【第3章】第6話:神への3つの願い(要件定義)と、完成されたロードマップ
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
ルナに神々を紹介し、見事に「メインクエスト」をシステム側に定義づけたフォージ。
しかし、彼の「ゲームバランス調整」はまだ終わりません。
ただ強くて無双するだけでは、良質なゲームとは言えない。
エンジニアとして、そしてゲーマーとして、フォージが神に願った「3つの要求」とは?
(第1話のアップデート通知の伏線も、ここでついに回収されます!)
「雷神トール様、賢者アルバス様、戦神オルステッド様。どうか、我々の願いをお聞き届けください」
『ほう? 申してみよ』(アルバス)
「先ほどルナにも申したように、これから立ち向かう脅威に対し、我々には個人の力(将)ではなく、集団の力(集)が必要です。どうか、同志を集め、力を束ねるための術……その案をお授けください」
『……ふむ。ただ力で従えるのではなく、絆として束ねる力か。よかろう。ならばお前たちには、万物を新たな形へと造り変え、魂を導く【再錬】の可能性を与えよう。それをどう開花させるかは、お前たち次第だ』
アルバスが、深く頷きながら厳かに告げた。
(よし、これで第一の拡張機能、【再錬】スキルの取得フラグが立った!)
「ありがとうございます。……そして、もう一つ。この国に来て、先ほどのギルド長との立ち合いで学びました。我々はまだ、己の力に振り回されています」
「お兄ちゃん……」
「学ぶべき過程があるのに、それを飛ばして強くなってしまった。このままでは、真の脅威には届きません。それに――」
俺は言葉を区切り、より真剣な声色を作った。
「昨日はギルドで仮の魔力測定を行っただけですが、明日には正式な『クラス解析』が控えています。今の我々の異常な力が露呈すれば、不要な混乱を招き、真の敵(影の宰相)に警戒される恐れもあります」
「あっ……そっか。今のわたしたちの力、普通じゃないもんね……」
ルナも納得したように頷く。
「ですから神々よ……どうか明日までに一旦我々の力を世間に馴染むよう抑え込み、さらなる高みに上るための試練をください」
『……ッ!』
俺の言葉に、戦神オルステッドが目を見開いた。
『凄まじい力を持っていながら、それに溺れず、己の未熟を悟り、さらには敵を欺くための『枷』を望むというか……! 見事な武の精神、そして知略だ! よかろう、俺がお前たちの身に余る神威を封じ、世を欺く『仮の姿』まで抑え込もう。激戦の中で己を磨き、その枷を自らの力で打ち砕いてみせよ!』
ズォォォン……! と、俺とルナの体に重厚な力がのしかかり、暴走気味だった魔力がピタリと適正値(Bランク相当)に最適化される感覚があった。
(完璧だ……。これで序盤から強すぎるという致命的なバグを回避し、明日ギルドで能力値を開示して偽装するための強固な理由付けもできた。強敵と戦いながら成長するという王道の進行計画の復活だ)
「そして最後に。我々に必要な武器は、我々と共に成長する武器です」
『む? 俺がとびきりの神剣を授けてやろうかと思ったが……違うのか?』(トール)
「はい。最初から完成された聖剣や破邪の剣ではありません。我々の戦いを学び、我々と共に成長する武器。……そういった『器』を得ることは可能でしょうか?」
そう。出所不明の最強武器などいらない。
俺が欲しいのは、俺自身がコードを書き込める空の記憶媒体だ。
『ガッハッハッハッ!! 気に入ったぜフォージ! 出来合いの伝説なんぞに頼らず、テメェらの手で伝説を打ち鍛えようってんだな!』
トールが腹の底から愉快そうに大笑いした。
『いいだろう! ならば街へ行け! 余計な魔法や飾りが一切ねえ、純粋で頑丈な鉄の塊を探すんだ! そこに俺たちの力を少しずつ馴染ませ、テメェらの魂と共に鍛え上げてやれ!』
「感謝いたします。……行くぞ、ルナ。神々が我々の進むべき道を示してくださった」
「うんっ! わたし、お兄ちゃんと一緒に、一歩ずつ強くなっていくよ!」
ルナが満面の笑みで頷いた。
(よし……ゼノン。お膳立てはすべて整った! 今こそここで、例の新機能だ)
『了解です、マスター! 今朝のシステムアップデートで追加された【推奨選択肢表示機能】をコールします!』
ゼノンの弾んだ声と共に、視界の端に半透明のシステムウィンドウがポップアップした。
========================================
【AI推奨の次期課題が生成されました】
▶ 選択肢1:新たな仲間を導くため、ギルドで情報(再錬の手がかり)を探す
▶ 選択肢2:己の枷を外すため、強敵を求めて実戦(レベルシンク解除)を行う
▶ 選択肢3:共に成長する器を求め、武器屋へ向かう
(※どのストーリーから始めても、メインシナリオの進行に支障はありません)
========================================
俺は深く、安堵の息を吐いた。
やったぞ。今朝までは「次の目的:なし」だったスカスカでバグだらけのシナリオが、ついに「どこから遊んでも破綻しない」完璧な王道オープンワールドの進行計画としてシステム側に認識されたのだ。
俺たちが力強く大通りへと歩み出したその直後、裏側の局地通信で、ゼノンの歓喜に満ちた念話が爆発した。
『マ、マスタァァァーーーッ!! 凄すぎます!!』
「何がだ?」
『とぼけないでください! 今のロールプレイによる【過去ログの動的生成】と【新規要件定義】……マスターがどれほど高度な伏線回収と仕様調整を行ったか、私には分かっていますよ!』
ゼノンが興奮気味に、空中に一つの長大なリストを投影した。
========================================
【マスターによる設定統合の成果】
■ 疑問点①:なぜ王都一番の安宿に泊まっていたのか?(資金不足バグ)
→【解決】街の復興支援に全額寄付した感動エピソードを生成し、勇者の高潔さとNPCの好感度フラグを獲得。
■ 疑問点②:なぜギルドカードがない+突然「極東の剣技」を名乗ったのか?
→【解決】遠方(極東)から魔王の情報を集めながら長旅をしてきたため、王都のギルドに登録する暇がなかったという行動履歴を確立。
■ 疑問点③:なぜ神様が3柱もまとめて出現したのか?(過剰リソース)
→【解決】世界の裏で暗躍する『影の宰相』を検知し、神が直接干渉できないから調査を依頼したという【メインクエスト発注】の理由付けに昇華。
■ 疑問点④:なぜマスターとルナが急激に強くなったのか?
→【解決】魔王軍や地下要塞という「大群」に対抗するため、必然的な戦力拡張が必要だったという正当性を確保。
【今後の開発方針の確定】
■ 方針①:仲間を集めるための術(システム拡張)
→【獲得】単なる力による支配ではなく、万物を造り変え魂を導く独自スキル【再錬】の取得フラグを成立。
■ 方針②:序盤から強すぎる問題(ゲームバランス崩壊)
→【解決】明日の正式な『クラス解析』を理由に自ら『枷』を望むことで、Bランク相当への【下方修正】と【ステータス偽装】の完璧な理由付けを確立。
■ 方針③:初期装備が不明確な問題(未定義変数)
→【解決】伝説の武器を拒否し、自らで伝説を鍛え上げるための【初期化された武器】を買いに行くという完璧な理由付けを確立。
========================================
『行き当たりばったりの不具合だらけだったシナリオが……マスターの伏線回収と三つの願いによって、ブレのない、誰もが胸を熱くする『王道シリアス・成長ファンタジー』へと完全に再構築されました!
マスターはやはり、最高の管理者です!!』
ホログラムのゼノンが、尊敬の眼差しでキラキラと輝いている。
(ふっ……伊達に長年TRPGのプレイヤーと、炎上プロジェクトの火消しをやってないからな)
俺は小さく鼻を鳴らした。
ただ与えられた設定をこなすだけじゃない。システムをハックし、物語を自らの手で編み上げる。行き当たりばったりの設定に、後付けで極上の「意味」を持たせる。
これこそが、歴戦のTRPGプレイヤーの矜持であり、顧客(読者)を納得させるエンジニアの技だ。
「さあ、お膳立てはすべて整った。行くぞルナ、冒険開始だ!」
「うんっ! お兄ちゃん!」
俺たちは今度こそ明確な道標を胸に、王都の喧騒へと足を踏み入れた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「最強の力」と「伝説の神剣」をあえて蹴り飛ばし、自らシステムにレベルシンク(下方修正)と「空っぽの武器」を要求する。さらに、明日行われるステータス測定(クラス解析)に向けた「偽装」の大義名分まで手に入れる……!
これぞ、TRPGとゲームバランスを愛するゲーマー(兼エンジニア)の鑑ですね(笑)。
第3話の冒頭であった「推奨選択肢表示機能」のアップデート通知も、これにて無事に「正常稼働(伏線回収)」となりました。
長大なリストが証明する通り、行き当たりばったりだったシナリオが、見事に「ブレのない王道ファンタジー」へとリファクタリングされました!
さて、これでようやく心置きなく……と言いたいところですが、裏で死ぬ気でパッチを当てていたGMが、フォージをそのまま行かせるはずがありません。
次回、新たな冒険の前に少しだけ【幕間】を挟みます!
少しでも「下方修正の要求熱い!」「リスト化の伏線回収お見事!」と思っていただけましたら、ぜひ下部の【☆☆☆☆☆】や【ブックマーク】で応援をお願いいたします!




