69 規格外な整地方法
皆が転移装置で転移した所は、プルプルがいる町と、コドクが最初にいた森の境目であった。
人々が話し合っていると、転移装置から、シズクと、シズクの肩にとまっている小鳥サイズのコドクが転移して来た。
ユーナは、自分と同じ大きさの、その小鳥サイズのコドクを見るや、不満そうにコドクを睨んだ。
「何それ、私に対する嫌みなの?」
自分に似た姿が嫌なのか、ありありと不満を表情に出すユーナ。気持ちとしては、自分がやった事を、兄か姉に真似されてからかわれている心境に似ているのだろう。
そんなユーナに、コドクは困ったような様子を見せた。
「いや、小さい姿の方が魔力を食わないからさ。この姿にしたんだよ。」
「ふ~ん。闇の中を移動すればいいのに、わざわざ?」
ユーナの訝しげなその言葉に、コドクは苦笑した。
「闇の中の移動もいいけどね。自分で作った神宝の具合をもう一度確かめておきたかった、っていうのもあるし、まぁ、たまにはこういうのもいいかな、と思ってさ。」
落ち着いた様子でそう言うコドクに、ユーナは、コドクと、そしてシズクを、不思議なものを見るような目で見た。
「……ねえ、あなた達、何かあった?
こう、なんて言うか……二人共、焦燥感のようなものが無くなったわよね。なんでなの?」
ユーナのその言葉に、コドクとシズクが顔を合わせた。コドクは、何処か困ったように笑い、シズクはにっこりと笑って、口元に人差し指を添えた。
「ふふふ……内緒、なのですっ!」
そう、楽し気に言うシズク。
そのシズクの悪戯っぽく笑う笑顔に、ユーナは毒気を抜かれたような様子で、「あっそ……」と溜息を吐いた。
そして、ユーナは、ふと思い付いたように、コドクへと問いかけた。
「ねえ、コドク。あなたみたいに、幾つもの姿とは言わないから、私も姿を変えるようにはできないかしら?」
「ん?まぁ、できなくはないが……そうだな、今の姿を含めて、二人分が限度だな。
それも、多分だけど、人間よりの姿になると思うぞ?」
「そう。まあ、それでいいわ。」
あっさりと承諾するユーナ。そんなユーナに、コドクは片眉を上げるような仕草をした。
「どうしたんだ、いきなり。姿を変えたいだなんて。」
コドクの問いに、ユーナはフッと笑いながら答えた。
「たまにはこういうのもいいかな、って、思っただけよ?」
ユーナのその言葉に、コドクは、思わず苦笑した。
コドクは、町の方向の逆側に存在する、自分が封印されていた所を含む、広大な森を見渡した。
「木が邪魔だな。切り飛ばすか。」
コドクは、大きな鳥の姿になりながらそう言うと、尾羽を伸ばし、魔力を流した。
尾羽が真っ白に輝き、一枚一枚の羽根が硬化していく。
コドクは、そのまま足を軸に一回転し、森に向けて伸ばした尾羽を素早く一閃した。
尾羽がぶれ、白い残光が見えるような速さの一閃と同時に、鋭い刃と化した羽根が勢いのままに抜け、回転しながら木々へと飛んでいく。
鋭い羽根によって、音も無く木が斬れていき、遅れて木々が倒れる音が聞こえてきた。
コドクは次に、闇の魔術を使い、倒木を闇の中へと引きずり込んでいく。そして、闇の中で倒木を揃えると、次々と自分の隣に、闇の中から取り出した倒木を並べていった。
コドクは、森だった場所を見渡す。そこには、運悪くコドクの尾羽に巻き込まれて死んだのであろう魔物の死骸と、無数の切株があった。
「……切株を忘れていたな。まぁ、片づければいいか。死骸もついでに。」
コドクは足を一歩踏み出し、その足から魔力を流し込んで魔術を使う。
すると、木の魔術によって切株がひとりでに動きだし、地面から抜いたその根っこを足のようにして一か所に集まった。
更に、同時に使われた土の魔術により地面が平坦になり、魔物の死体は闇の中に引きずり込まれて見えなくなってしまった。
僅か数十秒で、魔物ひしめく広大な森が、平らな更地になった。
そんな光景を見せられた人々が、唖然とした様子でそれを見ていたが、カナンやユーナ、シズクはそれをなんとも思っていないような表情で見ていた。慣れたものである。
すると、町の方から来ていたプルプルが、歓声を上げた。
「うわぁ~!お父さん、すごーい!
森があっという間に更地になっちゃったね!」
「何を言っているんだ、プルプル。お前も俺の子ならば、このくらい簡単にできないと。」
「ぷるっ!頑張る!」
プルプルが連れてきた大工達が、あんぐりと口を開けて驚いているのをよそに、そんな会話をほのぼのと交わすコドクとプルプル。親子揃って言っている事とやる事が規格外である。
すると、コドクは、ユーナに顔を向けた。
「じゃあ、プルプル達と一緒に、色々と相談しないといけない事があるから、姿を変える件については後々って事で。」
「あ、うん。そうね、ほどほどにね?」
何を相談するのか、それの察しが付いたユーナが、コドクの言葉に苦笑しながらそう返した。
(あー、あの町以上の、規格外な町ができるのね。きっと、家とかはプルプルが連れてきた人が建てるんでしょうけど……)
ユーナは、遠ざかっていくプルプルとコドクの姿(コドクの背には、ちゃっかりヌレバが乗っている)を見ながらそう思い、溜息を吐きながら、頭を抱えたのであった。




