル、レイミから物凄いあつい視線を感じる。
「え、ちょっと待ってください。 今、カケルさんはフリーなんですよね?」
セリナは慌ただしく聞く。 別に逃げる気などないのに。
「んまー、フリーというか、この世界のどこの国にも属してないって感じかな。」
セリナの目は輝いた。だが、1番輝いていたのはマジルだった。
「で、ではカケル様、是非この『リスチニア帝国』に 是非是非カケル様のお力をお貸しください!」
マジルはカケルの両手を握って言う。
さっきとは打って変わって人気者だ。ここは忙しいところだな……。
だけど、まるで自分の家みたいだ。
別にここには 親もいない。まだ知ってる人も少ない。知ってる場所も少ない。
でも何だか懐かしい気もする。 少し賑やかで、ちょっとした揉め事があって、 でも結局すぐに仲直りできて……。
カケルはなんだか嬉しかった。
ついさっきまで、自分が何をすればいいのか、何処にいるのか、何故こんな所に来てしまったのかすら分からない自分に、こんなに楽しい居場所が出来た。
___こんな場所も悪くない……。
「先に言われちまったな。 俺の願いは、ここに居させてくれって事だよ。
それとマジル、さっきまでタメ口で話されてたのに、 急に敬語って言うのも変な感じだから タメ口に戻してくれよ。」
一瞬マジルは唖然とした顔をしたが、またニッコリ笑ってこっちを向いた。
「うん! でも『カケル様』とは言わせて?」
「ったく。しょーがないなー。」




