40 豪雨の模擬戦
三人称視点スタート。
とある開けた草原。バケツをひっくり返したような豪雨が地を打ち付ける中、真っ黒で巨大な鳥と、こんな雨の中でも火が消える事のない、身体が燃え盛る小鳥が向かい合っていた。
その二人を、少し離れた所で、赤色の髪の少女が見守っている。
少女の周辺だけ、何故か雨が当たっていなかった。
少女の魔術により、少女の真上に張られた傘のように固形化した空気が、雨を弾いているのだ。
ジュウゥ……と、何かが焼ける音がした。小鳥の炎がより一層燃え上がり、辺りの水分を蒸発させたのだ。
小鳥が、真っ黒な鳥を睨みながら、自らを鼓舞するかのように呟いた。
「いくわよ、コドク。今度こそ、一発当ててやるんだから!」
その呟きに、真っ黒な鳥は、目を細めて答えた。
「いつでもどうぞ。―――当てられるかどうかは、分からないけどな。」
挑発するように言った、黒い鳥のその言葉に、小鳥は身体を炎に変えた。
あれから、1年が経った。
旅をする中で、二人を鍛えてきたのだが……いや、本当に予想外の事だらけだった。
まず、カナンだが。
この1年で、急成長したのだ。色々と。
まず、幼い女の子くらいの容姿だったのが、身長が伸びて15~16歳の容姿の少女になった。実際、今年で15歳になるらしい。
何故、年に合わない容姿だったのか。それは多分、栄養失調や、睡眠不足、ストレスなんかが原因だったんだと思う。そこに、俺が霊脈の調整だったり、快適な寝床(俺)ができたりした事で、急成長した、と。
成長したのは、容姿だけではない。魔術や魔力の扱いもまた、とても上手くなった。
霊脈の調整も、もう自分だけでできるようになったし、魔力の扱いも上手くなった。
ただ、魔石を取り入れる事はできたのだが、何故か、いまいち魔石と同調できていないのが気になる所だ。俺が、神の魔石を核にするのに、魂の力が必要だったみたいに、カナンにも、何かが必要なのかもしれない。
その一方で、ユーナだが。
彼女は、魔力の扱いに関してはカナンに劣るが、魔術の才、それも、戦闘に関する魔術の才は、カナン以上であった。
魔石も、カナンが赤色の魔石なのに対して、ユーナは金色の魔石だ。まぁ、これは彼女が精霊である事も関係しているのだが……。
そんな事を考えていたら、熱線が頬を掠めた。危ない危ない。
この頃、ユーナの戦闘能力の成長が著しいのだ。魔術で防御する為の壁として出した、厚さ30cmの金属板を一瞬で融解させられたのは、記憶に新しい。
というか、今も凄い事になっている。前に一回、参考として、自分の足に魔術の強い風を当てて加速するのを見せた事があるのだが……それをユーナは、翼から炎をジェット機のように噴出させて急加速する事で、応用してみせたのだ。
舞い散る羽根は触れると爆発するし、急加速しながら、レーザーのような熱線を放ってきている。偶に死角から、ユーナ自身が体当たりしてくる事もあるのだ。
爆発する羽根とレーザーで、俺の移動できる範囲を狭め、死角から炎を纏って突っ込んでくるとは、考えたものだ。
しかも、辺り一帯を熱気で包み込む事で、上昇気流が発生し、風の魔術が使いにくくなっているというおまけ付き。
辺りが熱いせいで地味に体力を消耗するし、熱気で空間を歪め、蜃気楼のようなものを作り出して、自身の姿をずらして見せる事もしているみたいだ。
でもまぁ、最初の頃に比べれば大したものではあるが……俺には届かないな。
足元の水たまりも、沸騰して泡を噴出し始めた事だし、そろそろ終わらせますか。
俺はまず、半ば強引に魔術で風を起こし、辺りの熱気を追い払う。ついでに熱いので、足元の水たまりも冷やしておい……ん?
「……?地面が削られて、水たまりができている?
っ、羽根か!」
どうやら、爆発する羽根を使って地面を削り、降りしきる雨水を溜めて俺の足元を水浸しにしていたらしい。羽根の爆発音が、雨音にかき消されて気付かなかった。まぁ、確かに動きにくくはなったが……真の狙いは違う筈。
その途端、頭上からユーナの声が聞こえた。
「かかったわね!」
こちらに向かって、高速で降下しながらそう言うユーナ。
だが、おかしい。このままだと、俺ではなく、足元の水たまりにそのまま突っ込むぞ?
案の定、ユーナは高温の白い炎を身に纏ったまま、足元の冷えた水たまりに突っ込んだ。
何がしたかったんだ、と思う間もなく、ユーナを中心に水たまりが爆発する!
「っ!?水蒸気爆発か!!」
俺の魔術によって冷やされた水たまりと、高温の炎を纏ったユーナがぶつかり、大きい温度差によって水蒸気爆発が起きた。
予想だにしていなかった水蒸気爆発により、無防備だった俺の体が宙に浮いた。
やけにゆっくりと感じる風景の中、速度を落とさずにそのままこちらに突っ込んでくるユーナと、不意に目が合った。
その目は、勝利を確信した、そんな光を浮かべていた。
が。
「甘いわ!」
俺は魔術で足元の地面に干渉し、俺の足をめがけて石柱を突き出させた。
その石柱を足場にして、俺は宙へと飛び上がった。
「ええっ!?」
俺ではなく、突き出した石柱を貫いたユーナが、驚きの声をあげた。
確かに、鳥は一度足で地を蹴らないと、飛ぶことができない。一度宙に浮かせてしまえば、飛んで避ける事はできないだろう。しかし、ならば、足場を作ってやればいいだけの話なのだ。
「―――そこまで。」
再び加速しようとしたユーナに、カナンが静かに告げた。
カナンの手には、俺が作った、砂の落ち切った砂時計があった。
ユーナはそれを見ると、体の炎を消し、悔しげに叫んだ。
「~~~っ!ああーっもう!!あともう少しだったのに!」
戻ってきた豪雨の音を掻き消さんばかりのユーナの悔しげなその声が、辺りに響き渡った。
Q.何故、章を付けないのか?
A.勿論、面倒だから!
と、いうことで、章管理はしません。
何より、題名考えるのが面倒ですので……




