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59 様々な好意

 ルリィドユアー国の首都に入った俺は、まず、カナンとシャウランを降ろし、次にユーナを連れて、大聖堂と呼ばれる場所へ影を伝って移動した。

 本当は、ユーナは影の中には入れないのだが……そこは、俺の作った闇の中に入れて運ぶ事でなんとかなった。

 影と闇は、違うようで似たものだ。ただ、その容量というか、性質?が違うので、影の中に入るには、特殊な能力が必要になってくる。

 影鼠や星花は、元々そのつもりで作った眷属だし、星花は、俺の身体の一部を取り込んでいるだけあって、自在に影の中を移動できるようだ。

 そんなこんなで、地下室に到着。そこにある神宝は、全て影鼠が壊していたので、精霊のユーナも問題なく入れた。……まぁ、例え神宝があろうがなかろうが、ユーナには関係なかっただろうが。


 あの神宝は、精霊だけを識別し、その力……魔力を、強引に吸い取る装置だ。

 だが、それは力の制御ができない精霊の話。

 この世界の生き物は、何故かは知らないけれど、自分の持つ魔力を漏らしている。魔力を持たない生き物はいないから、魔力の気配を察知できる俺にとっては、皆が皆、「俺はここにいるぞー!」と主張されているようなものだ。

 と、それをユーナに言ってみたら、「魔力を完全に漏らさない、あなたがおかしいのよ……」と呆れ顔で言われてしまったが……メノゥは、魔力の漏れが比較的にましだったから、実力者はできるものなのだと思っていた。

 ともかく、魔力の制御は、魔術を使う事に関しても密接に関係してくるので、カナンとユーナにはできるようになってもらったのだ。

 疑問があるとすれば、シズクの魔力を吸い取っていた神宝だが……元々、シズクの怨念のこもった負の魔力を吸い続けていたせいか、かなり歪んでしまっており、おまけにボロボロに壊れてしまっていたので、調べる事は叶わなかった。


 その後、結界を壊してさらっとシズクを助けた俺は、大神官とやらにお礼をしようと思ったのだが……。


「ジールーナー!もっとなでなでして欲しいのですー!!」


 と、まるで俺の意思を強引に自分に向けようとするような、そんな言葉をシズクに言われたおかげで、すっかり毒気が抜けてしまった。

 どうやら、復讐なんて、もうどうでもいいらしい。

 とりあえず、俺がシズクを撫でている間に、こっそり逃げようとする大神官の足に、魔力を込めて白く硬化した羽根を投擲しておく。


「ひぎゃぁああ」

「うるさいです。黙れ。」

「あああ―――」


 シズクの、手刀を模った闇が、大神官の首を切断した。更に、飛んでいった頭は、シズクの闇によって押し潰され、ぐちゃぁ、という嫌な音と共に、血と肉をまき散らして、あっけなくドロドロの肉塊と化した。

 辺りに、血の臭いが充満する。影鼠の鼻がひくひくと動き、口から涎が落ちた。


 あー。うん。まぁ、あいつを殺すも生かすも、その権利があるのは、シズクだものなぁ……。

 結界とか作るの初めてだから、その実験も兼ねて、闇で作った結界の中に、一生閉じ込めてやろうと思っていたんだけど。

 そんな事を思っていると、目をキラキラさせたシズクが、俺を見上げた。


「さぁ、これで邪魔者もいなくなったのです!ジルナ、これで、ずっと一緒……」


 俺に抱きつきながらそう言ったシズクの言葉が、不意に途切れた。

 シズクは、先の割れた舌を、口から頻繁に出し入れしながら、どんどん眉根を寄せていく。

 え、なんだ?いきなり、どうしたんだ?なんか、目からハイライトが消えているんだが……?

 困惑する俺に、シズクがゆっくりと口を開いた。


「ジルナから、他の女の匂いがするのです……。」

「女?ああ、カナンやユーナのものか?」

「誰です、それ?」


 ギョロっ!と影のある目を向け、微笑むシズク。

 あれ?顔は笑っているのに、魂は笑っていない?え、怒っているのか!?何故だ……。

 首を傾げながら、俺はシズクのその問いに答えた。


「うーん……妹、かな。血の繋がりは無いけど、俺の大切な家族だよ。」


 正直にそう言うと、シズクは目を丸くした。


「え?その、恋人とかじゃ、ないのです?」

「違うね。カナンもユーナも、俺の事は大切な家族だとは思っているだろうけど……恋愛だとか、そんな目で見た事はないだろうな。まぁ、恋愛の意味での好意なんて、俺は知らないけど。

 でも、そういう好意ではない事だけは確かだよ。」


 俺がそう言うと、シズクは眉をひそめた。


「じゃあ、もう一人は、いったい誰なのです?」

「もう一人?」

「はいなのです。なんか、一人分だけ、発情した雌の匂いがするのです!」


 そう言って、頬を膨らませるシズクを見ながら、俺は首を傾げた。

 もう一人、女性なんていたっけ?……あ。


「星花か……。」


 そう言えば、いたな。俺に凄い忠誠心を向ける、ユーナ曰くストーカーの女性型の眷属が。

 俺がそう呟くと、シズクは血走った目で俺に食いついた。


「だ、誰です、それ!?」

「俺の眷属だ。鼻から忠誠心という名の鼻血を出す、変わり者のね。

 彼女は……どうなんだろうね。忠誠の中には、好意も含まれているだろうけど、それが恋愛の好意なのかは、俺には分からないな……。」


 俺が苦笑しながらそう言うと、シズクは、どこか焦ったような顔で言った。


「そ、それで?ジルナは、どうなのです?」

「俺がどうって?……ああ、恋愛の意味での好意って事か?

 さっきも言った通り、俺は、恋愛の意味での好意は知らない。少なくとも、自分の眷属をそういう目で見ることは無いかな。

 なんていうかな……眷属は、こう、自分の子供?まあ、そんな感じなんだよ。自分の子供に欲情する親なんて、まさかいないだろう?」


 俺が笑いながらそう言うと、シズクは目を細めた。


「でも、もし、この匂いの元が、そのセイカっていう奴なら……そいつは、ジルナに欲情しているのですよ?」

「……あ。」


 た、確かに。いやでも、まさか、ね?


 ………。


 え、ええーと。

 俺、どうすればいいんだ……?

活動報告でもしましたが、仕事の都合で、来週辺りから更新速度が落ちるかもしれません。

できるだけ、更新ペースは守りたいと思います。

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