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77 檻に囚われぬ鳥

二話連続投稿です。

 あれから数日経った、お昼頃。

 俺は、怒ったユーナに嘴でつつかれていた。


「ねえ、聞いてるの!?知っているんでしょう、私が精霊界でなんて呼ばれているか!」


 足の爪でしっかりと俺を掴み、翼をばたつかせながら、怒鳴るようにしてそう言うユーナに、俺は気だるげな目を向けながら答えた。


「知っているよ。女王様だろう?」

「知ってるなら、なんで私を精霊界に飛ばしたのよ!?しかも何よ、「精霊の民に付き添ってやってもいい精霊を見つけてくれ」って!」

「いいじゃないか、お前が頼めば、喜んで従う奴らばっかりなんだから。」

「良くないわっ!!」


 そう言って、無茶苦茶につつきまくるユーナ。地味に痒くなるからやめてほしい。

 と、そんな事をしていると、俺達がいた広場に、慌てた様子の人間達が駆け込んできた。

 駆け込んで来た人間達は、俺を見るなり、土下座でもしそうな勢いで頭を下げながらこう言った。


「よ、夜空の神様!どうか、どうかプルプル様を助けてください!」


 なんだいきなり、と俺が首を傾げるが、他の奴も「お願いします!」と頭を下げるばかり。……あ、土下座してる奴がいる。

 俺がそう思いながら欠伸をしていると、俺を見たユーナが深い溜息を吐いた。

 俺は、羽繕いをしながら、ユーナに言った。


「ユーナ、溜息を吐くと、幸せが逃げるって聞いた事があるぞ。」

「誰のせいよ、誰のっ!!」

「多分、俺のせいだな。」

「自覚があるならやめなさいよ!?

 はぁ、まったく……」


 ユーナは、溜め息を吐き、人型の姿になると、憂鬱そうな顔で口を開いた。


「あなた達、いきなり頭を下げられても意味が分からないわ。

 プルプルを助けて、って、いったい何があったの?」


 ユーナの諭すようなその言葉に、一人の男性が顔を上げ、悲痛そうな表情で言った。


「それが……ユエイブワル帝国から使者が来て、宣戦布告してきたのです。」

「宣戦布告?自国の領土なのに?」


 ユーナが眉根を寄せながら、怪訝そうにそう言うと、女性が震えながら声を上げた。


「それが、魔物がいるのが気に食わないらしく……ぷ、プルプル様を、処刑するって……!」


 女性の涙声のその言葉に、ユーナは、鼻で笑いながら肩をすくめた。


「あなた達ね……そんなの、無理に決まっているでしょう?誰の子だと思っているのよ、プルプルを。

 ここにいる、ロリコンチートの子よ?」


 だから、何故にロリコン言うし。

 そう思っていると、俺の羽毛に埋もれていたシズクが、ひょっこりと顔を出した。


「ユーナ、自分が絶壁だからって、そう悲観する事はないのです。」

「誰が絶壁よ!私は……まだ、発達途中なのよ!」


 まるで、負け惜しみを言うかのように、そう叫ぶユーナ。

 シズクのその言葉に、人々も思わずユーナの胸元を見て……視線を逸らした。

 それを察したのであろうユーナの額に、青筋が浮かんだ。

 そして、キッ!と俺を睨み付けた。


「……コドク!あなたのせいよ!」

「いや、なんでだよ。そもそも、お前がロリコン言うからだろうに。」

「うるさい!それもこれも、全部あんたのせいよっ!」


 そう言いながら、俺の胸元に飛び込むユーナ。つつく代わりなのか、両手でポコポコと叩いてくる。

 シズクが、ユーナを鬱陶しいものを見るような目で見る中、俺は苦笑して、ユーナの背を翼で撫でた。


「まぁ、ユエイブワル帝国が宣戦布告してきたのは知っている。でっかい『悪意』が、こっちに迫ってきているからな。そんなもの、事前に分かる。

 事前に分かれば、影鼠を送りこんで事の詳細が分かる。確か……もう、軍隊がこっちに来ているんだっけかな?」


 俺が、首を傾げながら言ったその言葉に、人々が息を飲んだ。

 そんな人々に、俺は目を向けながら言った。


「ま、そう心配するな。ただの人間程度、プルプルの敵じゃないさ。例え相手が束になったとしてもな。」

「で、ですが……相手は、あのユエイブワル帝国ですよ?いくらプルプル様でも……」


 不安そうに呟く人々に、俺は溜息を吐いた。


「そんなに心配なら、もう一人付けてやるよ。丁度この町の守護者も必要だと思っていたからな。」


 人々が、「え?」と言うような顔をするが、俺は元々この町に居つくつもりはない。

 この町の人々は、俺に居てほしいようだが……そんなもの、知った事ではないのだ。

 だが、魔物が出るこの世界で、力のある存在は重要だ。精霊の民が強い力を持つ精霊を求めたように、この町にも力のある守護者が必要だろう。

 まぁ、その守護者の座を、人間に任せるつもりは無いが。


 俺は、爪で、空中に円を描いた。すると、円の中に、真っ暗な穴が空く。

 ……穴の中から、どこか懐かしいような……壊れた空気が漂ってくる。


 ―――帰らなければ。


 そう、思うのは、いったい誰の意思のせいなのだろうか。

 俺の魂に埋め込まれた何かが、蒼い神の魔石が……務めを果たせと叫んでいる。

 思わず、笑ってしまった。


 神というのは、本当に……ふざけていやがる。


 魂の『異物』を千切り取る。魔石の情報を強引に書き換え、その叫びを握りつぶした。

 俺の魂は、異常だ。神がさんざん俺に干渉してくれたおかげで、俺の魂は神の干渉力にめっぽう強くなっているらしい。

 だから、神の干渉など、俺はなんとも思わない。高みの見物をしながら操ろうなど、ふざけているにも程がある。


 渡さない。俺の魂も、シズクも、そして俺の守るべき者達も。

 力でねじ伏せようとするのなら、反抗してやろう。

 従わせようとするのなら、噛みついてでも逆らってやる。


 俺の邪魔を、そして、俺の家族に手を掛けようとするのなら。

 食い殺して、引き裂いてでも、押し通らせてもらおう。

 例え、神が相手でも。

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