67 転移装置
メリークリスマス!
夜が明け、朝がやって来た。
プルプルは、先に自分の町へと戻っている。教師とか、医者とか、色々と忙しいらしい。
さて、住む場所の問題は解決したが、それ以前の問題がある。
そう、この大勢の人々をどうやってそこへと連れていくか。それが問題なのだ。
まず、徒歩だが……時間がかかりすぎる。それに、これだけの大勢の人々を守りながらとか、正直言って面倒過ぎる。
影移動は無理。あれは、星花や影鼠みたいな、特別な素質が必要だし。
なら、闇は?と思うが……多分、普通の人なら発狂する。ユーナは普通に大丈夫だったけど……なんだったんだろうね?
と、いう事で、残された道は、魔術でこの大勢の入る部屋を金属で作るなりして、俺が運べばいいんだろうが……面倒だ。っていうか、嫌だ。
カナンやユーナ、シャウランならいい。無論、シズクも星花もいい。
だが、何故、こんな大勢の人間を苦労して運ばなければならないんだ?と思うのだ。
と、まあ、意地でも……という程ではないにしろ、俺はやりたくない訳で。
なので、今、俺は魔界門の前にいる。
やっぱりあったよ、この国にも。
凄いよね、これ。だって、隔たれた世界を行き来できるのだから。
だから、思うんだよな。世界を行き来できるなら、これを改造するなりすれば、同じ世界の中での行き来もできるんじゃね?と。
ただ、この魔界門も神宝らしいので、一応、神の姿になっておく。
「……ん?」
神の魔石を核にした途端、いきなり視点が低くなった。
はい?どういう事だ?
とりあえず、俺に巻き付いて寝ていた為に、空中から落ちてきたシズクを抱きかかえるようにキャッチして……気が付いた。
シズクの体が大きい。いや……俺が小さくなったのか。
自分の体を見ると、なんと人型の姿だった。まぁ、やっぱり、顔の一部分以外は鱗で覆われているけど。
にしても、シズクも良く寝ている。下半身の蛇の身体を、俺に再び巻き付けて、とても幸せそうな顔で寝息を立てていた。
愛おしさが、胸に溢れてくる。そのまま強く抱きしめたい衝動に駆られるが、今は我慢。
シズクをしっかりと片腕で抱きかかえ、空いた片腕で魔界門に触れる。
魔力を流し込んで干渉し、どんな効果があるのか、動力源は何処かを探していく。
驚く事に、動力源は存在しなかった。どうやら、周りの空気中にある魔力を吸い取って稼働しているらしい。
機能もまた、なんというか…凄く適当だ。
まず、世界に穴をあけ、魔界と接触する。
そして、最初に接触できた場所に同じ門を作り、その地点と人間界にある門との地点を繋げる。
で、終了。複雑な機構やギミックがあるのかと思えば、神の膨大な力に任せただけのものであり、要するに力任せの強引な道具。
ええぇ……正直、がっかりだ……
もっと、こう、複雑な技術みたいなのが使われていると思ったのに、全然違うっていう。
なんだよ、これなら俺でも簡単に作れるじゃん。
必要なのが、濃密で膨大な神の魔力に耐えられる素材と、『~がしたい』といった意思、もしくは願望。なので、この姿なら、今すぐにでも望みのものを作る事ができる。魔術と大して変わらない。
ん?
あれ、俺、何か忘れているような?
なんだか、最近、神宝を作った事があるような気がするんだが……ま、流石にそれは無いか。
さて、作るとしよう。
朝日が瞼を照らした眩しさで、星花は閉じていた瞼を開いた。
ユーナと色々と話し、その後眠ってしまった事を思い出した星花は、大好きなご主人様の気配が無い事に気が付き、慌てて飛び起きた。
「ご、ご主人様?何処に……」
そこまで言った時、馴染みのある魔力と闇が、何もない所から溢れ、やがて何かを地面に落とした。
星花が駆け寄って確認すると、それは見た事もないものだった。
白い台座の上に、浮かぶようにして存在する、正四面体状の黒い物体。
星花がそれを唖然として見ていると、その黒い物体に十字の線が走り、四つに分裂した。
その分裂した物体は、地面に近い所に二つ、地面から離れた空中に二つ停止する。
と、次の瞬間、その四つの物体を角とするように、物体から物体へと直線が宙へと引かれ、星花の前に四角形ができた。
その四角形の面がどんどん歪み始める。向こうに映っていた風景がグニャグニャと捩じれ、その異様な光景に思わず星花は身構えた。
だが、そこから現れたのは、星花が求めていた者だった。
歪みが無くなり、そこに映ったのは、大きな黒い鳥の姿のコドクであったのだ。
それを見た星花が、目を輝かせた。
「ご主人様!」
「ん?おお、星花か。
うん、どうやら、問題なく起動したみたいだな。」
コドクは、そう言いながら、歩いて境界を渡った。
コドクが通り過ぎると、またその風景が歪み、元の風景へと戻る。
宙に浮かんでいた四つの物体は、それを期に、役目を終えたとばかりに四つの物体が合わさって、最初の元の状態へと戻った。
星花が、それを見ながら、コドクへ問いかけた。
「ご主人様、あれは……?」
「ああ、あれ?俺が作った転移装置。」
事もなげに言ったコドクを見て、星花は、コドクがまた常識外れな事をやったという事を悟り、その目に苦笑を浮かべた。
クリスマスとか、あまり意識しないから、気付いた時にはクリスマス過ぎていたとかよくあります。(妹が「リア充死ね!」とか騒ぎ出すので、それで気付いた時もあります)




