【第6章】第12話:環境親和性と、白亜のフレームワーク
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三神の力を借り、計り知れない価値を持つインフラ「神の湯」を完成させたフォージ。
今回はその極上の源泉の上に、いよいよ拠点となる「旅館の建物」をロールアウトしますが……。
黄金の輝きを放ち、絶妙な温度で湧き出し続ける『神の湯』。
俺と律は、すっかり浄化され整地された岩山の中央に立っていた。
「最高のインフラは整った。次は上物の建築だ。弦、そっちのコアに貯まっているDPを、俺の構築権限に回してくれ」
『御意。現在の全DPリソース、マスターのシステムへ一時的に譲渡いたします』
直後、俺の視界の端にポイント残高が表示された。
これを使って、俺のイメージを現実の物質として出力する。
『マスター! いよいよですね! 建物の外観モデルはいかがなさいますか!? この世界で一般的な、重厚な石造りの洋館風にしますか?』
脳内でゼノンが尋ねてくるが、俺は静かに首を振った。
「いや、様式は絶対に『和』だ。俺の趣味というのもあるが、システム的なコストの話でもある」
『システム的なコスト、ですか?』
「ああ。ダンジョン構築の基本だ。豊かな森林に灼熱のマグマダンジョンを作ろうとすれば、環境を上書きするための莫大なDPを消費してしまうだろう? それと同じだ。この温泉と岩山の環境に異質な洋館を建てるより、親和性の高い『和風の城郭』をデプロイした方が、DP消費を劇的に抑えられる」
『なるほど! 環境親和性によるコストカットですね!』
俺は両手を広げ、DPを消費しながら、脳内の設計図を空間に描き出していく。
「俺の故郷にあった、美しき白亜の城郭。難攻不落を誇った漆黒の山城。優美な曲線を描く寺院の屋根。……それらのいいとこ取りをした、最強の要塞旅館だ。――再錬!」
俺の号令と共に、大地が震えた。
DPが眩い光の粒子となって空間を埋め尽くし、瞬く間に巨大な構造物を編み上げていく。
天を突くような堅牢な石垣が組み上がり、その上に幾重にも重なる美しい瓦屋根が広がる。壁面は輝くような真っ白な漆喰で覆われ、異世界の住人からすれば全く未知の、しかし環境と完璧に調和した美しき『城』が出現した。
「な、なんと……。見事な威容です。ですがマスター、これは……」
呆然と城を見上げていた律が、少しだけ首を傾げた。
その反応も無理はない。
「ああ。外郭だけを先行して作った。中身の客室や内装は、まだ空っぽの仕切りがあるだけだ」
俺は笑いながら、城の入り口へと視線を向けた。
「今頃、ルナが一生懸命ダンジョンに潜って、この拠点のためにDPを稼いでくれているんだ。俺が全部作ってしまったら、あいつの頑張る理由がなくなってしまうだろう? 内装は、ルナが持ち帰ったDPを使って、あいつと一緒に完成させるのさ」
俺の言葉に、律の冷たい瞳に微かな温もりが宿った。
「……マスターは、論理の中に、確かな情をお持ちなのですね。素晴らしい拠点になりそうです」
「ただし、一つだけ例外がある。弦、城の最上階の天井裏……外からは絶対に構造上見えない位置に、俺専用の隠し部屋『管理者領域』を設置した。そこだけは俺の持ち出しで完全に構築済みだ」
『……表向きは優美な旅館。しかしその実態は、いかなる外敵も寄せ付けない難攻不落の防衛要塞であり、我々の真の目的を隠蔽する情報統制の要。……マスター、完璧な設計です』
地下の弦からの感嘆の声を聞きながら、俺は見事な白亜の城郭を見上げた。
ルナが帰ってくるのが、今から楽しみだ。
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【システム稼働状況:AR-09拠点開発フェーズ】
・拠点名称:未設定(仮称:白亜の城郭)
・インフラ:『神の湯』正常稼働。湧出量・温度・薬効共に期待値通り。
・外郭構造:ビルド完了。耐魔法・物理障壁正常。
・内部区画:未構築(リソース待機中)。
【ユニット稼働ログ】
・ルナ:外部ダンジョンにてリソース(DP)収集任務中。現在、周辺Bランクダンジョンの30%を制圧。
・奏&響:クサーツヴェップ・アリーマ中央区にて「競合宿の接客レベル」をベンチマーク中。
・紬&栞:同街商業地区にて「サプライチェーン」および「不穏な噂」のパケットを収集・インデックス化中。
・律:AR-09拠点にて、初期投資費用と将来ROIの再計算に従事。
・弦(地下):『原初の魔力炉』へのレジストリ・シャフト、深度300まで掘削完了。
>> 警告:内装構築のためのDPが不足しています。サブマスター(ルナ)の帰還を待機中……。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
洋館ではなく和風の城を選んだ理由は、フォージの趣味だけでなく「環境親和性によるDPの節約」という合理的なロジックがありました。
そして、あえて内装を空っぽにして妹の帰りを待つフォージ。PMとしての冷徹な計算と、家族への温かい情が同居する彼らしい拠点作りです。
もちろん、自身の秘密基地「マスター・サンクタム」はちゃっかり完成させています(笑)。
次回は、ここで働く「スタッフ」たちが続々とデプロイされます。
引き続きお楽しみください!




