68 淡白な殺意
明けましておめでとうございます。
新年早々、物騒なサブタイトルです。
そして、久しぶりの2話連続投稿です。
初めて作った転移装置は、問題なく起動した。
ただ、俺程の大きさのものを通すとなると、結構魔力を食うみたいだが。まぁ、その時はもうちょっと小さく……ユーナぐらいの大きさになれば大丈夫だろう。
自分の中にある無数の魔石の中から、適当な金色の魔石を選び、ちょちょいと情報を書き換える。よし、これでいい。
そんな事をしていると、俺の毛並みに埋もれるようにして巻き付いていたシズクが顔を出し、俺の前にいる星花を見つめた。
互いに無言で見つめ合う、星花とシズク。
……えっと、これは、俺はどうすればいいのかな?剣呑な雰囲気ではないから、大丈夫だとは思うけど。
すると、シズクが笑顔で口を開いた。
「私の名前は、シズク。ヌレバって呼んで欲しいの。
あなたは?」
シズクが笑顔で首を傾げると、僅かに目を見張っていた星花は、慌ててお辞儀した。
「私は、ご主人様の眷属である、星花と申します。
……遠目で拝見していましたが、昨日と比べて、随分と雰囲気が変わられましたね……?」
いまだ困惑した表情を浮かべる星花に、シズクはおかしそうにクスクスと笑った。
にしても、本当に変わったよな……前だったら、星花の事をかなり憎んでいた筈だが。
(今でも憎いのですよ?殺したいくらいに。)
と、シズクの声が、魂を通して聞こえた。
憎い、と言う割には、中々淡白な感情だな?
(そうなのです?でも、どちらにしても、彼女はもう私の敵ではないのです。
私は、ジルナのもの。そして、いずれジルナも私のものになるのです。
そして、彼女はジルナについていく事はできない。だから、少しくらいだったら許してあげよう、って思うのです。)
なんというか……その声には、余裕が感じられた。
シズクの嫉妬や焦りが無くなったのは、俺の全てを知る事ができたからなのだろう。
シズクの攻撃的な行動は、俺がシズクから離れる可能性による不安から来たものだ。つまり、その不安を取ってやれば、シズクの心に余裕が生まれる。
まあ、そう思って、魂の中にある記憶をシズクが読めるようにしたのだが……たかだか俺の記憶如きで、こんなになるとは、俺も予想外だった。
(む~!如き、じゃない!ジルナ、また悪い癖が出てるのです!)
おおっと、ごめんごめん。
まぁ、どっちにしても、仲良くしてくれるなら、俺としても嬉しい限りだ。シズクも、星花も、俺にとっては大切な存在である事は変わらないのだから。
眠っていた人々が起きた際に、転移装置の事を説明した。
人々から「流石、夜空の神様だ」と言われたが、何故に夜空?
(それは、ジルナが予言の書の中で出てくる、夜空の神だからなのです!)
予言?なんだそりゃ。
そう疑問に思って、シズクに聞いた所、どうも、俺は魔界の神様である、魔神の可能性が高いらしい。
いや、俺、魔界なんて行った事ないんだが。少なくとも、今は魔神をやるつもりはない。
ううむ、夜空、ね。
この、真っ黒な身体と、金色の瞳がそう見えるのかな?
そう思いながら、転移装置に恐る恐る入っていく人々を見ていると、呆れた様子のユーナが俺の頭にとまった。
「あなた、まーた非常識な事をやらかしたのね。
何も、こんなものを作らなくたって、あなただったらいっぺんに運べたじゃない。」
「面倒なんだよ、こんなに大勢の人を運ぶの。それに俺、これでも非力な方なんだぞ?」
「はいはいそうねー。
……馬鹿じゃないの?」
そう言って、冷たい目で俺を見下すユーナ。酷い。適当にあしらったうえに、この仕打ちである。
すると、俺の視界が綺麗な海のような青色で覆われた。
「ジルナ、私は何度も言っているのです。あなたは、決して非力なんかじゃないのです。」
「いや、これは事実だぞ?あの蠱毒の中で生き残った魔物の中では、一番俺の力が無かったんだから。」
「それはそれなのです。今は、蠱毒の中ではないのです。
ジルナ、あなたは間違い無く、この世界の中では最強なのです。あなたは、ありとあらゆる状況に対応できる力を持っているのです。
ジルナ、あなたは、自分に価値がある事を、もう少し認めなきゃ駄目なのです。」
キラキラとした瞳で、俺を見つめながらそう言うシズク。
そんな、超至近距離にあるシズクの瞳を見つめながら、俺は苦笑した。
「まぁ、人間界の中では、最強ではあるだろうさ。でも、他の世界では、分からないぞ?」
「む~!そんな事!」
「シズク。」
シズクが、俺の事を何よりも一番だと思ってくれている事が嬉しい。
そう思っていたせいか、俺の声は普段よりも温かかった。
その感情を声に籠め、言葉を出す。
「俺はね、慢心したくないんだよ。だから、俺は自分の力に関しては、この意見を変えるつもりはない。
でも、嬉しいよ、シズク。お前がそう思ってくれるのなら、俺はどんな敵にだって負けないだろう。」
俺がそう言うと、青い瞳が揺れ、すっと俺から遠ざかった。
視界に映るようになったシズクの顔は、耳まで真っ赤だった。
両手で顔を隠しながらも、その指の間から、チラチラと見てくる。愛い奴め。
すると、ユーナが「うげっ」とでも言いたげな様子で、俺達を見ながらこう言った。
「甘っ!!ねえ、ブラックのコーヒー無い?最高に苦いの!」
「この世界に、コーヒー豆なんてあるのか?」
俺がそう言い返すと、ユーナはがっくりと肩を落とすような仕草をしながら言った。
「あなた、それわざと言っているの……?
ああぁ、もういいわ。好きにいちゃいちゃしてなさいよ、もう……」
最後に、「リア充爆発しろ!」と言いながら、ユーナはどこかに飛んでいった。




