【第4章】第10話:アクセス制限と特権通行
いつもお読みいただき、ありがとうございます!第4章・第10話です。
ついに目的地の「北の廃坑」へと到着したフォージとルナ。
しかし、そこにはRPGのお約束とも言える「通せんぼ」イベントが待っていました。
一般冒険者たちが足止めを食らう中、フォージが取り出したのは……!?
北の廃坑の入り口は、俺が想像していたような「不気味で誰も寄り付かない無人の穴」ではなかった。
巨大な岩肌に開いた大穴の周辺には、ギルドが設置したと思われる立派な管理小屋や、素材の簡易換金所まである。本来なら、初級から中級の冒険者たちが鉱石や魔石を求めて集まる、人気の稼ぎ場なのだろう。
しかし現在――その大穴の入り口には物々しい木のバリケードが築かれ、完全な『立ち入り禁止』状態になっていた。
「おい、いつになったら中に入れるんだよ! こっちも日銭を稼がなきゃならねえんだぞ!」
「だから何度も言っているだろう。下層で異常な魔力反応が発生し、負傷者が出たんだ。現在はギルド長の権限で『緊急封鎖』されている!」
警備員が声を張り上げ、不満げな十数人の冒険者たちを押し留めている。
なるほど、障害発生に伴う緊急メンテナンス中というわけだ。
「お兄様。なんだか皆さん、ピリピリしていますわね……」
「ああ。だが、俺たちにとっては好都合だ」
俺はルナを連れて集団を掻き分け、まっすぐにバリケードの警備員へと歩み寄った。
「あん? なんだお前ら。聞いてなかったのか、今は緊急封鎖中で――」
苛立ったように振り返った警備員に対し、俺は無言で懐から一枚の羊皮紙を取り出し、スッと提示した。昨夜ガランド氏から直接受け取った『特別調査依頼書』。王都ギルド長の正式な署名と焼印が押された、絶対の通行証だ。
「なっ……こ、これはガランド支部長の直筆サイン!? 特別調査の依頼だと!?」
「ああ。ギルド長からの直命だ。内部の異常を調査しに来た。通っても問題ないな?」
俺が静かに告げると、警備員の顔色がサッと変わり、慌てて背筋を伸ばして敬礼した。
「は、はいっ! 失礼いたしました! すぐにお通ししろ!」
警備員たちが慌ただしくバリケードを開ける。周囲の一般冒険者たちが「あいつら何者だ!?」「あんな無骨な鉄剣一丁で……!?」とどよめくのを背に受けながら、俺は特権(Adminパス)を使って堂々と非常線を越えた。
俺たちは松明に火を灯し、ひんやりとした冷気が漂う暗い廃坑の奥へと足を踏み入れた。
『マスター! 前方約三十メートルの地点に、複数の動体反応を検知!』
ゼノンのアラートと共に、暗闇の奥からチチチチッ、という不快な鳴き声が響く。
現れたのは、犬ほどもある巨大な蝙蝠の群れだった。しかしその目は異常な魔力に当てられたように血走っている。
『チッ。なんだこのヒョロっちいネズミの親玉は。こんなのお前らの準備運動にもならねえぞ、フォージ』
(トール様か。……まあ、そう言わずに。初陣のテストにはちょうどいい)
「お兄様、来ますわっ!」
蝙蝠たちが牙を剥き出しにして、弾丸のような速度で襲いかかってくる。
俺は小さく息を吐き、静かに鉄の片手剣を正眼に構えた。こんな序盤の相手に、限界の集中など必要ない。
「ルナ、右の三体は任せる。俺は左だ」
俺は迫り来る蝙蝠の軌道を冷静に見極め、最小限の歩法で身体を半身に開いた。
長年培ってきた剣術の真髄は、極限まで無駄な力を削ぎ落とすことにある。魔法のバフも、過剰な筋力もいらない。相手の運動エネルギーを利用し、的確なタイミングで刃の「点」を置く。
――スパンッ!
すれ違いざまに放たれた、力みのない一閃。
それだけで、巨大な蝙蝠は真っ二つに両断され、断末魔を上げる間もなく地面に転がった。
「すごいですわ、お兄様! 魔法も使わず、あんなに綺麗な太刀筋で……!」
「よそ見をするなルナ、お前の前にもいるぞ」
「あっ、はいっ! えいっ!」
ルナがレイピアを突き出すと、彼女の膨大な魔力が乗った一撃は、いとも容易く残りの蝙蝠を穿ち抜いた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
一般の冒険者たちが足止めを食らう中、ギルド長の直命で堂々と封鎖線を越えていくフォージたち。
そして始まった初陣! 神様からは「準備運動にもならない」と呆れられつつも、フォージの無駄のない剣術とルナの魔法剣で、危なげなく突破していきます。
しかし、ここは異常事態が起きている廃坑。
果たして、このままスムーズに進むのでしょうか……? 次回をお楽しみに!
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