表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/141

78 魔界の子猫

連続投稿、二話目。

 宙に真っ暗な穴を開け、その穴に入ろうとするコドクに、人々の内の一人が、慌てて声をかけた。


「あ、あの!夜空の神様、いったいどちらへ!?」


 思わず立ち上がって、そう言うその人に、コドクは振り返りもせずに答えた。


「お掃除と選定しに、魔界に行ってくる。まぁ、そんなに時間はかからないだろうから。」


 そう言うなり、コドクは真っ暗な穴の中へ消えてしまった。


 宙に空いた穴も閉じ、その場に沈黙が降りる。

 その時、誰かが呟いた。


「あれ?ユーナ様は?」

「……あ。」





 魔界は、その名に相応しい、魔境のような世界であった。

 一言で言うなら、それは混沌。

 豪雨が降っている所もあれば、吹雪が舞っている所もある。

 木が鬱蒼と生い茂っている所、マグマが流れている所、砂漠になっている所……

 秩序などはまったく存在しておらず、魔力が荒れた、今にも崩壊しそうな世界。


 それらを眼下に収め、コドクは、空中を飛びながら目を細めた。


「なるほどな。これがあるから、どこかの誰かさんは、俺をここに呼び寄せたかった訳か。」

「な、何が「なるほどな」よ!なんで私まで連れて来るのよー!?」


 コドクの毛にしがみつきながらそう叫ぶユーナに、しっかりとコドクに巻き付いているシズクが、不思議そうに首を傾げた。


「ユーナ、あなたには翼があるのです。」

「あ、そうだったわね。

 って、違うわっ!!飛べないからじゃなくて、なんで私を巻き込んだのか、って聞いているのよ!!」

「うーん、ついで、なのです?」

「ついでで、こんな世界に連れてくるな!!」


 わーきゃー騒ぐ二人に、コドクは内心で苦笑しながら、比較的、天気と地形が落ち着いている所を探し出す。

 丁度、平原のような所を見つけ、コドクはそこに降り立った。


「さて、と。神の思惑通りになるのは癪だけど、やらない訳にはいかないからな。

 ……ん?」


 辺りを見回しながら言ったコドクの視界に、魔物の姿が映った。

 それは、茶色の子猫のような魔物だった。魔物と言っても、生まれたてか、弱い魔物なのだろう。魔力もあまり持っていなかった為、視界に入るまで、コドクも分からなかったようだった。

 その子猫が、驚いたように目を見開き、こちらを凝視している。

 それが、自分ではない誰かを見ていると気付き、コドクがその視線の先を辿ると、そこには、不機嫌そうな顔をしているユーナがいた。


「……?何よ?」


 コドクの視線に、眉をひそめるユーナ。コドクが口を開こうとした時、その猫がみゃあみゃあ鳴きながら、ユーナに飛び付いた。


「きゃっ!

 え、何?猫?って、なんで泣いてるのよ!?」


 涙をぽろぽろ零しながらユーナにしがみ付く子猫に、ユーナが困惑したように子猫を抱え直す。

 そんな様子のユーナに、シズクが目を細め、口元をニヤリと歪めて言った。


「動物虐待なのですか、ユーナ?」

「してないわよ!?」

「酷いのです、ユーナ。いくらまな板だからって、動物に当たる事はないのです……」

「言葉を変えても意味は同じでしょうが!!その事いつまで引っ張るつもりよ!?

 だ・か・ら!私は、成長途中なの!」


 青筋を浮かべるユーナを、どこか微笑ましい目で見つめる子猫。

 その子猫をじっと見つめていたコドクが、納得したように頷いた。


「おい、ユーナ。胸なんかより」

「なんかって何よ、なんかって!!」

「いや、だからな。この猫」

「ええ、どうせ私は絶壁よ!!この通り、胸なんか無いわよ!!」

「話を聞け、話を。」


 血涙でも流しそうな顔で絶叫するユーナに、コドクは困ったように笑いながら、ユーナの頭の上に、ぽんと、伸ばした尾羽を乗せた。


「その猫なんだがな。どうも、転生者らしいぞ?」

「なんで男共は、胸ばかり……え?て、転生者なの?じゃあ、つまり……」


 唖然とした表情で、子猫を見下ろすユーナに、子猫は必死に何かを訴えるかのように、前足でユーナの胸をペチペチ叩きながら鳴いた。

 それを見たシズクが、優しげに微笑んだ。


「ほら、この子も言っているのです。「胸無いよ!」って。」

「あ゛あ゛!?」


 途端、青筋を浮かべるユーナに、子猫は必死に首を横に振る。

 それらを見ながら、コドクはのんびりと呟いた。


「君達、楽しそうだね。

 ま、それならそれで、人型にした方が早いだろう。その方が、ユーナも、この猫が誰だか分かるだろうしな。」

「……いや。なんとなくだけど……分かるわ。」


 子猫を見つめながらそう言うユーナに、コドクは瞬きした。


「分かるのか?」

「ええ。多分だけど……呼幸、でしょう?」


 ユーナのその言葉に、子猫の目が大きく見開いた。

 ユーナは、微笑みながら、子猫を撫でた。


「だって、目が呼幸そっくりなんだもの。」


 段々、目が潤んでくる子猫を見ながら、コドクは頷いた。


「なるほど。親友か。なら、こっちの方がいいかな。」


 そう言ってコドクが何処からともなく取り出したのは、金色の魔石だった。

 それを見たユーナが、眉をひそめた。


「ねえ?私の間違いじゃなければ、それ、私の中にある魔石にそっくりじゃないかしら?」

「そっくりっていうか、ほぼ同じだよ。これは、俺が作った、ユーナの魔石の予備だし。」

「予備!?いつの間に……」


 呆れたように溜息を吐くユーナ。

 コドクは、そんなユーナに構わず、魔石に爪を立て、魔石を割った。

 そして、割れた魔石の小さな欠片を、ピンッと爪で飛ばす。

 その小さな欠片はまっすぐに子猫の方へと飛んでいき、まるで溶けるように子猫の中へと入ってしまった。

 余りの事に呆然とする子猫に、コドクは爪をかざした。


 コドクは、子猫の魂と、二つの魔石に意識を集中させる。

 魂を基に身体を構築し、魔石を融合させ、身体の情報を魔石に刻み込む。


 それだけの事を、瞬きする間にコドクは済ませると、途端に、子猫の身体が変化し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ