【第4章】第7話:AIの推奨タスクと、完成品(パッケージ)の拒否
いつもお読みいただき、ありがとうございます!第4章・第7話です。
前回、フォージによる「寝る前5分の内なる対話」の特訓で、焦りやプレッシャーに縛られていたルナの心も、少しずつ落ち着きを取り戻し始めました。
そして一夜明け、いよいよ王都での本格的な活動がスタートします!
ギルド長ガランド氏から受け取った前金を手に、二人が最初に向かうのは……やはりRPGの基本にして最大のワクワクイベント、あの場所です!
窓から差し込む柔らかな朝の光と、遠くから聞こえる王都の活気ある喧騒で、俺は気持ちよく目を覚ました。
ギルド手配の中級宿屋のベッドは適度な反発力があって素晴らしい。昨夜の特訓で心地よい疲労を感じていたルナも、隣の部屋でぐっすりと眠れたはずだ。
大きく伸びをして身体のこわばり(バグ)を抜いていると、脳内で元気な声が響いた。
『おはようございます、マスター! 本日のバイタル、オールグリーンです! いよいよ王都での本格的な活動開始の朝ですね。今後のプロジェクト進行について、以前保留にしていたタスクの再確認をお願いします!』
視界の端に、見慣れた半透明のシステムウィンドウがポップアップする。
そこに表示されたのは、以前、神々との対話を経てシナリオが最適化された直後に、ゼノンが提示してきた『3つの選択肢』だった。
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【AI推奨の次期課題タスク】
▶ 選択肢1:新たな仲間を導くため、ギルドで情報(再錬の手がかり)を探す
▶ 選択肢2:己の枷を外すため、強敵を求めて実戦(レベルシンク解除)を行う
▶ 選択肢3:共に成長する器を求め、武器屋へ向かう
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『マスター! 今度こそ選んでもらいますよ! ズバリ【選択肢3】ですよね! ここはやはり、冒険の基本である初期装備の調達から始めるべきかと!』
(……ははは、推してくるねー)
『推してくるとは何ですか! ガランド氏から北の廃坑の調査クエストを受注し、前金という名の潤沢な予算も獲得しました。現状、ルナ様もマスターもギルドの備品の木剣や初期装備しか持っていません。未知のエラーが潜む廃坑へ向かう前に、適切なハードウェア(武器)を調達するのは論理的な最適解です!』
(確かにな。雷神トールにも『純粋で頑丈な鉄の塊を探せ』と言われている。そろそろメイン武器が欲しいところだ)
俺はベッドから起き上がりながら、小さく頷いた。
(よし、今日のタスクは【選択肢3:武器屋での装備調達】で確定だ。ルナを起こして、まずは朝飯を食いに行こう)
『了解いたしました、マスター! 武具街へのナビゲーションを準備しておきます!』
身支度を整えて部屋を出ると、ちょうど隣からルナが出てくるところだった。
特訓の成果か、彼女の強大すぎる魔力も昨日に比べて随分と穏やかに(安定して)身体に馴染んでいる。
「おはよう、ルナ。さあ、朝飯を食ったら出かけるぞ。今日はいよいよ、俺たちの相棒になる『武器』を買いに行く」
「はいっ! わたしとお兄様の、新しい武器ですね!」
かくして俺たちは、ガランド氏から受け取った前金(銀貨五十枚)が入った革袋を鳴らしながら、王都の武具街へと向かった。
◇ ◇ ◇
武具街は、朝からカンカンと鉄を打つ小気味よい音が響き、熱気と油の匂いに満ちていた。
ゼノンの案内に従って『黒鋼の金床』という大きな武器屋に入ると、ルナが目を輝かせてショーケースの剣を指差した。
「わぁ……! すごいですわ、お兄様! あそこの剣なんて、柄に綺麗な宝石が埋め込まれています!」
「いらっしゃい。おや、お目が高い。それは微風の魔石が組み込まれた『風断ちのレイピア』だ。駆け出しから中堅まで幅広く使える逸品だよ」
奥から出てきたのは、目利きの確かな商人といった風情の店主だった。ルナの光り輝くような見目麗しさに、店主の顔も自然と綻んでいる。
「素晴らしい剣ですね。店主、よろしければ裏庭で妹に少しだけ試し振りをさせてもらえませんか?」
「お安い御用だ。お嬢ちゃんみたいな別嬪さんに持ってもらえりゃ、剣も喜ぶってもんさ」
裏の試練場に出たルナは、嬉しそうにレイピアを構え、何度か空を斬った。
シュンッ! と刃が空気を切り裂くたびに、心地よい微風が巻き起こる。
「すごいですわ、お兄様! とっても軽くて、剣の方から手を引いてくれるみたいに振りやすいです!」
「へへっ、だろ? うちの専属の職人が打った自信作だ」
ルナの弾むような感想に、店主が誇らしげに胸を張る。
俺もレイピアを受け取り、軽く振らせてもらった。
……うん、確かに素晴らしい。重心のバランスが完璧で、微風の魔力が太刀筋を綺麗に補正してくれている。ユーザー(使い手)のことを考え抜いて作られた、美しく洗練された剣だ。お世辞抜きで賞賛に値する。
だが――俺が求めているのは、こういう『完成品』じゃない。
最初から特定の魔法(機能)が組み込まれているということは、それ以上の拡張性がないということだ。誰かの手垢がすでに書き込まれている武器では、俺やルナの規格外の魔力を流し込んだ瞬間に、容量オーバーで内部衝突を起こして自壊してしまう。
それに何より、予算の問題がある。
「申し訳ない、店主。俺の妹には少し分不相応な名剣だ。それに、俺自身の特殊な魔力だと、この繊細で完璧な付与魔法と反発してしまって、最悪の場合、この名剣を内側から壊してしまうかもしれないんだ。相性が悪かった」
「ほう……まあ、この剣の良さが分かる奴に壊されちゃ、こいつも可哀想だ。今回は縁がなかったってことだな」
店主は嫌な顔一つせず、レイピアを大らかに受け取ってくれた。
「ルナ。お前専用の最高の武器は、俺が後で必ず誂えてやるからな」
「はいっ! ルナ、既製品ではなく、お兄様が手掛けてくださる武器のほうがずっとずっと嬉しいですわ!」
俺は店主に深く頭を下げた後、一つ質問を投げかけた。
一切の魔法付与も施されていない純度100%のインゴットや、それを打ってくれる職人を知らないか、と。
「なるほど。あんた、素材から自分で鍛え上げようってのか。……この通りをずっと北に抜けた先に、偏屈なドワーフがやってる『炭まみれの金床』って工房がある。あそこなら、あんたの無茶な注文にも応えてくれるかもしれねえぜ」
最高の情報だ。
俺たちは店主に礼を言い、次なる目的地――ドワーフの工房へと歩みを進めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ついに王都での武器探しがスタート!
しかし、フォージは店主絶賛の「風断ちのレイピア」をあっさりと辞退してしまいました。
彼が求めているのは、すでに誰かの魔法が組み込まれた「完成品」ではなく、自分たちの手でどこまでも拡張していける純粋な「器」だからです。
そして、兄の手作り武器を心待ちにするルナ。二人の信頼関係は今日も盤石です。
次回、いよいよ偏屈ドワーフの工房へ! そこで二人が出会う「素材」とは……?
「フォージのこだわりカッコいい!」「お兄様大好きなルナ可愛い!」と思っていただけましたら、ぜひ下の【☆】から評価(RPカンパ)をお願いいたします!




