【第5章】第5話:現地視察(フィールドワーク)と、黄金の霊泉
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料理長から得た情報をもとに、北の霊峰の麓「クサーツヴェップ・アリーマ」へと向かったフォージとルナ。
今回は、プロジェクトの疲れを癒やす極上の温泉回……からの、急展開です!
王都の北門を抜け、緩やかな山道を登ること数時間。
俺とルナは、山間に強烈な湯けむりを立ち上らせる、異様な熱気に包まれた集落へと辿り着いた。
「わぁ……お兄様、あちこちから白い湯気が噴き出していますわ!」
「ああ。どうやら温泉街特有の地熱《環境エネルギー》が、街全体を覆っているようだな」
石畳の坂道を登っていくと、街の中央を貫くように設置された巨大な木製の樋が見えてきた。
そこには赤や青、白濁した泥など、およそ自然界のものとは思えない極彩色の熱湯がドバドバと音を立てて流れ下っている。
その樋の先にある立派な構えの公衆浴場の入り口には、堂々たる筆致で『赤銅の湯』と刻まれていた。俺たちは受付で銀貨を払い、男女別の入り口で一時解散した。
脱衣所で装備を外し、浴場へ足を踏み入れる。
そこに満ちていたのは、血のように赤褐色に濁った熱い湯だった。俺はゆっくりと肩まで湯に浸かり、思わず深い吐息を漏らした。
「……ふぅぅっ。こいつは、たまらないな」
鉄分と塩分をたっぷりと含んだ赤銅の湯が、テストプレイ(廃坑探索)で酷使した全身の筋肉に染み渡っていく。
あまりの心地よさに目を閉じていると、脳内に三柱の神々からの通信(念話)が入った。
『ガッハッハッハ! なんという凄まじき熱と圧力だ! この赤銅の湯に溶け込んだ鉄と塩が肌を覆い、体内の熱を逃がさぬ強固な鎧となっておる! 芯まで温まるとはこういうことか!』
『ええ。血の巡りが劇的に改善され、疲労物質が瞬時に浄化されていくのが分かります。それに、あの蒼玉の湯や白濁した泥の湯は、肌の古い角質を削ぎ落とし、傷を癒やす凄まじき殺菌力を持っていますね。実に理にかなった素晴らしい霊泉です』
『……俺は炭酸の湯が良いと思う。泡が皮膚から入り込み、血管を広げることで魔力《血液》の循環を最適化している。完璧なリカバリー設備だ』
神々もこの『クサーツヴェップ・アリーマ』の物理的な効能を大絶賛している。
確かに、特別な魔法の力があるわけではないが、温泉としての基礎スペック(泉質と効能)は最高だ。仮宿を出て、この辺りに長期滞在用するのも悪くないかもしれない。
神々との『温泉ミーティング』を終え、十分に温まった俺は湯から上がった。
待ち合わせの休憩処に向かうと、そこにはすでにルナの姿があった。
俺は一瞬、足を止めて息を呑んだ。
「お兄様! お風呂、すごく気持ちよかったですわ!」
駆け寄ってくるルナの銀色の髪は、湯上がりでほんのりと艶を帯びている。
白磁のような肌は上気して桜色に染まり、元々Sランク級だった彼女の美貌は、温泉のバフ(効能)を受けて比喩ではなく文字通り『女神のような輝き』を放っていた。
「……ああ。ルナのその輝きを見れば、この温泉の品質は証明されたようなものだな」
俺はポカンとするルナの頭を優しく撫でた。
お湯は最高だ。環境もいい。ルナも喜んでいる。候補地としては満点だと言っていい。
満点だと言っていいのだが――。
「…………」
俺は無言のまま、巨大な木製の樋と極彩色の湯が流れる異様な街並みと、横で微笑むルナを交互に見つめ、静かに息を吸い込んだ。
「ルナ、少しここで休んでいてくれ。俺はちょっと、神様と『緊急の儀式』をしてくる」
「はいっ、お兄様!」
俺は誰もいない通路の隅へと移動し、虚空(システム空間)に向かって鋭く指示を出した。
「ゼノン。章を区切るぞ」
『イエス、マスター! スタンバイしています!』
「よし。……緊急会議だ。システム・ポーズ!」
俺の視界はふたたび、真っ白なメタ空間へと切り替わっていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
極上の「赤銅の湯」を堪能し、湯上がりのルナの輝きも確認して、新居の候補地としては文句なしの満点……のはずなのですが。
なぜかフォージは無言になり、突然の「システム・ポーズ」を発動して章を区切ってしまいました!
お湯も環境も最高なのに、いったいフォージは何を考え、なぜ緊急会議を開いたのでしょうか……?(勘の良い読者の皆様なら、前話の奇妙な街並みでお気づきかもしれませんね!)
次回は第5章の締めくくり、【アフタートークルーム】です!
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