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勇者ですが何か?  作者: マイケヌ・ハクション
第1章ー勇者と女騎士ー
36/38

勇者ですが何か?(35)小さい洞窟に魔獣ですか?

 入り口にあったバッグを回収して、タロウとアイリーンは洞窟へと入っていく。洞窟は入り口付近こそ外の光で見えていたが、少し中に入るとほとんど何も見えない暗さだった。ただ、お互いの足音や風の入る音、そして小さな生き物の動くようなカサカサ音だったりが反響し合うような形で響いていた。


「......何も見えないな」


「そうね、スマフォのライト付けるから待って」


 アイリーンはスマフォを操作する。スマフォにはカメラ機能が付いており、当然のようにフラッシュ機能が付いている。そのフラッシュ機能は通常のライトとしても使えるのだ。


 スマフォから光が発せられ、スマフォを当てた所が照らされる。アイリーンは電池の残量を確認して顔をしかめる。


「まずい、電池が少ないわ」


「なら余計に急がないとな! 子どもの声も聞こえなくなってるし、結構やばいかもしれない!」


 タロウとアイリーンは早足で洞窟内を進んで行く。狭い洞窟内を進んでいく2人だったが、ふとタロウが足を止める。それに続くようにアイリーンも足を止め、2人は息を潜める。


「.....アイリーン、聞こえるか?」


「えぇ、唸り声のような......、獣が近い!」


 スマフォのライトを発してる部分を手で覆い、獣に光で場所を悟られないように、2人は慎重に歩みを再開する。すると、明らかに空気の流れが変わり、2人は警戒を強める。広い空間に出たのだ。

 スマフォを覆ってることにより、光は奥までは届いておらず、正確な位置関係や空間内の形は分からないが確実に獣がいる。それだけは流れる風と共に匂い立つ獣の匂いで察知することができた。

 そして匂いとともに唸り声もまたはっきりと聞こえる。そのさらに奥の方から微かな息遣いも聞こえた。


「......まだ生きてる!」


 微かに聞こえる子どもの声を確認し、アイリーンはタロウに目配せする。タロウもまた小さき頷き、魔法のバッグの中から剣を抜き出す。


「一気に行くぞ!」


 タロウの言葉を合図にアイリーンはスマフォのライト前方に向けた。タロウはその光をめざして飛び出し、剣を振るうが、

獣はタロウが近づいてきていることに気づき、素早く横に飛び退く。

 その獣を光の中から逃さないようにライトを当て続けるアイリーン。獣は四足歩行で焦茶色の毛並み、そして特徴的な2本の角を口元に生やした魔物「レオベア」だった。


「レオベア!? こんな森になんでいるわけ!?」


 アイリーンはレオベアの存在に驚きつつも、姿を逃さないようにライトを当て続ける。そしてタロウもまたレオベアへと剣を振っていく。レオベアは獰猛で力強くその上俊敏さも併せ持つ魔物。真正面から挑むタロウの剣は空を切る。


「グォオア!」


 レオベアは咆哮とともにタロウへと飛び掛かる。


「くっそ!」


 タロウは咄嗟に左手を前に出して呪文を唱える「“バーン”!」

 次の瞬間、タロウの伸ばした左手から火球が飛び出しレオベアにぶつかる。レオベアはそのまま壁に叩きつけられて地面へと崩れ落ちる。


 それを見たアイリーンが飛び出し、大きすぎる振りかぶりで剣を振るう。怯んでいたレオベアに見事の身体に見事直撃してそのままレオベアは息絶えた。


「はぁ、危なかった」


 タロウはふぅっと息を吐きながら額の汗をぬぐう。


「タロウ! 子どもは!?」


 アイリーンに言われてタロウは奥の方を注視する。そこには小さく(うずくま)っている男の子が啜り泣いていた。タロウは男の子前まで行き、膝をおろす。


「もう大丈夫だ、兄ちゃんが助けに来た」





「とりあえず、擦り傷だったりはあるけど、他に大きな怪我はなさそうだな」


 洞窟から出たタロウとアイリーンは、男の子の様子を確認して何故洞窟に入ったのかを聞くことにした。


「……今日は、お母さんの誕生日なんだ」


 男の子はぽつりと呟いた後、少しずつ経緯を話し始めた。


「僕のお母さんは療養所で介護の仕事をしているんだ……、いつも忙しそうで……、だから、お母さんの好きな花を見つけてプレゼントしようと思ったんだ……」


「偉いわね、お母さんもきっと喜ぶわよ!」


「ところで、名前はなんて言うんだ? お兄ちゃん達に教えてくれよ」


「僕はチックって言うんだ」


「チックか! 俺はタロウで、この姉ちゃんはアイリーンな! 剣持ってるけどまともに振れないどうしようもない残念剣士さ!」


「おい? お漏らし勇者、今からでも叩っ斬るわよ?」


 3人は和気あいあいと話しながら、チックの暮らしている村を目指した。


「ところで、プレゼントの花はあそこの洞窟にしか咲かないの? 1人だと魔獣がいなくても危ないわよ?」


 アイリーンの質問にチックは頷いた。


「うん、お母さんの好きな花がお花屋に置いてなくて、どうしようか迷っていたら1人のおじさんが洞窟にあるよって教えてくれたんだ、でもおじさんは忙しくて、道だけ教えてくれた後すぐに行っちゃったんだ」


「どんなおじさんだったんだ?」


「うーん、フードを被ってて顔までは分からなかったんだ……」


 タロウとアイリーンは顔を合わせる。本来レオベアは岩山や、火山の付近など荒れた土地に生息している。

しかしそんなレオベアが何故か森の中の洞窟で現れた。何らかの意図を持ってレオベアを連れてきたものがいるのかもしれない。


 2人は何か不穏なことが起こっているのではないかと、辺りに気を張りながら歩みを進めた。




 だが、2人は気づかない。村へと歩く姿を、遠く後ろから見ている者がいることをーー

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